海外で学ぶ・リレーエッセー[70]米オーバリン大 小さな変化を起こそう

留学生仲間と新入生を迎える準備(右下)

コンコルディア・インターナショナルスクール・ハノイ(ベトナム)卒、米オーバリン大学3年(20年11月時点)

安達 涼 さん

Adachi Ryo

 「1人が世界を変えることはできると思いますか?」

 

 「私たち"も"そう思います」

 

 こんなキャッチフレーズをウェブサイトの最上部に掲げるオーバリン大学に入学して約2年半が経った。

 

 全米の大学で初めて女子学生・黒人学生を受け入れ、男女のルームメイトを許可。先進的で知られるこの大学の、「初めて」を目指すハングリー精神は止まるところを知らない。現在は大学史上初の黒人女性の学長のもと、環境問題や人種問題への取り組みも非常に盛んだ。

 

 そんな勢いのあるところに惹(ひ)かれてオーバリン大学を選んだ私だったが、来てすぐに気後れした。周りは、多くのデモや抗議活動に参加し、高校でもリーダーシップを発揮して来た子ばかり。自分がやりたいこと、興味のあることがちっぽけに思えた。

 

 そんな私にきっかけをくれたのが、大学のアドミッション・オフィス(=受験生の願書を読み、合否の判断を下すオフィス)だった。オーバリン大学は日本人専用の奨学金があり、留学生への待遇も手厚いのに、受験の時に出てくる情報の中には、留学生向けに特化したものがほとんどなかった。

大学のインターナショナルクラブの仲間と(後列右から2人目)

 もっと国外の高校生にアプローチできないか──。そう思った私は、アドミッションのトップの方に、「(留学しようとする高校生のために)何かしたいです」というメールを送った。

 

 なんでもない1通のメール。でもそれがきっかけで、オフィス内に新たにインターンというポジションを新設していただいた。大学2年時からは、国外の受験生向けの座談会やメール配信、面接、バーチャルキャンパスツアーなど、多くのプロジェクトにインターンの資格で取り組んできた。オフィス内のスタッフと協力し、国外からの受験者数は前年比で1.5倍にまで伸びた。でも、私が嬉(うれ)しかったのはその数字ではなかった。

 

 メールや面接を通してやりとりした受験生が、私の話を聞いた後にオーバリン大学進学を決めたと言ってくれたこと。キャンパスツアーで出会った高校生が私の名前を覚えて帰って、早期出願しますとオフィス宛にメールを送って来てくれたこと。

 

 私1人で大きな変化を起こすことは難しいかもしれない。でも、誰かの人生のほんの一部でも何か変化を起こせたのかもしれないと思えた。

 「1人が世界を変えることはできると思いますか?」

 

 私はこの質問にイエスと答えられる自信は今もない。でも、変化を起こしたいという学生の意思を大事にするこの大学で、一歩一歩前進していきたいと思う。

寮の自室で=いずれも本人提供

オーバリン大学

1833年、長老派教会によって設立された米オハイオ州に本部があるリベラル・アーツ・カレッジ。1833年に女子学生を受け入れ、1835年には有色人種の学生を受け入れた。卒業生には、ライシャワー元駐日大使。

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海外留学を目指す高校生に進学支援を行っているNPO法人「留学フェローシップ」のメンバーが、海外のキャンパスライフをリレー連載します。留学フェローシップの詳細は>>ウェブサイトへ。

(2020年11月25日 10:15)
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