大学を歩く:昼休みに一斉休憩する事務室

大学を専門に取材する記者のコラムです

 

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 読売新聞の「大学の実力」調査では毎回、職員の人数を尋ねている。充実した学生生活に、その力が欠かせないからだ。

 例えば時間割作成。高校までと違い、自分で作ることになるが、どの分野から何単位の履修が必須など、約束事があるのが通例だ。わからないまま作ると、進級が危うくなる場合もある。そんな時の駆け込み寺が「教務課」などと呼ばれる事務部門。約束事を説明し、学生が望む進路に応じた授業を助言してくれる職員がいる。ほかにも奨学金や留学や就職......さまざまな問題に直面したとき、頼るべき存在なのだ。

 

 しかし、本当に頼れる職員はどれだけいるか。とりあえず「大学の実力」調査で、職員1人が何人の学生を受け持っているかの目安は出る。だがそれだけでは見極めが難しいから、実際に足を運んで点検してほしい。

 まずは事務室の構造。いま多くの大学で、学生生活に関わる様々な部署を一か所に集めた「ワンストップ・サービス」を実施している。学生の手間が省けると同時に、勤務年数40年のベテラン私大職員によると、部署をまとめることで連携が密になり、「職員の資質向上といった効能もある」とか。そうした作りになっているかを見るのだ。

 次に窓口が開いている時間のチェックを。ある大学の事務室前で、昼休みに学生が行列しているのを見た。履修登録のためだが、昼休みに職員が「一斉休憩」に入ったため、帰るのを待っているのだという。午後の授業時間を気にしながら菓子パンをぱくつく学生の間から、「授業に間に合わないかも」と心配する声が出ていた。

 昼休みに事務室を閉じてしまう大学、実は珍しくない。交代で取ればよさそうなものだが、「なかなかそうもいかない」ともらす事務局長も。

 

 職員は労働者。休憩時間のありようが大切なことは重々承知しつつ、「頼るべき職員がこれでは」と学生への同情が思わず吐息となって出た。残念ながら、これも「大学の実力」だ。(専門委員 松本美奈)

(2015年4月17日 11:40)
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