医療体験プログラム

高校生向けオンラインセミナー(4)質疑応答

 セミナーでは、講師を務めた医師との質疑応答にも時間や割いた。現役の医学生や研修医とやりとりできる場を設ける大学もあった。参加高校生からは、治療や研究に関する質問が相次いだほか、人材育成や医師としての心構えを聞く生徒もいた。


 

命を左右する手術で意識することは?/災害時の医療では何が大切か

Q 画像診断の分野でどんな研究を行っているのか、具体的に教えてほしい。

足立学園高校(東京都)2年 杉田雅人みやびさん

A 東北大・大田教授 画像診断の領域では、体の中のすべてがはっきり見える画像の技術はまだ確立されていない。そこで工学系のエンジニアの方々や、大手の医療機器メーカーなどと一緒に画像づくりの研究を続けている。

Q 動脈りゅうを手術すべきかどうかは、瘤の大きさによって判断されるのか。

横浜雙葉高校(神奈川県)3年 池原朱音さん

A 東京慈恵会医科大・柳澤助教 動脈瘤は大きいほど破裂する可能性は高い。また場所によっても破裂しやすい場合がある。これらを総合的に考え、治療の適用を判断する。手術を受けてまで治療すべきか、患者の考えも聞きながら調整していく。

Q 患者の命を左右する手術で、緊張を成功へつなげるために意識していることは何か。

市川高校(千葉県)1年 北條桜子さん

A 順天堂大・天野特任教授 難しい手術ほど頭がまわり、体を動かせことがこの分野で一人前になったということ。それが当たり前のようになっていくのが我々の医療だ。

Q 臓器移植の件数は、海外に比べて少ないという話があったが、件数が少ないと、若手医師を育成しづらいのではないか。

秋田県立秋田高校2年 鈴木悠太さん

A 大阪大・平講師 大阪大では、若手の医師に積極的に手術を担当させている。手術の件数が多いほど上手になり、若手が対応できる環境は整っていると思う。

Q 将来、DMAT(災害派遣医療チーム)の隊員になりたいが、災害に備えるにあたって、大切にしていることはあるか。

東京学芸大付属高校1年 大津誉さん

A 東京医科歯科大・藤江助教 災害現場で患者の命を救うため、自分の力を100%出せるよう、日頃から体調や体力の維持を心がけている。いつ何が起こるかわからないので、日々、楽しく生きることも大切にしている。

Q ロボット手術を世界中に広めていくにあたり、それを担う人材の育成に何が必要か。

学習院女子高等科(東京都)1年 青木美晄みひろさん

A 藤田医科大・宇山教授 従来の手術の教育を受けたうえで、ロボット手術の指導を受ける必要があり、使いこなすには12年ほどかかる。今は、やっと指導者が増えてきた段階で、指導者がいれば、きちんとしたロボット手術ができるようになる。

画面越しに活発な質疑が行われた(東京都立戸山高校提供)

オンラインセミナーを受講する生徒ら(東京都立戸山高校提供)

 

参加生徒の声

目標がより明確に/チーム医療の大切さ実感

岡山県立岡山芳泉高校2年 中尾梨乃さん

放射線診断について、高校生の模擬体験などを交えてわかりやすく説明され、この分野に進みたい私の目標がより明確になった。最新技術を使うため、専門知識が必要で大変な仕事だと思うが、日々の勉強を根気強く進めたい。

渋谷教育学園幕張高校(千葉県)2年 飛田結衣さん

「チームで医療を行う」と聞き、様々な分野の医療関係者が協力して仕事を行うことが大切だと実感した。患者に関わる仕事だけではなく、裏側から支える仕事もあると知り、興味を持つことできた。

愛知淑徳高校3年 戸崎麻亜子さん

アプリを使って、最新の質の高い医療を関係者が共有する取り組みが興味深かった。米国と日本では医師の働き方が異なることには驚いた。海外留学は自分の視野が広がり、様々な人と関係を築けると聞いて、自分も留学したいと思った。

水城高校(茨木県)2年 上原桜莉朋さりほさん

医師にとって大切なことは、患者と家族にとってたったひとつの大切な命を、自分が任されているという重大な使命を忘れずに、心して、日々緊張感を持って謙虚な気持ちで仕事をしていくことだと感じた。

海陽中等教育学校(愛知県)5年 六鹿むつが博登さん

「人を助けることに熱意が無ければ医者を志望するのはやめるべきだ」という言葉から、自分自身を見つめ直し本当に医者になるべきか、否かを考えるきっかけとなった。

吉祥女子高校(東京都)1年 佐塚悠夏ゆうなさん

医師の働き方改革で、ワーク・ライフ・バランスを実現している話が聞けて良かった。高校時代は勉強だけでなくコミュニケーション能力を身に付けたり、実際に自分が行きたい大学を見に行ったりするのが大切という話も印象的だった。

福岡県立筑紫丘高校1年 葉玉幹太さん

「その時々にやっていることがつなぎ合わさって、将来につながる」との言葉を聞き、海外留学なども含めてさまざまなことに挑戦し、見識を広め、医師としてのキャリアの幅を広げたいと思った。

埼玉県立大宮高校3年 したがきくるみさん

臓器移植を通して命のバトンをつなぐことの大切さを強く感じ、自分もドナー登録をしたいと考えた。人のためになる技術を身に付ける勉強をし、命のバトンをつなげていける人間になりたいと思った。

広島県立呉三津田高校1年 橋本康菜さん

臓器提供を待つ子どもが、脳死状態になってしまった時、ご家族の希望でドナーとなった話が印象に残った。もし自分の家族だったら、同じ選択をすることができるか、深く考えさせられた。

長野県長野高校2年 水澤明日香さん

「迷ったらワクワクする方を選ぶ」という言葉がとても印象に残った。医師になるには大学入学後も勉強が続くと聞いており、とても不安だったが、その気持ちが少し軽くなって良かった。

埼玉県立浦和高校1年 魚住逢希あいきさん

「患者とはフラットな関係を築くようにしている」との言葉から、医師を志す上では、分け隔てなく、親切に、誠実に対応する人間性も高めていく必要があると感じた。限られた高校生活の中で、受験勉強だけでなく、人を幸福にできる人との付き合い方を学びたい。

立命館慶祥高校(北海道)2年 中野沙羅さん

ロボットを使った手術に元々興味を持っていたが、日本とシンガポールを結んだ実証実験の様子を見て、日本でそんなことをしている先生がいることに、すごいなと思った。今回、話を聞いて自分もやってみたいという気持ちがさらに強くなった。

学校の教室に集まりセミナーを熱心に視聴する生徒ら(青森県立青森高校提供)

セミナーを視聴する生徒ら(青森県立青森高校提供)

 


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(2024年3月29日 14:00)
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