沼田 晶弘
■学校をリアル社会につなげる
「深く調べること」はもう当たり前。その上で「どう自分の意見を言うか」が必要な時代になってきた、と前回書きました。リサーチが楽になった分、調べたことをどう活かすかが問われてくる。それは、小学校から教えるべきことだと思います。
「学校だけで勉強ができる子」ではダメな時代になりつつある。「勉強したことを、自分でアレンジして、世の中で使える子」をこれからの学校は育てていかなければなりません。そうでないと、これからどんどん未知のことが起きて、複雑化する社会では通用しないからです。
それを阻むものがあるとしたら、残念ですが、子どもをリアル社会から隔離しようとする、旧来の頭の固い学校のあり方ではないかと思っています。
誰よりもまず、子どもを教える先生自身が、もっと社会とつながるように、変わらなければいけないのではないでしょうか。最近の社会の変化の速さを考えると、あまり猶予があるとは思えません。
■「できないこと」も手本になる
「なぜ直角が90度なのか?」という教科書にない問いを、子どもと一緒に考えることから今回の話は始まりました。
ボクは頭に浮かんだ疑問を、そのまま放ったりしません。今知らないことを恥ずかしいとも思いません。「わからないことは、教室で子どもに聞け」がボクの信条です。自分が知りたい疑問を、子どもと一緒に解き明かすことほど、エキサイティングで楽しいことはありません。
ボクにできないことはたくさんあります。それをよく指摘されもします(笑)。しかし、この点に関しては、ボクは子どもたちの"よき手本"になりたいと思っています。
何かの疑問が浮かんだ時、「教科書にそう書いてある」じゃなくて、自分で一回立ち止まって考えることの大事さを、身をもって示したい。勉強ができても、知識が豊富でも、教科書通りのことしかできない人、他人に言われたことしかできない人は、これからの世の中に通じないぞと、子どもたちにわかってほしい。
■SLを突き詰めると、学校がなくなる?
だからボクは、いつも新しい授業を工夫し続けています。自分の頭で考え、自分で調べて、自分の意見を言える子どもたちを、一人でも多く育てたいと思うからです。
「セルフラーニングを突き詰めていくと、そのうち学校というシステムが不要になってしまうのでは?」
こう心配する人がいるかもしれません。確かに昔の寺子屋と違って、「勉強することがさほど好きでない子たち」をムリヤリ集めて教室に座らせているのが学校、という側面はあります。みんながSLで学べるなら、わざわざ学校に来る必要はなくなるかもしれない。
それでも、ボクは学校に子どもが集まる理由はあると思っています。一つのことを学ぶ時に、いろいろな人の意見を聞けるからです。家でSLしている時は、自分の考えしかない。でも、翌日学校に来て、先生や友だちと話すことで、自分とは違う考え方を知ることができる。SLが究極の学びだとしたら、学校は異なる個性がぶつかり合うところ。自分の個性を知ることができる究極の場所なんです。
だから、学校はきっとなくならない。ただボクは、学校も、子どもも、先生も、今よりもう少し「自由」になってもいいんじゃないか、と思います。
教育は、もうちょっと自由になっていい。
これが、ボクのラストメッセージです。
ダンシング掃除、もうすぐ始まるよ~ |
■みんなに、ありがとう!
4年3組が〈6代目・世界一のクラス〉になる道のりはまだ半ばです。これから「勝手に東京観光大使」も本格的に始まりますし、まだまだこのクラスでは面白いことがたくさん起きるはずです。
それを楽しみにしつつ、このコラムの筆をいったんおこうと思います。
2015年11月に連載がスタートしたので、ちょうど丸2年。いろいろなことを書かせてもらいました。ダンシング掃除、アナザーゴール、勝手に観光大使、花畑の伝説、運動会リレー、卒業式、教育実習生のこと、そして周治との思い出......。
自分の考えをまとめることで、ボクも教師として大きく成長できたと思いますし、それを一冊の本にすることができたのも幸運でした。何より、このコラムを通じて、読者のみなさんとつながることができたのをうれしく思っています。
最後に、今までタンニンしてきたすべての子どもたちに感謝をささげます。すべてはみんなが頑張ってくれたおかげです。このコラムはみんなとの生活の記録でもありました。
Be Cool、Company、Brave、Brilliant、もも、Action、AttrAction、Reflect、Bright、 Discover、Motto! Discoverの子どもたち、ありがとう!
そして、これからもよろしく!
2017年11月 沼田 晶弘
やっぱり最後はコレでなくちゃ! 2年間のご愛読、ありがとうございました! |
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