激動の時代を読み解く ~ G7広島サミット公開授業

 

 先進7か国首脳会議(G7サミット)を前に5月13日、外務省主催の公開授業「激動の時代とG7広島サミット」が上智大学で行われました。慶応大学の細谷雄一教授らが講師を務め、学生、一般の約300人が参加しました。ロシアによるウクライナ侵攻、米中対立、高まる「グローバル・サウス」の存在感――。歴史的転換期を迎えている国際社会をどう読み解けば良いのか。公開授業を取材して考えました。

(千葉商科大学・吉越彩絵、東京外国語大学・野口登子、写真は上智大学・島田遥、早稲田大学・朴珠嬉撮影)

 

唯一の被爆国からのメッセージ

 

 日本でのサミット開催は2016年以来となります。第一部「国家安全保障に果たすG7の役割」では、主に核問題、G7の意義について専門家が議論しました。細谷教授は「開催地が広島ということもあり、唯一の被爆国である日本が、どれだけ世界に核軍縮と核抑止のメッセージを送ることができるか。核に頼ることのない世界の追求、平和形成の重要性を伝えることができるかが鍵になる」との見方を示しました。一橋大学の秋山信将教授は「『法の支配』に基づく国際秩序のあり方を示し、一人ひとりの幸せを追求していくことで、G7はかつてのグローバルで自由主義的な組織になるだろう」と指摘しました。

 

秋山信将・一橋大学教授

 

 この後のショートブレイクでは「取材する側からみたサミット報道」と題し、読売新聞東京本社の飯塚恵子編集委員が講演しました。

 

 サミット開催を前に多岐にわたる関連報道がされています。飯塚編集委員によると、メディアはサミット開催前から共同声明などの概要をつかみ、重要な議題や各国の主張を把握するといいます。様々な文書の文言から、サミットでは何が焦点となり、各国の利害がどこで食い違っているのかを整理するそうです。これらを踏まえ、サミットで発表される合意や宣言を分析します。地道な取材により、どの国の主張が、どの部分に反映されて合意に至ったのか、あるいは合意できなかったのかを明らかにできます。飯塚編集委員は「話し合いでどういう主張があり、何が議論されたのかということは、サミット期間中だけでなく、終わってから関係者取材を通して明らかになることもあります」と事後取材の重要性も強調していました。

 

飯塚恵子・読売新聞東京本社編集委員
 

 ウクライナ紛争に加え、特に中国との関係では各国の思惑が交錯しています。今回のサミットで、議長国・日本には、参加国の利害を調整し、まとめ上げる役割が求められています。各国の多様な主張をどれだけ文書に生かすことができるのか。サミット報道で発信される情報は「包摂性」を検証する重要な手掛かりになります。
   

 

高まる「グローバル・サウス」の存在感

 

 第二部のテーマは「高まるグローバル・サウスの存在感とG7」です。今回のサミットでは、なぜ新興・途上国のグローバル・サウスが注目されるのでしょう。第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は「世界経済に占めるG7と欧州連合(EU)のシェアの合計が50%を切っている」と述べ、グローバル・サウスの台頭について、具体的な数値を示しながら説明してくれました。

 

西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト


 新興・途上国が経済規模を拡大し続け、G7の相対的地位は低下しています。細谷教授はグローバル・サウスの政治的主張が、国際社会で無視できなくなっているとみています。G7を世界経済の方向性を決める「主体」、グローバル・サウスを「客体」と位置付けてきた構図への批判も高まっています。「グローバル・サウスが自らアジェンダ・セッティング(課題設定)を行うと主張し、G7の目指す方向性との間にズレが見えてきています」と話していました。

 

 G7とグローバル・サウスとの間の溝が顕在化する今、G7がサミットを通して行う決定は、国際社会でどれほどの影響力を持つのでしょう。参加した東京大学大学院生の岡田悠也さんは「G7の強い決定が、西側諸国の押し付けを拒むグローバル・サウスとの分断を深めることにつながるのではないか」と質問しました。西濱氏は「どこに共通の利害があり、同じ思いがあるのかを汲み取りながら『共通解』を提示することが必要になる」と答えていました。G7とグローバル・サウスの関心が一致することもあり、グローバル・サウスは必ずしも一枚岩ではないという背景もあります。

 

細谷雄一・慶応義塾大学教授


 細谷教授は「G7は国際社会で孤立しつつあることを自覚しています」と述べ、G7の「謙虚さ」がグローバル・サウスとの連携の鍵になると指摘しました。国際社会で日本がこれまで果たしてきた外交の歴史にも触れ「日本の橋渡し役については『日本は味方だ』という感覚が(グローバル・サウスの)一部にある」と述べていました。

 

 被爆地・広島で開かれたG7サミットでの合意は、国際社会はどう受け止められるのか。今回のサミットの成果を見極めるためにも、今後の報道に注目したいと思います。

 

(2023年5月30日 09:00)
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