渋谷教育学園幕張高(千葉県)卒、ボストンカレッジ(米国)1年(執筆時)
林 佑香 さん
Hayashi Yuka
肌寒い風を感じながら、チェスナットヒル・キャンパス寮からボストンカレッジ駅近辺に置かれた教会オフィスまで小走りする。赤レンガと真っ白な窓の列が特徴的なこのオフィスに入るとすぐ4年生の教室に向かい、私の小さなお友達―ダニエル―に挨拶をする。
私を見つけると、ダニエルは目を緩やかなアーチ状に細め、口角が上がるとともに大ぶりな前歯が二つ、顔を出す。彼のこの可愛らしい笑顔は幾度となく、ボストンカレッジ進学を決断した理由を思い出させてくれる。
それは六年前、知り合いの小児科でお手伝いをしていた時のこと。脳性麻痺を持つ男の子の家族に対し、お医者さんが様々な観点から幅広くアドバイスをしていたことを今でも鮮明に覚えている。この瞬間、私はいかに、医療生物学的、環境的、社会的要素が子供の発達に影響しているかについて、もっと知りたくてたまらなくなった。
ゆえに、「人のために行動できる男女」を育てることに熱心なイエズス会設立の大学、ボストンカレッジの教育学部から、応用心理学・人間発達専攻として合格をいただいた時は一切迷いがなかった。この大学での経験は、分野横断的な方法で子供の成長に好影響を及ぼしたいという私の夢への第一歩に繋がる。そう私は信じていた。
ちなみに、私は正しかったと思う。経験の浅い一年生だというのにも、日曜学校は私を、自閉症を持つダニエルの教育アシスタントとして受け入れてくれた。
ダニエルと過ごす日々や、「児童発達」と「特別支援教育」の授業でのディスカッションを通して、ダニエルは決して「障害」を持っているのではなく、それも含め彼の「個性」であるという考えが一層増した。そして、この蔓延している、時には軽視するような誤解に対抗し、どんな子供でも健やかに成長できる包括的な環境作りに携われるよう、私はこれからも共感し、学び、声をあげていきたいと思う。
ボストンカレッジでの大学生活を通して、私は自分の児童発達への情熱を社会奉仕に適応する機会のみならず、常に「人のために」何ができるかについて探究する姿勢も得ることができた。
(会報編集部抄訳 The Japan News 2019年2月7日)
英語の原文は>>The Japan Newsのウェブサイトでお読みいただけます。
日曜学校でのダニエル君と妹さんと一緒の林さん(中央)=本人提供 |
ボストンカレッジ
1863年にイエズス会によって設立された、リベラル・アーツ、研究に力を入れているカトリックの私立総合大学。著名な出身者にジョン・ケリー元米国務長官ら。
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