次世代を担う子どもたちに理科への関心を高めてもらおうと、東レグループは2007年から、同社の先端技術を活用した出前授業を行っている。25年2月に本庄東高附属中学校(埼玉県本庄市)で行われた授業では、2年生が色水を透明にする「ろ過実験」を通して、安全な水の利用や地球環境について考えた。
「あっ・・・本当に色がなくなった・・・」
ろ過実験をする生徒たちから小さな声が漏れた。
実験で使うのは、東レの製品を使った「水処理膜」。普段の理科の授業で使う「ろ紙」ではろ過できない絵の具を溶かした色水から、青い成分だけを取り除くことができる。その秘密は「0・01マイクロメートル」という、肉眼では見えない細さの膜の隙間だ。
「この水処理膜を通せば、牛乳も透明になります」
講師を務めた東レの中嶋環さんの説明に、驚きの声が上がった。
続いて中嶋さんがスライドに映し出したのは、2024年1月に起きた能登半島地震の写真だ。
断水が長く続いた被災地では、生活用水を確保するため、東レのグループ会社の浄水装置が活躍した。この装置を使えば、川の水や、泥や砂が混ざった水も飲み水に変えることができると聞いた生徒たちは、手元のプリントに「最新の技術が水不足の解決に役立っている」と書き込んだ。
本庄東高附属中では、学期ごとに専門家を招いた授業や芸術鑑賞などを行っている。日本の技術や文化に触れることで、「将来の仕事や学びたい分野について考えるきっかけとしてほしい」と村山正道教諭は語る。
授業最後の質問タイムでは、その「仕事」に関する質問が出た。
「中嶋さんはなぜ、東レに入社しようと思ったのですか?」
東レの先端技術は制服や菓子袋、飛行機など、暮らしのあらゆる場面で活用されている。製品開発の際に同社が大切にしているのは、利用者の声だ。例えば、ユニホームなどに使う繊維には「汗臭くなりにくい素材がいい」「できる限り長く使える服が欲しい」などの要望を取り入れているという。
「お客様と一緒に、より良いものを作り上げていく仕事に大きな魅力を感じた」と中嶋さん。その言葉に、質問した女子生徒が大きくうなずいていた。
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