大学を歩く:大学の常識 世間の非常識

大学を専門に取材する記者のコラムです

 

 先日、一斉休憩でお昼に閉まる大学事務室が多い実態を小覧で伝えたところ、東京都内の大学の1年生(18)から連絡をもらった。「うちの大学も、です」。入学早々、高校では見たことのない対応ぶりに驚いたという。

 

 実際にその大学を昼時に訪れると、なるほど、事務室のドア前に「昼休み」の張り紙が。ためしに電話をかけると、業務時間外だから改めてかけ直すよう求める録音が受話器に流れるだけ。徹底している。

 

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 それでも同大幹部によると、「昔よりはまし」とか。就業規則で職員の勤務時間は午前9時から午後5時と決まっている。かつては昼休みの時間帯が学生とそっくり重なっていたが、今時こんなことでいいのかと職員自身から反省の声が上がり、1時間早めて、学生の休憩時間には開いているようになったというのだ。ただし、一斉休憩の慣習は変わらない。学生が最後の授業を終える時刻よりも前に事務室が閉まる態勢も、問題視されつつ改まらない。「大学は変われない組織なのですよ」と同大幹部。

 

 都内の別の大学は数年前、正午から午後1時までの休憩を午前11時半からの1時間に改めた。12時半から1時間の学生の休憩に対応するためだ。はた目にはさしたる変更と映らないが、「大変な騒ぎだった」と当時の責任者は振り返る。一斉休憩をやめ交代で留守番をするのが主眼だったのに、職員から異論が百出。「事務室に残る当番に業務が集中する」「その後、1人で食堂に行って学生に話しかけられたら、休みにならない」などとすったもんだの末、時間だけ変えることにしたそうだ。

 

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 九州のある大学では、10年前に企業から転職してきた事務長が大ナタをふるい、交代で休憩を取るようになった。それまでの一斉休憩に異論を唱えた事務長に、職員全員が見せた驚きの表情が忘れられないという。「慣習に誰も疑問を抱かなかった。大学の常識は世間の非常識とは、よく言ったものです」

 

 読売新聞の「大学の実力」調査によると、一斉休憩をするのは職員1人当たりの学生数が多い、つまり人手が足りない大学とは限らない。いま、「面倒見の良さ」が大学選びのキーワードの一つになっている。気になる人は、昼時のキャンパスをのぞいてほしい。(専門委員 松本美奈)

(2015年4月27日 18:30)
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