体育館で170人がまわしよみ新聞 埼玉・春日部市立豊野中1年

出来上がった新聞を手に3分間の発表。全員が発言する

 新聞をグループで回し読みし、記事を切り抜いて作る「まわしよみ新聞」。楽しみながら社会への関心やコミュニケーション力を高められるメディア遊びとして注目されている。埼玉県春日部市立豊野中学校(小林修校長)では3月3日、1年生169人が「まわしよみ新聞」に挑戦した。
 体育館には班ごとに作業台として机が配置され、生徒たちは揃いのジャージ姿で集合した。講師を務めた読売新聞東京本社の高野光一郎記者は、まず「準備体操」として当日の朝刊をひたすらめくるように指示した。
 大きな紙面に不慣れで、扱いづらそうにする様子も見られたが、班の中で面白い記事や写真を発見した生徒が声を上げると、周囲ものぞき込み、熱心にめくり始める。
 一通り目を通したところで、講師の高野記者が、新聞の特色や見出しの役割など、短時間でしっかり読める方法を生徒たちに伝える。ニュースが紙面に載るまでの過程や雑学などをクイズ形式で紹介し、「まわしよみ新聞」は「ニュースを感じて、伝える」ことと説明した。

 

高まるプレゼン能力 興味ある記事に新たな気付き

 いよいよ作業開始。まず2、3の記事を選んで切り抜く。自分が何かを感じたニュースなら、小さなベタ記事でもよい。その後に、3~5人一組になって、切り抜きを手に、級友に内容を説明し、選んだ理由や感想をつけ加える。一種のプレゼンテーションで、記事の内容をまとめる力、わかりやすく相手の関心をかき立てるように話す力が必要になる。高野記者を始め、先生方もグループの間を回り、発表に耳を傾け、質問やアドバイスを投げかけた。
 互いの発言を聞いた上で、自分たちの「まわしよみ新聞」で何をトップ記事にするか「編集会議」で決めていく。記事をうまくレイアウトしながら貼りつけ、コメントや感想を書き込み、最後には独自の新聞題字を付ける。
 当日の朝刊は、米大統領選予備選が1面トップで、女子サッカーの五輪予選も大きく取り上げられていた。だが、稲垣那奈さんは公立高校入試の記事を切り抜いた。「受験のことをそろそろ考えなくてはと思った」といい、この身近な題材はグループの賛同を集めてトップ記事になった。題字は「社会新聞」。稲垣さんは「これまで新聞を読もうと思わなかったけれど、こんなにいろいろな、自分にも興味のある記事が載っていることがわかった」と話していた。

 

きっかけはYCでの職場体験

 今回の授業が実現したきっかけは、昨年11月に同校1年の男子生徒4人が、新聞販売店「YC春日部東部」で職場体験学習をしたこと。仕事体験のかたわら、「まわしよみ新聞」に挑戦した。大きな模造紙いっぱいに記事を貼り、全員が感想やコメントを書き込んだ新聞はなかなかの出来。1年生の担任の飛田哲也教諭は、「4人にはいい経験になった。本校では各教室に新聞が置いてあるが、生徒はなかなか手にとらない。幅広い記事が載っていることに気づく機会になれば」と期待を込める。4人の新聞はこの日の授業にも見本として持ち込まれた。
 2日目は発表会。1グループの持ち時間は3分間で、全員が発言することをルールに、自分が選んだ記事や題字について1人ずつ話した。全5クラスが混合されるように発表グループを構成したので、聴衆は他のクラスの生徒ばかり。質問や意見が出ると、その場で答えなくてはならない。発表が3分間には収まり切らないグループも出た。
 小林校長は、「まわしよみ新聞は、自分で課題を見つけ、お互いに意見交換しながら考えを深める点で、まさにアクティブ・ラーニング(能動的学修)になっている」と話した。

(2016年5月10日 15:52)
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