地域の絆 子ども食堂~ たかもり食堂

ホウレン草たっぷりのカレーを食べる子ども

 

 2022年12月11日の記事でも、「子ども食堂」が、多くの人の居場所になっていることを伝えた。今回は新たにできたばかりの別の子ども食堂を昨年末に訪問した。その様子を紹介する。

(昭和女子大学・戸田佳奈) 

SDGs(Sustainable Development Goals)
 「持続可能な開発目標」と訳されている。2015年の国連総会で採択され、貧困や飢餓、教育、男女の平等、働きがい、生産消費、生態系の保全など17項目の目標を掲げている。目標の下には、具体策や数値目標などを示した計169のターゲットがある。

 

「カレーは甘口」

 

 毎月第3土曜日、東京都江東区高森地区にある集会所は、大勢の子どもたちでにぎわう。集う場所は、「たかもり食堂」。下町の人情に厚い場所で、昨年6月に都内の児童相談所で支援員として働く新藤優美さんを中心にスタートしたばかりだ。
 
 

 朝9時から食堂の準備が始まる。1階では近所でカレー店を営む小林幸太さんが、カレーの仕込みに入る。「フードバンクで提供されるカレーは中辛が最も多いのですが、誰でも食べられるようにカレーは甘口。今回は近くの人から頂いたほうれん草を使ったカレーにしました」と小林さん。

 

 段ボールいっぱいに詰まったほうれん草をたっぷり使い、カレー作りに励む。直径約50㌢の大きな鍋で煮込まれるカレーは40人前にもなるそうだ。寄付される食材が毎回違うため、開催日ごとにバラエティに富んだオリジナルカレーができあがる。特に豆と鯖の缶詰を使ったカレーは印象に残る好評なカレーだったそうだ。

 

 2階をのぞくと、インターナショナルスクールの生徒たちが楽しそうにクリスマスの飾りやカードを準備していた。当初から関わっているという2年生の黒井一樹さんは「カレーもうまいし、楽しみながら地域の子どもたちを助けることができますよ」と笑った。準備の途中でも地域の人が果物やお菓子などを差し入れしていく姿が印象的だ。

 


  

気軽に集える場所に

 

 

 さあ正午、食堂の開店だ。ちらほらと親子連れや子どもたちが訪問してきた。入り口では、コロナ禍もあって手を洗って検温をし、名簿に名前を記入する。子どもたちにはクリスマスが近いとあって、お菓子が詰まった袋が渡されていた。保護者は家庭で余り、持ち寄られた保存食品を手に取るなどしていた。

 

 1階の食堂では、ご飯をスタッフの方によそってもらい、カレーをかけてもらう。訪れた小学5年生の女子児童は「友達がこの場所を教えてくれました。柔らかく煮込まれていて誰もが食べやすいカレー。みんなが気軽に行ける場所です」とおいしそうにカレーをほおばる。   

 

 続々と人々が訪れ、10分もたたないうちに満員御礼だ。幼児から小学生、部活帰りの女子中学生の姿もみられた。「席が空くまで2階で待っててね」と案内するサンタ帽をかぶったスタッフは、「いろいろな助けがあって、お金はほとんどかからず運営できています」と話した。

 その隣には今回初めてスタッフとして参加したという男子大学生も。初めてだとは思えない手つきでてきぱきと案内をする姿が印象的だった。


 

 

 

食後は自分たちで皿洗い

 食べ終わったらみなお皿とスプーンを持って2階へと上がっていく。そこでは、小さな子どもも自分が食べた後のお皿を洗っていた。これがこのたかもり食堂での光景らしい。片付けが終わったら2階で話したり遊んだりする子供たち。おなか一杯になった子供たちの笑顔はさらに輝いていた。

 

 準備から食事まで約3時間。地域のつながりが強いからこその和気あいあいとした雰囲気が十分伝わってきた。特にスタッフも利用者も口コミで活動が広がり、賛同者や利用者が増えていくことが印象的だった。私がこの場を後にする前、小林さんは次々とやってくる利用者に対して、また別のカレー作りに取り掛かっていた。「ほうれん草と、トマト缶、コーン缶にそれとビーンズも」と準備に忙しそう。

 

 ますます増えていく子ども食堂。今日はこの場所、次はこの場所でと、温かい食事と居場所が多くの支援を求めている家族や子どもたちのもとへ届くことを願っている。

(2023年2月 5日 19:55)
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