幼い頃の元旦の思い出といえば、輪ゴムのかかった束の年賀状をポストから持ってくること。そんな大学生も多いのではないでしょうか。私も、宛先ごとに分け、自分あてのものを1枚ずつ眺めては、満面の笑みを浮かべていたものです。いつしか、中学、高校と届く年賀状は少しずつ減り、大学生になった今年は、自分が書く枚数も極端に減っています。「年賀状じまい」や「年賀状終活」という言葉が飛び交う今日このごろ。皆さんは年賀状、書いていますか?
(実践女子大学・遠藤花連)
SNSでつながっているから
「デザインを選んで、写真を撮って、住所を聞いて、書いて...という行程が面倒くさい」。キャンパススコープのあるメンバーは、年賀状を書かなくなった理由をこう説明します。「LINEで送るほうが早く済むし、気が楽」。ほかのメンバーに聞いてみても、「SNSでつながっているから」という理由で年賀状を送らなくなっていました。
小中学生のころは、多い人では「何十枚も書いていた」ということもあったはず。多くのメンバーは「大学受験」をきっかけに挙げます。「受験勉強に精一杯で書いている時間などなかった」「入試を控えていたため周囲にも書く人がいなくなった」とメンバーは口々に話します。私自身も、高校3年を境に友人間での年賀状のやりとりが希薄になったと感じます。大学生になったら、下宿をしている友人には、「実家に送るか、下宿に送るか」という問題もあります。「帰省しているかを確認するのも面倒。どちらに送るか悩むくらいなら確実に元旦に届くLINEが楽」と話すメンバーもいました。
若者だけでなく、高齢者の間にも「年賀状離れ」が広がっていると言われています。2020年の日本郵便の年賀はがき発行枚数は、郵政民営化以降で最も少なくなった、というニュースもありました。このまま、年賀状という文化はなくなってしまうのでしょうか。
「ゆるい繋がり」のツール
「年賀状は『ゆるい繋がり』を大切にできるコミュニケーションツールではないでしょうか」。年賀はがきの印刷サービスのほか、年賀状文化を紹介するWEB上の資料館「年賀状博物館」を運営する「フタバ株式会社」の市川宗一郎さん(35)が話してくれました。
確かに、「年賀状を書いている」という大学生からも、「SNSで繋がっていない恩師には送っている」という声がありました。「63円のハガキに一言添えるだけで、SNSより遥かに気持ちが伝わる」と、市川さんは魅力を指摘します。新年の抱負や、近況報告などを、普段顔を会わせない人に改めて伝えられます。市川さんは、「『年賀状離れ』する人は深く考えすぎている、もっとカジュアルでいい」と訴えます。同社が手掛けるデザインも、企業向けの堅いものより、パーソナルユーズのものが好まれるようになってきているそうです。色数も増えて華やかに、賀詞もカジュアルなものに変わりました。「もっと気楽に楽しんで欲しい」と話します。
近年は個人情報保護への意識が高まり、友人に住所を聞くことも難しくなりました。私や友人は、インスタグラムのストーリー機能を使って「年賀状出してもいいよって方は住所教えてください〜」のように、やりとりを許可してくれる友人を「ゆるく」募集しています。年賀状離れを加速させたと言われるSNSですが、使い方によっては、友人と「繋がり直す」ツールにも活用できます。市川さんは「結婚式など、人生の節目でお世話になった人へのお礼をきっかけに年賀状を始めるのも、ありです」とアドバイスします。お祝い返しと一緒にリストを作り、自然な形で年賀状を「再開」してみるのも良いのかもしれません。コロナ禍の今年、同社では「年賀状で、会いましょう。」と題して、会うことができない大切な人に年賀状を贈るキャンペーンを展開しているそうです。
新型コロナウイルスの感染状況が厳しさを増し、私の友人にも「お正月に帰省できない」という大学生が増えています。一方で、「年賀状を送らない」という大学生からは、「1枚もやりとりしないのは少し寂しい」という本音の声も聞かれます。Stayhomeの日々は、私たちに改めて「大切な人との繋がり」を思い出させてくれました。感染の収束を祈りつつ、2021年を良い年にするためにも、今年は年賀状、書いてみませんか?
全て手書きのシュールでお洒落な年賀状。「合格祈願付き」はとても嬉しかった |