『部首のはなし』[徒然読書]漢字の授業を楽しく

読売新聞教育ネットワークの田中孝宏アドバイザーが、教員の皆さんにお薦めする本を、中央公論新社のラインナップから紹介します!

部首のはなし

阿辻 哲次 著

 なぜ「卍」は《十》部6画なのか?「巨」はなぜ《工》部なのか? なぜ女ヘンがあって男ヘンはないのか......。漢字が誕生して三千年、漢字の字体はさまざまに変化していった。そのなかで、多くの部首が生まれ、消えていった。所属する部首を移動したり、部首が分からなくなってしまったものも多い。漢字を分解してみると、その合理性と矛盾がはじめて見えてくる。50の部首ごとにたどる楽しい漢字エッセイ。

●初版刊行日:2004/7/25 ●新書判/224ページ ●定価:792円(10%税込)

 

漢字の授業を楽しく

 「冫(にすい)」は、水が凍ってひきつった形。「氵(さんずい)」は、水が流れるさま。

 

 部首の違いがそれを用いた漢字の種類を示す。前者が氷、後者が水に関するものになる。

 

 漢字のつくりを教える時に必ず触れる部首の話。この本は部首そのものの意味から、漢字の成り立ちを興味深く教えてくれる。

 

 漢字の学習は、書き順と読み方に終始しがちだが、部首別に指導していくのはおもしろそうだ。「したごころ」の漢字は「恭」「慕」の2文字しかない。「父(ちち)」の漢字は「爸」「爹」「爺」のみで、父の影はうすいそうだ。そんな話を交えながらの漢字学習は楽しいに違いない。

 

 挿入話に著者が友人の小学校校長から聞いた話が載っている。「ある日、子供から『馬や虎や鹿にはどうしてけものへんがつかないの?』と質問され立ち往生した」という。さて、あなたは答えられますか?

 

 わたしたちも、立ち往生する前にぜひこの本を読んで理由を知っておきたいものだ。

 

 「月」は「にくづき」「つきへん」「ふなづき」と3つの読み方があり、それぞれ意味が違うという。ここを読んだ時は、驚き感心した。この本の内容を生かせば、子どもたちの興味を湧き立たせる漢字の授業になることまちがいない。

 

元小学校長。乱読ならぬ雑読。最近は地域の図書館のホームページで検索するとメールで知らせてくれるので、それに頼りきった主体性のない本選び。「ブックぶらタナカ」を楽しんでます。

前へ<<

(2022年3月 9日 09:33)
TOP