高校生向けオンラインセミナー(4)
オンラインセミナーでの講義を終え、参加者の高校生に手を振る東北大の教授ら(仙台市で)=富永健太郎撮影
治療・研究内容など 最前線医師に質問
最前線で活躍する医師たちが、生徒の質問に率直に答えるのもセミナーの特徴だ。治療・研究内容から、医師に求められる資質、安楽死など倫理問題への向き合い方まで様々で、6大学で計169件に上る質問が寄せられた。
内訳は、治療や研究についての専門的なものが53件と最も多く、医師の資質に関するものが33件、留学や高校での勉強法などが28件と続いた。コロナ対策や医療現場での海外との違い(10件)、女性医師のキャリアや労働時間など働き方(8件)についての質問もあった。
薬学部・工学部との連携は?/理想の医師像教えて
Q 救急医療は、夜間の仕事も多いと思うが、家庭との両立はどうしているか。
鴎友学園女子高校(東京都)1年 須田彩月(さつき)さん
A 藤田医科大・岩田教授 基本的にはシフト勤務。勤務時間中は非常に忙しいが、それ以外は時間をうまく使える。平日が休みの場合もあり、子どもの遠足に同行することもできる。オンオフをはっきりするようになってきている。
Q 高校で留学する可能性があるが、留学では何を重視すればよいか。
埼玉県立浦和高校1年 貴志達紀(きしたつのり)さん
A 順天堂大・田端主任教授 高校、大学時代に海外旅行はしたが留学はしなかった。医師として海外に長期滞在するようになって、もっと、海外の文化や語学を勉強しておけばよかったと思った。留学はプラスになるので、自分の可能性を広げるためにも語学を学んでほしい。
Q (医療分野の研究開発で)薬学部・工学部と、どのような連携をしているのか。
福井県立高志高校2年・伊東優実さん
A 大阪大・平講師 心臓治療は医療機器の開発と密接に関係している。研究段階から工学部と盛んに情報交換している。薬学部では創薬の基礎をやっており、大阪大の場合、研究用に所有する化合物ライブラリーがあり、そこから(薬が)ヒットすることもある。
Q いつの間にか流行が治まっている感染症があるのはなぜ。
青森県立五所川原高校2年 対馬日陽(つしまひなた)さん
A 東北大・押谷教授 インフルエンザの場合は、集団免疫によって治まった。新型コロナは感染性が高く、人々の免疫が落ちて流行するパターンが繰り返されている。歴史上、経験したことのないタイプの感染症なので、大規模な流行が何年続くのか、よく分かっていない。
Q どういう医師になってほしいか。理想の医師像を教えてほしい。
秋田県立秋田高校1年 鈴木悠太さん
A 東京医科歯科大・宮崎教授 患者を助ける医師。簡単に治る病気でないときも、いかに長生きしてもらえるかを考え、患者に寄り添い、言葉をよく聞くことが大事。患者に医療情報を示して選んでもらう場合でも、患者自身が判断するのは難しいので、よりよい方向性を示すことが重要だ。
Q 患者との人間関係を構築する上で大切にしていることは何か。
田園調布学園高等部(東京都)1年 菱沼里香さん
A ノースカロライナ大・大村講師 まずは「声は明るく元気よく」という見た目を大事にしている。医師の言葉にはとても力があるので、患者を元気にできる言葉をかけることにしている。がんなどの治療でも「このタイミングで見つかって良かったね」などと声をかけるようにしている。
参加生徒の声
広島大学付属高校(広島県)1年 小川友寛(ともひろ)さん
医療というと、今まで治療や病気というイメージしかなかったが、医療の情報との関わり、社会における役割についての話が新鮮だった。グローバル化が感染症拡大のリスクを高めるということに驚いた。
八千代松陰高校(千葉県)2年 松井由佳里さん
医者というと臨床のイメージが強かったため、研究のために海外に行った先生が予想以上に多かったことが、印象的だった。歯周病の人体に与える影響の大きさは初めて知り、衝撃を受けた。
浦和明の星女子高校(埼玉県)1年 小西未来(みらい)さん
