小中教員 非正規4万人 給与5~8割 担任や部活指導
2017年6月27日 読売新聞朝刊 掲載
公立小中学校に非正規で雇われ、処遇に差がありながら、担任や部活動の指導など正規の教員とほぼ同じ仕事をする臨時的教員が、全国で4万人以上いることが、文部科学省のまとめでわかった。臨時的教員が10%超の県もあり、文科省は教育委員会から聞き取るなどして処遇改善を働きかける方針だ。
文科省のまとめによると、全国の公立小中学校で働く臨時的教員は、正規教員が出産育児などで休職する際に雇う代用教員らを除いて4万1030人(2016年度)。子どもの数や学級数から算出される教員の定数58万1357人(16年度)の約7%を占めていた。割合が最も高かったのは沖縄県の15.5%で、最も低いのは東京都の1.4%。
臨時的教員の雇用期間は、地方公務員法の規定によって事実上1年以内のため、各教委は年度末などに「解雇」し、再び採用。翌年度以降も雇用している。原則1年で学校を異動し、保護者や子どもに対して、非正規であることを説明していない学校も多いという。
給与は正規教員の5~8割程度で、育児休業は原則取れず、通勤手当や扶養手当が出ない地域もある。研修に関する規定がないなど正規教員とは処遇で大きな差がある。ところが、仕事内容は正規教員とほぼ同じ役割を求められ、多くが担任や学校運営に必要な校務、部活動の指導をしている。
日本教職員組合が今年2月、臨時的教員らの実態を初めて調べたところ、臨時的教員として働く年数は平均5.9年だった。
教員の給与や採用などに関しては、2000年代に入って各教委の裁量が拡大しており、複数の教委は理由として、(1)子どもの減少に備えての雇用調整 (2)人件費の節約――を挙げた。ある県教委の採用担当者は「正規採用すると後で解雇できない」と説明した。
割合が最多だった沖縄県教委は「子どもたちに責任を持って継続的な指導をしていくためにも、研修制度もある正規教員を増やしたい」としている。文科省の担当者は「正規教員が本来行うべき業務を、財政的理由などから非正規に恒常的に行わせているとしたら問題」と話した。
■雇用形態見直しを
政府の働き方改革実現会議の委員を務めた水町勇一郎・東大教授は「公務員の非正規問題は、働き方改革の中で残された課題。不安を抱えながら教壇に立つストレスは大きく、子どもへの影響も心配だ。同じ仕事、責任なら、処遇はできる限り同じにすべきで、現行の雇用形態を見直す必要がある」と指摘している。
解説●非正規教員 「同一労働」で不安定な立場
全国で4万人以上もいる臨時的教員は、正規教員と同様の仕事をしながら、処遇に差があり、立場も不安定だ。
毎年度、正規教員の配置を決めてから不足する人員を補うため、翌年度の雇用があるかどうかは、年度末まで分からないことが多い。富山県内の女性は臨時的教員として通算10年以上勤めるが、「給与は上がらないうえ、仕事があるかどうか4月まで決まらず、ストレスで体調を崩したこともある」と打ち明ける。
学校数が減り、自治体の財政状況も厳しくなる中、「雇い止めが容易な臨時的教員が一定数必要」と各教育委員会の人事担当者は話す。2004年度以降、少人数学級など弾力的な学習を行うために教員の給与水準を下げて、教員数を増やせるようになったことが、臨時的教員を雇う背景にあるとされる。
「非正規であろうと、子どもたちや保護者に対する責任の重さは変わらない」と教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が指摘する。処遇が低いままでは、人材確保は難しく、教育の質にも影響しかねないため、雇用条件の改善は必要だろう。(社会保障部 大広悠子)
[MEMO] 臨時的教員
地方公務員法の臨時職員に関する規定に基づき雇用される。雇用期間は6か月以内、更新は1回限りと定められ、事実上1年以内しか雇えない。教員の免許は持っているものの、各教育委員会の採用試験に合格している必要はない。
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