百貨店で働く人たちの毎日は?「京王百貨店」で売場づくりや商品仕入れなどに関わるやりがいを、人事部の羽根綾香さん(入社5年目)と、岸理美さん(同15年目)に聞きました。(中央大学・大関亮太)
京王百貨店
東京南西部の足・京王電鉄を中心とする京王グループの1社で、1964年に第1号店の新宿店をオープン。京王沿線などに、旗艦店・サテライト店舗の8店舗を中心にさまざまな事業を展開しています。開業当時からの名物催事「駅弁大会」など、生活感覚に密着した企画力に定評があります。
売り場はチーム 助け合う
――百貨店にはどんな仕事があるのでしょうか?
羽根さん(以下・羽):大きく営業部門と後方部門に分かれます。新宿・聖蹟桜ヶ丘の主力2店舗にはそれぞれ営業部署が置かれ、本社には品ぞろえの全体計画や宣伝・イベントを手掛ける営業政策部・販売促進部などの営業支援部門があります。企業や団体との取引を担当する法人外商部、個人のお得意様を担当するお得意様外商部もあります。後方部門は、経営企画室や人事部、経理部などの本社機能です。基本的には入社して数年間は、新宿・聖蹟桜ヶ丘店や法人外商部で営業のイロハを学びます。その後、適性や希望に応じて様々な部門に異動していくイメージです。
――店舗勤務の1日のスケジュールを教えてください。
岸さん(以下・岸):早番と遅番のシフト制です。一例になりますが、早番は朝礼で売上動向や販促情報などを共有することからスタートします。午前中は担当の売場を巡回しながら商品の陳列を調整。店舗では、パートやアルバイトの方、売り場で扱っている商品の製造元などから派遣されてきた方など、様々な方が販売員として接客にあたっています。売れ筋などの情報を集めるほか、自分でも接客して売場づくりのヒントを探します。昼休憩の後、営業部のバイヤーと一緒に商品仕入れ先と商談をしたり、翌月の期間限定催事の企画づくりを進めたりしながら、合間を見て売り場にも立ちます。遅番は最後の閉店作業を担当します。天候次第で売れ筋も毎日変わります。売場ごとにチームで動くので、情報共有は欠かせません。
新入社員には先輩が指導役につくほか、マネージャーが中心となって職場全体でフォローしていきます。入社3年目までは半年ごとに社外の専門家を招いた研修があり、同期全員で集まります。
――お2人はなぜ、京王百貨店を志望したのですか?
羽:「売り場を見て」でしょうか。みなさん自信をもって楽しく働いているように見えましたし、手に取りやすい価格帯の品ぞろえに強いところにも親しみやすさを感じました。
岸:ファッションショーなどのイベントを企画・運営するサークルに所属していて、催事(イベント)や商品の提案を通じて「文化」を発信する仕事に惹かれました。
――京王百貨店ならではの取り組みを教えてください。
岸:他社とは違う独自路線を目指す傾向がありますね。新宿地区での競争に関して、京王はシニア戦略に舵を切り、手ごろな価格帯の「親しみやすい店」としてご支持を頂きました。「小さいサイズの婦人服」「ウォーキングシューズ」のコーナーに注力し、特徴的な売り場づくりを行ってきました。近年は親子三世代で利用できる店を目指して、「美」「健康」「癒し」をキーワードとした売り場改装や新規イベントに力を入れています。
顧客の要望に寄り添う
――どんな時にやりがいを感じますか?また、記憶に残っている出来事があれば教えてください。
岸:販促企画や売場づくりがお客様の反応に結びついた時にやりがいを感じます。婦人靴売場の担当だった時のことですが、外反母趾のお客様に「選んでもらった靴で、さらに具合が悪くなった」とご指摘を頂きました。何回もご自宅に伺い、きつい部分を伸ばしたり隙間をパッドで埋めたりとサイズ調整を繰り返し、最後は満足していただけました。自分では要望に応えたつもりでも、相手はそうは感じていない。ギャップを乗り越えることを実地で学びました。
――京王百貨店の今後の事業展開やビジョンについて教えてください。
羽:新宿の商環境の変化に伴い、新宿店で22年秋、8年ぶりの大型改装を行いました。狙いは30-50歳代の顧客の取り込みです。デジタルとリアルの融合にも取り組み、LINEミニアプリの開発やEC強化などを進めています。小型の「サテライト店」にも力を入れています。八王子や調布、吉祥寺などで、身近な買い物スポットとして親しまれています。沿線の「住みやすさ」を高めるという、京王グループならではの役割でもあります。
――どんな人にエントリーしてほしいですか?
岸:百貨店は様々な立場の人との協力関係の中で動いています。一つの目標をみんなで共有して仕事をすることが好きな方、学生時代にそんな経験を積んできた方が向いていると思います。
――就活生に一言アドバイスをお願いします。
羽:長丁場ですから、体調管理に気を付けてください。自分が今まで何に楽しみややりがいを感じてきたのか、これまでの経験を見つめ直してみてください。
岸:背伸びをしない、ありのままの自分を評価してくれる企業が合っているはずです。生き生きと働ける会社に出会うことを祈っています。
羽根 綾香(はね・あやか)上智大卒。2018年京王百貨店入社。新宿店の営業部の一つ、「婦人服部」に配属され、百貨店担当者が仕入れから売場づくりまで一貫して担当する自主編集売場を中心に、婦人服売場の販売業務に取り組んだ。2020年から人事部採用担当。
岸 理美(きし・さとみ)立教大卒。2008年京王百貨店入社。新宿店の婦人雑貨部に配属され、婦人靴の売り場づくりや販売イベントの企画を担当し、売場マネージャーも経験した。2018年から人事部。人材開発や人事制度作り、採用業務を担当している。