2020年度「地域医療オンライン体験」参加生徒の声
救急車からドクターヘリへ、患者を移送
医師を志す高校生が地域医療の最前線で学ぶ2020年度「地域医療体験プログラム」(読売新聞社主催)が3月29日から31日の3日間、オンラインで行われた。隠岐島前病院(島根県)と八戸市立市民病院(青森県)が協力したプログラム概要と参加した高校生4人の声を紹介する。(詳細は6月2日の読売新聞朝刊に掲載予定)
選ばれた4人 隠岐と八戸の医療を学ぶ
地域医療体験プログラムは、自治医科大学を卒業した医師のもとに高校生を派遣する企画で、昨年度からスタート。同大が主催する小論文・スピーチ動画コンテストに応募した約570人の中から4人が選ばれた。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、医療現場への生徒派遣は見送られたが、代替プログラムとして3日間のオンライン体験を企画、生徒たちはWEB会議システムを使い自宅のパソコンから参加した。
プログラムは2部構成で、29日と30日は隠岐島前病院が、31日は八戸市立市民病院が担当。オンラインでも現場の状況を理解してもらえるよう、両病院とも工夫を重ねて準備した。
診察や往診ライブ中継
隠岐諸島は島根県・島根半島の沖合約60キロにあり、人が暮らす4つの島と180以上の無人島からなる。そのうちの一つ、西ノ島にあるのが隠岐島前病院だ。
プログラムでは白石吉彦院長(当時)による外来診察や、隣の島の診療所に船で移動して行う診察・往診をライブ中継。離島医療を支える看護師やリハビリ担当の作業療法士らの医療従事者、住民などとの座談会も行われ、島における病院の位置づけやアットホームな雰囲気の医療現場を伝えた。
ドクターヘリ出動 迫真の現場紹介
八戸市立市民病院は医療過疎が進む青森県の県南地域の中核病院。ドクターヘリ1機とドクターカー3台を駆使し、医師が現場に出動する救急医療を展開する。年間出動件数2000件は日本トップクラスだ。
講師を務めた今明秀院長は、その現場を撮影した動画を紹介しながら、地方で医療に取り組むやりがいや心の痛み、達成感などを語った。研修医2人とのミーティングも行われた。
生徒たちの声
3日間を体験した生徒たちは何を感じ、何を得たのか。
※所属学校名は応募当時
江渡恵里奈グレース さん
目黒星美学園高校3年(東京)
八戸へドクターヘリの導入を一から進めた今先生が、「今まで誰もやってこなかったから、何でもできる」と語った姿がたいへん印象に残っています。地方でも、時代遅れで地味な場所ばかりではないと再認識しました。今先生は「数多くの修羅場で経験を積み、つらい思いをすることで優しい人になれる」など、医師である以前に人間として大切なこともアドバイスしてくれました。「命は都会と同じくらい田舎にもある」という言葉も忘れずにいたいです。
金子桃子 さん
愛知県立岡崎高校2年
隠岐の診察室から生中継された診療の様子を見て、白石先生が島の人たちに近い目線で医療をしていることに感銘を受けました。離島は不便で大変だというイメージでしたが、白石先生は島のお祭りへの参加のほか、島の人たちに教わりながら庭先で蜂蜜作りを始めるなど、島の生活を積極的に楽しみ、それを患者やスタッフとの共通の話題にしていました。和やかな雰囲気の病院で様々なスタッフと連携して行う地域医療にも魅力を感じました。
高橋沙希 さん
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校5年
隠岐では、地域の人が「病院は宝だ」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。こんなに地域に愛されている病院を私は見たことがありません。それは白石先生をはじめとする病院の方々の努力の賜物なのだと思います。八戸での、ドクターヘリなど救急医療の動画では、改めて"いのち"の重みを感じました。患者の生死がまさに自分の手にかかっている、そんな状況で自分は何を思うか、どうありたいか、色々なことを想像しました。
立崎 萌 さん
青森県立三本木高校3年
高校生でこんなに素敵な教育を受けられたことを感謝するとともに、今後もこのプログラムに多くの高校生が参加することを願います。参加した私たちは、より良い地域医療を創造していく医療従事者になることが、ある意味義務なのかなという、使命感のようなものが芽生えました。これからも日本の地域医療を学んでいくと同時に、既存の方法に囚われないためにも、海外の事例、例えば家庭医の制度なども勉強していきたいと思います。
住民と白石医師とのオンライン座談会が終わり、参加者全員で「ありがとう!」 |