沼田 晶弘
■万能ノートゆえの悩み
こうして、4年3組の子どもたちのMDノートには、面白い調べものや意見がたくさん現れてきたのですが、ちょっとしたジレンマも生じてきました。
ボクがコレすごい、面白いと思っても、それをクラス全体で共有するのが難しいのです。ワードバンクでやっている「ルパンタイム」が、MDノートではできない。なぜなら、日記帳も兼ねたノートなので、一部分だけを友だちに読ませることが難しいからです。同じページにプライベートなことが書いてあったりするし。
その代わりとしてボクが導入したのが、前回説明したSLA=セルフラーニングアドバイザー制度なのです。
■SLAライセンス制度スタート
つまり、友だちから「何かSLのネタない?」って相談されたら、「こういう風にやったらいいんじゃないの?」ってアドバイスできるライセンスです。
その資格を得る条件は、日々のMDノートでボクを感心させること。1回くらいではダメで、何度も感心させてくれなくては、ライセンスは交付できないよと言っています。
ライセンスを得た子は前にも説明した通り、SLAカードをもらって机に貼り出すことができます。制度がスタートしたのは6月中旬でしたが、その月は8人がライセンス保持者となりました。
ボクは、「ルパンタイム」をイメージしてこのシステムを作ったので、SLネタに困っている子の救済策のつもりでした。しかし、フタを開けてみると、あんまりSLAに相談にやってくる子がいない。その代わり、机のカードが子どもたちのステータスとなって、何も貼れない子が悔しがるようになりました。ボクの思惑とちょっと違う方向にハネてしまったようです。
■漢字テストライセンスも作る
さらに、子どもたちの希望で、KTKという資格カードも作ることになりました。「漢字テスト強化」です。ボクのクラスでは伝統的に、漢字テストの丸つけを子どもたちが行い、それをプロジェクト化しています。もちろん、その教育的な意義は保護者会で説明し、ご理解をいただいています。
今の4年3組では、そのプロジェクト人気が加熱していました。なぜかというと、KTKプロジェクトをやっている子は、漢字テストの成績が良くなるからです。採点係をしていると、他の子の間違いやすいところが自然とわかる。これもまた一種のセルフラーニングなんです。
だから、KTKに入りたい子が多くなりすぎて、選抜試験まで行うはめになりました。そのKTKもライセンスカードにして、机に貼り出せるようにした。そうなると、SLAもKTKももらえない子は、何となくカッコがつかない。「何でも自分で資格書いて貼っていいよ」と白いライセンスカードを配ったのですが、誰も使おうとしません。やっぱり子どもには子どものプライドがあるんですね。
ただし、ライセンスは毎月オールリセットです。出すときは随時ですが、月末にすべて失効します。運転免許証みたいにパンチ穴を開けて、カードはただの記念品となります。
10月からは新たに、「新聞オピニオンマスター(仮称)」という新ライセンスを作ろうかと考えています。SLAのライセンサーは、たくさん調べるのはいいんですが、新聞オピニオンをあまりやらないので(笑)。また、例の計トレ(計算トレーニング)で「U-1(Under 1minute)」という新資格を作る予定です。1分以内にクリアした者だけが許される、計トレ史上、最高の称号になります!
対談終了後、阿部さんと。阿部さんはあの「いつやるか?今でしょ!」のCMを生み出した人です |
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