親子で考える身近な防災ー墨田区で「絵本と防災・減災教育」フォーラム

シンポジウムでは防災教育の重要性などが議論された(東京都墨田区の曳舟文化センターで)

 日本列島各地で記録的な大雨が続く中、絵本を通して防災について考えるフォーラム「絵本と防災・減災教育」(文字・活字文化推進機構主催、東京都墨田区など後援、読売新聞社特別協力)が8月5日、墨田区の曳舟文化センターで開かれました。

 

「災害時 行動するきっかけ共有を」

 文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長(読売新聞グループ本社社長)が冒頭、「大災害に直面した時、自分に何ができるのか、行動するきっかけを共有したい」とあいさつし、続いて絵本専門士の安冨ゆかりさんが、約60人の聴衆を前に、津波への備えをテーマにした絵本「うみといきる」の読み語りを行いました。

 基調報告では、金井昌信・群馬大教授(災害社会工学)が、誰でも実践できる防災訓練や自ら考えて行動できる防災教育の重要性を指摘しました。

 

「大切なもの守る備えは自分しかできない」

 後半のシンポジウムでは、幼児教育が専門の鈴木みゆき国学院大教授がコーディネーターを務め、金井教授、読売新聞・防災情報サイト「防災ニッポン」の笠間亜紀子編集長、NPO法人日本トイレ研究所の加藤篤代表理事が、家庭でできる防災と減災教育について意見を交わしました。

 防災士の資格も持つ笠間編集長は自然災害の激甚化が進む中、災害時に読者が「知っていてよかった」と思える情報提供を心がけていると話し、100円ショップで防災グッズを購入したリポートなど、サイトの人気記事を紹介。「いつどこで被災するか予測できない。その時に命や大切なものを守るための備えは自分にしかできない」と訴えました。

 

「地震後3時間以内にトイレに行きたくなった」約4割

 加藤代表理事は、地震発生後3時間以内にトイレを使いたくなった人は38.5%、東日本大震災では避難所に仮設トイレが3日以内に行きわたった自治体は34%にとどまったというデータを紹介。「災害時のトイレ問題は深刻だ」と指摘し、下水道が復旧するまでの応急措置として、自宅の洋式便器を利用した携帯トイレの使い方などを紹介しました。

 

防災を絵本で考える原画展も

 フォーラムと関連し隅田区立ひきふね図書館では8月1日から7日まで防災・減災を考える原画展「うみといきる」が開かれました。会場には、連日親子連れが訪れ、津波に襲われた街の絵や、美しい夕暮れの海の絵などに見入っていました。

 防災フォーラムと原画展の企画当初から携わった鈴木みゆき国学院大教授は、「絵本の読み語りなどを通じて、幼い頃から災害時に主体的な行動ができる子供を育てていきたい」と語りました。



(2022年8月16日 17:16)
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