地方と都市の若者をつなぐ場に~Rural Labo

 「地方に元気がない」と言われるようになって久しい。「地方の活性化に若者の力が欠かせない」とも言われる。そんな地方の活性化に関心を抱く全国の若者をつなぐ場を提供しようと活動する大学生がいる。長野県出身で東京の大学に通う学生として、地方活性化のヒントを探った。(淑徳大学・坂本みゆり、写真は小菅さん提供)

 

東京から200キロの地で

 

 「DIYを通して、リアルな地域活性を知る」「特産品であるそばをブランドとして確立したい」----。東京から約200キロ離れた長野県辰野町の川島地区。電車やバスを乗り継いでも4時間はかかる場所にある一軒の古民家で、地域の活性化に取り組む大学生がいる。Rural Laboを運営する「MoonBase株式会社」の社長を務めるのは、大学3年生の小菅勇太郎さんだ。知人の紹介で地区の活性化イベントに訪れた小菅さんは、地域に暮らす人たちに姿に強く引き付けられた。過疎化が進み、「10年後には町として機能しなくなってしまう」とも指摘される恐れもある川島の里山。そんな里山を「孫の世代まで残したい」と町全体で取り組む姿勢に心を打たれ、ともに活動することを決めたという。

 

 「Rural Labo」が目指すのは、全国で地域活性化に取り組む人たちと、「地域活性化のために取り組みたい」という若者をつなぐこと。慶應義塾大学を休学中の小菅さんは、辰野町の古民家と東京の二拠点生活を送りながら、DIYによる古民家再生や農作業イベントの開催、オンラインミーティングの企画などに忙しい日々を送っている。

 

地域を考える「ゆるい繋がり」

 

 転勤族だった父親の仕事の関係で、数年おきに引っ越しを重ねて育ったという小菅さん。高校生の頃から、まちづくりやライフスタイルのデザインに興味を持ち、様々なイベントに顔を出すようになっていったという。そこで感じたのは、ともに活動する同世代の少なさ。知らない地域に1人で飛び込むことへの抵抗感を無くすため、「地域活性化に関わったり、興味を持ったりして同年代と、同じテーマで語り合える場所をつくりたい」という思いから、Rural Laboを立ち上げた。

 

 

 コロナ下の2020年6月に設立されたRural Labo。活動にも様々な制約があり、地方からゲストを招いたトークショーなどの活動から始めたという小菅さん。「大きなコミュニティにするつもりはなかった」と振り返る。イベントの参加者も4~5人程だったが、SNS等で少しずつ知名度も上がり、コロナ下で活動を制限された若者からも問い合わせが増えるようになった。「ゆるい繋がり」が広がり、全国から参加するメンバーは400人にまで拡大。東北や東海、四国など、日本各地に「地域支部」も設けられた。

 

 
 「都会と地域とでは、コミュニティのあり方に違いがある」と小菅さん。都会に比べて地域の人間関係は流動性が少なく、家族のような感覚がある。人が少ない分、一人ひとりとの関係が深く、「繋がらざるを得ない」関係もある。そういった関係を「息苦しい」と感じる人もいるかもしれない。小菅さんは「そこに行けばその人がいる、という安心感」ととらえている。都会と地方、どちらが良い・悪いではなく、どちらも必要な場所だ。「地域に関わる活動を通して、両方の良い部分を体感してもらえれば」と力を込める。二重生活を送る自身にとっても、辰野町は「自分らしくいられる場所」だという。何かあれば周りが助けてくれる、という利点は地方ならでは。「若者の挑戦の場としては最適ではないか」と指摘する。Rural Laboを通じて、周囲を巻き込むことの楽しさを感じた若者の活動を地域が応援し、その若者の活動が地域のためになる----。そんな活動のサイクルの先に、日本の新しい形を見えてくるのではないだろうか。

 

(2022年12月22日 12:02)
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