日常生活であまり目にすることがなくなった「ラジオ」。災害時などには今も活躍する機会が多いが、私たち大学生の生活からは遠いようにも感じる。ところが、インターネットやアプリの活用で若者がラジオに接する機会は増えているのだとか。ラジオに関わる大学生たちを取材した。
イングランドで見た風景
「おはようございます。FMwasedaの3年の塩谷です。よろしくお願いします!」
マイクと録音機材が運び込まれ、即席の「スタジオ」と化した早稲田大学学生会館10階の一室から、軽快なトークが流れる。インターネットラジオRadiCro( レディクロ)で毎週木曜日の午前8時から8時半に放送されている「わせラジ!」の収録の一コマだ。
2016年に開局したRadiCroは、神戸に拠点を置くインターネットラジオ局。2022年からは、全国の大学公認の放送団体とタイアップして、青山学院大学、関西学院大学、神戸大学、京都大学、上智大学、東京大学、立命館大学、早稲田大学の8大学が、それぞれレギュラー番組を持っている。
「各大学が帯で番組を作っていくことが魅力」。FMwasedaの幹事長・早稲田大学商学部3年の塩谷哲弘さんが話してくれた。
「大学生になってすぐにコロナ禍で、友達と会えなかったよね」「ラジオを聴きながら1人で散歩するようになったんだよね。周りの景色をよく見るようになって、いつの間にか花の写真がフォルダに増えてた」―。大学生が、今何を思うのか、等身大で伝えられるのは大学生だからこそ。そうはいっても、「大学生が雑談して終わり、ではいけない」と、試行錯誤を繰り返しているという。映像制作にも取り組む「放送研究会」が多い中、「聴覚のみのコンテンツだからこそ得られる、『温かみ』を感じてもらいたい」と、あくまでラジオにこだわっている。
「ひとと情報、まち、企業、学校、すべてがつながる、がコンセプトです」。RadiCroの代表を務める古賀大輔さんが力を込める。「Radio( ラジオ)」と"つながり"やジャンルを超えて融合するという意味の音楽用語「Crossover(クロスオーバー)」とをかけあわせて名付けられたRadiCroと、地元・神戸大学のコラボによる番組がスタートしたのは開局の年。大学広報からの「大学のことを高校生や企業に知ってもらいたい」という要望がきっかけだった。
番組では、学生が企業を訪れてOBにインタビューする機会などが増える一方、パーソナリティーである学生から、「発声練習の成果を発揮する場が少ない」という声を耳にした古賀さん。「他大学でも同じような悩みを抱えているのではないか」と思うようになった。全国の大学公認放送団体に「パーソナリティー・放送作家・ディレクターを全て学生で集めて、自由にラジオ番組を作ってほしい」と声をかけ、番組をスタートさせることができた。
「何かを伝えるために工夫したり、考えたりする機会は、社会に出た後の糧になる」と古賀さん。RadiCroはタイムテーブルを見て、「PLAY」ボタンを押すだけで、大学生の番組やビジネス、グルメ、音楽にまつわる番組など、幅広いジャンルの番組を聴くことができる。「好きなことに突き進んでいく熱量が、将来に悩む同世代の大学生に伝われば」と塩谷さん。きょうも、自分の言葉で語り続ける。(上智大学・島田遥、写真も)
「プロ」への道~そして挫折
2022年4月、私たちキャンパス・スコープのメンバーは、東京都西東京市にあるFM西東京で毎週日曜日の午後11時〜11時半に放送されている「ミッドナイトスクール」に出演した。「大学生がチャレンジする番組」をモットーに大学生が発信しているこの番組は、サークルや学生団体などをゲストに招き、活動を紹介している。
「ラジオを通じて自分から話すことが好きになった」と話すのは、代表の竹村康大さん(大正大学表現学部表現文化学科)。番組の企画立案から進行、編集や宣伝活動に至るまで、大学生のみで制作している。私たちが出演した時も、文字通り、「学生が作っている」雰囲気が印象的だった。
「ミッドナイトスクール」は、2013年4月にスタート。FM西東京から番組枠を買う形の独立した番組のため、スポンサー探しも大学生の役割だ。2015年には多摩大学経営情報学部の中村その子教授のゼミをスポンサーとして獲得し、現在に至る。竹村さんたちは、地域のイベントにも顔を出したりしながら、新規スポンサー探しにも努めている。
収録の際の詳しい台本はない。ミキサー、タイムキーパー、パーソナリティーの三つの役割を5~6人で分担しながら、番組を作り上げていく。タイムキーパーは、オープニングからエンディングまで時間通りに進めていくため気が抜けないという。
事前の打ち合わせも欠かせない。コロナ下でもオンラインでコミュニケーションを重ね、「緊張せずにラクに話してもらえる」ように心がけている。私たちメンバーにとって初めてのラジオ出演だったが、竹村さんの自然な雰囲気が、言いたいことを引き出してくれた。
現在、首都圏の大学生を中心に20人ほどが在籍。「ラジオ好き」だけではなく、「表現の場を通じて自分を変えたい」人が集まっている。求められているのは、番組制作を通じて、どのように成長できるかだ。
ネットラジオやPodcastなどが普及し、一般の人でもラジオ番組を気軽に持つことのできる時代でも、本格的なブースでの番組制作はやはり別格だ。SNSと連動した番組作りも意識している。竹村さんは「高校生や大学生リスナーが集う若者のコミュニティーのようなものを作りたい」と意気込む。大学生による、大学生のためのラジオ番組の制作に、同じ大学生が作るメディアとして、大きな刺激を受けた。(淑徳大学・奥津楓)
大学生とラジオ
「ビデオリサーチ」の調査によると、ラジオを聞いている若者は年々増加しているという。「週に1日以上聞く」というコア層は、2018 年→ 2020 年で約5ポイント増と、増加傾向を示している。
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