女子野球チームの活動が全国で活性化している。高校での創部も相次ぎ、プロ野球球団も続々参入。コロナ下でスポーツのあり方が問われる中、白球を追う同世代を取材した。(上智大学・島田遥、日本女子大学・田邊千代、写真は読売巨人軍提供)
巨人も23年始動目指す
「ほぼ毎日野球ができていることは本当にありがたい。毎日が充実していて楽しい」。声をそろえるのは、2021年12月に創設されたプロ野球・巨人の女子硬式野球チーム1 期生・金満梨々那捕手、山下陽夏外野手、吉安清投手、投手兼内野手の島野愛友利選手だ。
1950年に4球団で結成された日本女子野球連盟は、資金難もあってわずか2年で活動を停止した。2009年に設立された「日本女子プロ野球機構」も、女子プロ野球リーグを運営したが、活動休止中だ。一方、高校野球のチーム数はここ5年で倍増するなど、近年、女子野球の競技人口は右肩上がりだ。20年4月からは、西武と阪神が相次ぎ参入。23年の本格始動を目指す巨人は、3球団目だ。
大阪体育大学でプレーした大学最後の大会終了後に誘いを受けた山下外野手。「伝統ある巨人が女子チームを作ること自体に驚いた。その話が自分に来たことが信じられなかった」と振り返る。至学館高校でプレーした吉安投手は、「大学か社会人のどちらかで野球を続けようと悩んでいたときに、お話を頂き、うれしい気持ちでいっぱいだった」と話す。22年6月末にトミー・ジョン手術を受け、現在はリハビリ中。男子選手担当のトレーナーに診てもらうこともあり、手術やケアのための環境に驚く毎日だ。一方で、高校時代から取材を受けるのが苦手だったといい、「取材の数が圧倒的に多い巨人でやっていくことが少し不安」と表情を引き締める。
男子選手のプレーに刺激
4人は現在、幼児から小学生を対象とした野球教室「ジャイアンツアカデミー」の補助をしながら、練習に打ち込む毎日。月に数回は地域の幼稚園や小学校を回り、野球の楽しさを伝える活動も行っている。野球を全く知らない子や、親に連れられて来た子などに楽しんでもらえるように、一人ひとりに合った言葉遣いを心掛けているという。島野選手は、「アドバイスをした子が『できた!!』と喜んでくれるのがうれしい」と目を輝かせる。
宮崎市内で行われた春季キャンプには、女子選手4人も巨人の一・二軍選手に交ざって参加。吉安投手はトミー・ジョン手術を受ける前に、手術経験のある山崎伊織投手に相談に乗ってもらっていたという。「山崎投手の活躍がリハビリの励み」。男子チームの活躍が女子チームの原動力にもつながっているのだ。吉安投手の目標は女子野球界では前人未到の「球速130キロ」。そのためにも、「つらいリハビリも楽しむようにしている」と前を見据える。
吉安投手は、中学生になると、投手としてストレートで押せていたところが打たれるようになったり、力や動体視力、体力面でも少しずつ差がつくようになったりすることにつらさを感じるようになった。小学生のときに野球を始めた山下外野手も、男子に交ざって野球をするために努力する一方で、「野球は男子のスポーツ」という固定観念を感じることも多かったという。
また、平成国際大学では主将を務めていた金満捕手は、「自分がやりたいことをやるのが一番。目標に向かって挑戦していきたい」と話す。自分たちに続く後輩たちのためにも、まずはプレーで魅了するのが一番。本格始動に向け、4人は無心で白球を追い続ける。
競技人口は右肩上がり
全国高校女子硬式野球連盟によると、高校の女子野球部創部が相次いでおり、2015年は19チーム(部員数698人)しかなかったが、21年には43チーム(同1320人)に増えている。21年には全国大会の決勝も、初めて甲子園球場で行われた。地域リーグも各地に誕生しており、全国7地域に広がっている。全日本女子野球連盟も、「女子野球タウン認定事業」を進めており、女子野球普及と地域活性化に努めている。
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