一人前の研究者になるためには、様々な経験を積む必要があり、道のりはとても長いと感じた。若手育成と、研究や臨床を並行して行うという話や、医学と歯学を横断した研究があることが印象に残った。
埼玉県立大宮高校(埼玉県)1年 段田好寛さん
産学共同で薬剤を作る話に感動した。研究の進め方として、臨床で生まれた疑問点を、研究で解明し、また、臨床に生かし、医学が進歩しているのだとよくわかった。自分の見識を広げ、患者に対して自分のできる最高の診療をしたい。
岩手県立盛岡第一高校(岩手県)1年 千葉礼さん
これからの時代はAI、ロボットを使ったり、個別化医療を行ったりすることが求められているという話が印象に残った。様々なニーズに対応できるような医療技術を研究することが私たちの世代には大切だと考えさせられた。
栃木県立宇都宮女子高校3年 久保和葉(かずは)さん
女性でも医師としてのキャリアを続けることができて男性と比べて不利ではないという話を聞き、将来は医師として活躍したいと思った。受け身の姿勢で学ぶのではなく、自ら積極的に取り組むようにしたい。
吉祥女子高校(東京都)1年 小島千佳さん
救急医療において周りにいる看護師や薬剤師、検査技師などの存在が欠かせないということが印象に残った。医師だけでは救えない命があるため、チーム医療が推進されているということが実感できた。
鳥取県立米子東高校3年 上田萌華(もえか)さん
『受験勉強を頑張ることは医師になるために必要なだけでなく、医師になってからも自分の糧になる』という言葉を聞いて、自分の理想とする医師になるためにもっと頑張ろうと思った。
徳島県立城東高校2年 早藤彩花さん
医師として働く上での心構えとして、感謝や自分を信じる心などが重要という天野先生の言葉が心に残った。たくさんの人を笑顔にできる医師になれるように努力していきたい。
十文字高校(東京都)1年 篠千晶さん
医者になることを目標にするのではなく、医者になってから自分が何をしたいのかを考えるべきという話を聞き、医学部入学を目標とするのではなく、医者になってからの未来を見据えていきたい。
茨城高校(茨城県)2年・井上珠緒(みお)さん
医師たちがプライドを持って、患者に医療を提供する姿勢を、今回の講演から感じることができた。悔いの残らないように全力で取り組み、自分を信じて、命を任せてもらえるような医師になりたいと強く思った。
須磨学園高校(兵庫県)2年 村岡真帆さん
レシピエント(移植患者)がドナー(提供者)になった話などが印象的で、日本での移殖医療の啓蒙(けいもう)活動の難しさも感じた。移植医療の講義を受けるのは初めてだったが、具体的な説明が多く、最初から最後まで興味を持って聞くことができた。
吉祥女子高校(東京都)1年 北島文緒さん
日本では臓器提供の数が圧倒的に少ないという話を聞いて、もっと臓器提供に対する考えを一人一人がしっかり持つような教育などが必要じゃないかと考えさせられた。移植ができた時、提供者への感謝を抱いて、しっかり生きるよう伝えられる医師になりたい。
立教女学院高校(東京都)3年 牧野沙季子さん
感染症の歴史、SARSと新型コロナウイルスの感染者の数の違いなどを、直接聞くことができてためになった。東北大学でのキャンパスライフや、医師になるために学んでいることなどを大学生から聞くことができ、高校生のうちからの積み重ねが大切だと強く感じた。
専修大学松戸高校(千葉県)1年 村上仁美さん
コロナ対策に取り組んできた小坂健教授が「ワーストシナリオを考えて状況に応じてアップデートする」という言葉が印象に残った。そのシナリオに対し、事前に解決策を考えておくことで、いざそのような状況になっても冷静に判断することができる。これは何にでも当てはまることなので、日頃から意識していきたい。
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