大学生、ふらりと落語に行ってみた

 

 落語が若者に静かなブームなんだって! 落語って、「笑点」?? 大学にも、「落語研究会」とかあるけど、着物着て、座布団に座って話している感じ? なんか地味なんですけど...。でも、「ブーム」と聞くとなんか乗り遅れてる感じがしちゃうかも。ということで、のぞいて来ちゃいました!(淑徳大学 浅井しおり)

 

演芸の「サブスク」

 落語と言えば「寄席」。向かったのは、萩本欽一さんやビートたけしさんを生んだ、東京・浅草の「浅草演芸ホール」。埼玉県民の私でも、ふらっと来れちゃうよね。

 まず、気になるお値段は「学生2500円」。ええっと、時間は2時間くらいかな?と思いきや、「午前の部11時40分~16時30分‼」。午前というか、軽く夕方になってますけど。

 中身も5時間で20組。紙切り、漫才、モノマネと、まさに「演芸のサブスク」状態。客席を見ると、若い女性や親子連れ、大学生らしい若者もちらほら。寄席も「ダイバーシティの時代」ってこと?? これは大学生のうちに通っておかないと損かも。

 ということで後日、落語家の柳家あお馬さん(31)に話を聞かせてもらっちゃいました。

 

落語は共同作業

 「お客様がマスクをして、喋っている私達噺家(はなしか)がマスクしていない、あべこべですね」と客席の笑いを誘っていたあお馬さん。のっけから、「お笑いはfunny、落語はinterestingだね」と、哲学的なことを語ってくれちゃった。私も「お笑い」はよく見るけど、どういうこと??

 「お笑いは『短距離走』。限られた時間で瞬発力が必要。落語は『マラソン』。江戸時代などの状況説明から始まって、お客さんを飽きさせない努力が必要だね」。フムフム。

 あお馬さんおススメの「大工調べ」(古今亭志ん朝さん)は、なんと46分。軽く大河ドラマ見終わっちゃうじゃん! と半信半疑の私。友達と一緒に聞いてみたけど、言葉のすれ違いによって起きるおかしさと、「半沢直樹」のようなスカッとするストーリーで、笑いの連続。本当に聞きやすかった。大工の棟梁の、江戸っ子らしい「啖呵」は、とにかくテンポが良くてリズミカル。あっと言う間に聞き終わっちゃった♪ 友達も、「最初は外国の言葉みたいだったけど、気がつくと『江戸のリアル』って感じになってた。一人で何役もやるのも全然違和感がない」と落語の世界にすっかり引き込まれちゃったみたい。

 次に教えてくれたのは、「落語は共同作業」ということ。え、ずっと一人で話してるじゃん??

 「お客さんと心のキャッチボールをしないと成り立たない。集中してもらう空気感を作ることが落語の出来を左右する」と真剣な表情で話してくれた。落語の始まり「マクラ」は、会場を温めるアイスブレイクのような時間。客席を見回しながら「最近は女性のお客様が増えていて...」とか、私達を置き去りにしない、「密」な感じが心地よい。やっぱりエンターテインメントはこうじゃないとね!

「落語は共同作業」と話してくれたおあ馬さん

 

「密」だからこその笑い

 でも、2度の緊急事態宣言で、まさにその「密」がピンチ。演芸場もやっぱり大きな影響を受けている様子。浅草演芸ホールの席亭(支配人)・松倉由幸さん(57)にお話を聞くと、換気設備を新しくして、340の客席も165に減らしたとか。休憩時間も増やして換気を徹底しているけど、なかなかお客さんも戻らないみたい。「ドイツでは、芸術文化に対して手厚い支援をしている。日本は一歩遅れているのかもしれない」と松倉さん。コロナ禍で、多くの劇場やライブハウスが休業や閉館を余儀なくされたってニュースも聞こえてくるし、芸術やエンターテイメントに対するケアが後回しになってない?と思っちゃうよね。松倉さんは、「娯楽は不要不急ではなく、人々に活力を与えるもの」と話してくれた。確かに、こういう時期だからこそ、心から笑いたくなるよね。ホントに。

 「学割」があるのも、「若者にたくさん来て欲しい」という狙いと、学生のお財布事情を考えてのこととか。客層も、実はじわじわと若い世代が増えていて、アニメやドラマ、映画など、きっかけは様々でも、「寄席」に足を運び、その魅力に取りつかれる若者が増えているんだって!

 落語について調べて感じたのは、「教科書では学べないことばかり」ということ。ネタも失敗の話が多くて、今も昔も変わらない等身大の「人間の本質」が表現されている。だって、人間はミスする生き物だもんね。でも、それを笑いに変えちゃうのが落語のすごいところ。例えば「冨久」という演目。主人公の久蔵は、お酒で失敗して仕事を失っている状態から噺が始まるんだけど、そんな久蔵に対して周りはなんだかんだ世話をやいちゃうんだよね。「何をしても憎めないような人」って、自分の身の回りにもいるよね、と思って、クスッと笑っちゃった。

 まだまだ先が見えないコロナ禍。みんなも、そんな落語からパワーをもらって、嫌な事を吹き飛ばしちゃおう!



(2021年3月19日 14:10)
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