【動画】筑駒高の1年チームが初優勝 高校生の英語ディベート

オンラインで行われたディベート

 時事問題などを高校生が英語を使って即興で討論する「第9回日本高校生パーラメンタリーディベート連盟杯 全国大会」(文部科学省など後援、メディアパートナー読売新聞)が3月22、23の両日開かれ、筑波大付属駒場高(東京=筑駒)のチームが初優勝した。同チームのメンバーは1年生ばかり。1年生の優勝も初という快挙だった。準優勝は渋谷教育学園渋谷高(同=渋渋)。


 

 今年は、全国大会に進んだ52校のうち、新型コロナウイルスの影響などで8校が辞退し、44校が参加した。

 

 大会では、「密集」状態を避けるため、ウェブ会議サービスZoomや無料通信アプリLINE、Facebookなどを活用。生徒らは無線LAN環境が整った学校や自宅に、審査員らは東京都内の施設にそれぞれ集合。パソコン画面を通したオンライン・バトルを繰り広げた。

 

 決勝戦で示された論題は「私的所有権を廃止する」。対戦直前に、「廃止」を提案する側の「与党」に渋渋、それに反論する側の「野党」に筑駒が割り振られ、各チーム(3人)は25分間で自分たちの主張を準備・整理した。対戦では、激しい討論の結果、筑駒が13人の審査員の大半から支持を得て勝利した。

 

 決勝戦での論題について、与党側になった渋渋は「論題の意味自体を読み解くのに時間がかかってしまった」「国際社会を見回すとほとんどの国で資本主義制が取り入れられ、個人の資産が尊重されるのが当たり前な風潮があるので、それに逆らうのはジャッジに良い印象を残すのも難しく、また実際に共産主義制を導入して経済が上手く行っている国もほぼ無いためどう証明していこうかすごく迷った」という。

 

優勝した筑波大付属駒場高の生徒

 

 一方の野党側の筑駒は「決勝戦でこの(レベルの)論題が出るのか」と驚いたものの、「2016年の大学生の世界大会(WUDC)決勝で出た(有名な)問題だったので与党サイドでも困らなかったと思うが、この論題を肯定する哲学的考察は準備時間内に思いつくのは難しいので、予備知識なく政府側になった場合は、難しかっただろう」と余裕を見せていた。

 

 また、オンライン開催となったことについても、最近はディベート自体がオンラインで実施するケースが増えているので、普段から大学生チームや社会人チームと対戦してスキルを磨いている筑駒のメンバーとしては、楽勝だったのかもしれない。

 

 回線トラブルなどで試合が続行できなくなる事態も懸念されたが、「大きなトラブルはなかった。ほっとした」と北原隆志日本高校生パーラメンタリーディベート連盟理事長(渋谷教育学園渋谷高教諭)は胸をなで下ろしていた。

 

●決勝戦のようすを動画で(約1時間)

 

審査員の談話

 2014年、2015年の大会に渋谷教育学園渋谷高チームの一員として参加、今回初めて審査員として参加した倉田芽依さん(米グリネル・カレッジ留学中)に今回の全国大会を振り返ってもらった。

 2015年の大会で渋谷教育学園渋谷高チームの一員として参加、優勝したが、当時の私が今回参加して優勝できたか定かではない。それほど参加者のパフォーマンスはきわめてよかった。優勝した筑波大付属駒場高、準優勝の渋谷教育学園渋谷高、準決勝で敗れた渋谷教育学園幕張高の各チームには、高校生英語ディベートの世界大会、「ディベート世界選手権(WSDC)」の日本チーム代表が入っているが、出来をみると2020年のWSDC大会(メキシコ市、7月19日~29日予定)ではこれまでにない成績を収めるのではないか、と考えている。

コロナウイルスに十分注意しながら行われた審査

 

決勝進出の8校

県立宇都宮東高(栃木)

渋谷教育学園幕張高(千葉)

渋谷教育学園渋谷高(東京)準優勝

筑波大付属駒場高(同)優勝

栄光学園高(神奈川)

聖光学院高(同)

関西学院千里国際高(大阪)

神戸大付属中等教育学校(兵庫)

 

決勝トーナメントで出された論題(motion)

1日目(3月22日)

第1ラウンド

This House would abolish the Olympic games.

本院はオリンピック競技を中止する

第2ラウンド

This House would prohibit criminals from publishing descriptions of their crimes.

本院は犯罪者が自分の犯罪内容を公表することを禁止する

第3ラウンド

This House believes that the state should not subsidize art.

本院は国が芸術に助成金を支給するべきではないと信じる

第4ラウンド

This House believes that feminism movement should oppose affirmative action for women.

本院はフェミニズム運動は女性のためのアファーマティブアクションに反対するべきだと信じる

 

2日目(3月23日)

QF(Quarter Final=準々決勝)

This House believes that humanitarian aid does more harm than good to active conflict zone.

本院は紛争中の地域に対する人道援助は、害の方が大きいと信じる

SF(Semi Final=準決勝)

This House would prohibit corporations from sponsoring academic research.

本院は法人が学術研究に出資することを禁じる

GF(Grand Final=決勝)

This House would abolish private property.

本院は私的所有権を廃止する

■即興型英語ディベートとは Parliamentary Debate

 もともと、イギリス議会の答弁トレーニングとして始まった競技ディベート。高校生、大学生向けの国際大会や世界大会がある。

【高校生連盟杯の流れ】

 試合の約20分前に論題が発表される。各3人のチームには政府(肯定)と野党(否定)の役割が与えられ、限られた時間と知識で立論することが求められる。1人4分〜7分でそれぞれの主張を述べた後、質問や反論をしながらスピーチを繰り返し、どちらがジャッジを説得できるかを競う。

1)論題発表

 政府、野党の立場決定 20分でスピーチ準備(決勝は25分)

2)ディベート

 賛否の根拠、議論裏づける具体例を示しながら主張と反論(各5分、決勝は7分)

3)総括スピーチ

 改めて自説の優位性をアピール(各4分)

4)審査

 ロジックとエビデンスはあったか?優れたスピーチをジャッジ

関連記事:教育ネットワーク会報40号(PDF)

>>「即興ディベート 英語とロジックの応酬」

 

(2020年4月28日 11:03)
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