第10回全国ユース環境活動発表大会
環境保全などに取り組む高校生を対象にした「第10回全国ユース環境活動発表大会」(環境省など主催、読売新聞社後援)の地方大会が2024年12月に行われた。各地方大会で「地方大会最優秀賞」、「高校生が選ぶ特別賞」を受賞し、2025年2月に開催される全国大会(東京)に出場予定の16校を紹介する。
北海道地方大会
北海道地方大会は13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には北海道岩見沢農業高が、「高校生が選ぶ特別賞」には、北海道真狩高が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
北海道岩見沢農業高校「自然エネルギー班」
厄介者の見方を変えて味方にする! ~雪ともみがらの循環利用による持続可能な農業経営の実現~
特別豪雪地帯に指定されている岩見沢市は、道内有数の稲作地帯。精米の過程で出る「もみがら」を活用し、豪雪地帯での周年栽培実現に取り組んだ。農家所得の向上や、冬場の道産野菜確保や新たな北海道ブランドの創出を目指している。
● 高校生が選ぶ特別賞
北海道真狩高校「有機農業コース」
北海道版リジェネラティブ農業実証試験 ~マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培~
2013年に設立された「有機農業コース」では、肥料高騰や環境汚染などの課題に着目し、持続可能な農業を取り組んできた。北海道でも実践できる有機農法として、不耕起でカバークロップを活用する「リジェネラティブ農業」に挑戦し、実証試験を行っている。
東北地方大会
東北地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には宮城県農業高等学校「Re:温故知新」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、青森県立名久井農業高校「FLORA HUNTERS AQUA」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
宮城県農業高校「Re:温故知新」
Re:温故知新
地元農家の「肥料が高くて買えない」という声を受け、肥料削減の研究に取り組んだ。窒素が少なくても収量や食味がほぼ変わらないことがわかり、肥料を削減する栽培方法を構築。通常の3分の1まで削減することに成功した。
● 高校生が選ぶ特別賞
青森県立名久井農業高校「FLORA HUNTERS AQUA」
厄介者を資源に ~緑化を支えるデュアルシステムの開発~
途上国の乾燥地を緑化するため、2つの汚染水を有効利用するシステムを開発。(1)肥料などの流出でできた富栄養化池沼は無焼成バーミキュライトで窒素分を回収し緑化植物の育苗に利用。(2)生活雑排水は石灰と土壌と土で作るフィルターで浄化して再利用した。
関東地方大会
関東地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には群馬県立吾妻中央高「環境工学研究部」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、山梨県立都留高「つる探 総合ゼミ」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
群馬県立吾妻中央高校「環境工学研究部」
救え!美野原土地改良区! ~10年の成果で農地環境保全・創造モデルへ~
「美野原(みのばら)土地改良区」から10年前に依頼を受け、水田地帯の水路管理データの作成に着手した。ドローンを活用し写真地図データを構築。2023年からは水路の機能診断や補修作業を進め、精密な水路管理データによる管理の効率化を図っている。
● 高校生が選ぶ特別賞
山梨県立都留高校「つる探 総合ゼミ」
私たちにできること ~POSTMAN PROJECT~
NPO法人JIYUと連携し、不用になったランドセルや文房具類、子供服などを回収している。フィリピン・セブ島の貧困地域に持参して、現地の子ども達と交流をしているほか、中学校への出前授業や企業へのプレゼンテーションを通じて活動を発信している。
中部地方大会
中部地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には愛知県立猿投農林高「作庭チームSAKUR☆」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、長野県下伊那農業高「チーム3A・3D」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
愛知県立猿投農林高校「作庭チームSAKUR☆」
造園の力で地方創生! ~地元資源と地場産業に活路を~
物価高と輸送コスト高騰で造園に使う石材の確保が難しくなりつつあるため、地元で「美濃焼」の原料として使用できず廃棄される石材に着目。石材の掘削跡地は土砂災害を起こすリスクもある。国土保全と産廃ゼロ、地場産業復活につながる取り組みだ。
● 高校生が選ぶ特別賞
長野県下伊那農業高校「チーム3A・3D」
下伊那に「カッキ」を! ~市田柿の持続可能生産をめざして~
地域を代表する特産品「市田柿」は、重量の約1割の果皮が産業廃棄物となることが課題。柿の皮を廃棄物ではなく、未利用資源ととらえて再利用することで、下伊那地域の活性化や新しいビジネスチャンスとしての可能性を広げようと取り組んでいる。
近畿地方大会
近畿地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には京都府立桂高「TAFS第2研究群 芝研究班」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、京都府立宮津天橋高「フィールド探究部」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
京都府立桂高校「TAFS第2研究群 芝研究班」
循環資源MAPの利用促進 ~安定した食糧生産と脱炭素社会を目指して~
枯渇の危機にある肥料要素リンの原料「リン鉱石」の代替資材として利用できるMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)に着目。焼却処分されているMAPをトマト栽培に活用した結果、化成肥料よりも収量や収益の増加が見込める作型を確立できた。
● 高校生が選ぶ特別賞
京都府立宮津天橋高校「フィールド探究部」
みんなの川塾 ~川を楽しみ、伝え、繋げる~
「地域で科学、地域を科学」をテーマに、地元・大手川での活動に取り組んでいる。2004年の台風被害による改修後、生態系が変化してしまったため、地域と協力しながら小学生対象の「みんなの川塾」を開催。川の楽しさを伝えている。
中国地方大会
中国地方大会には12校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には広島県立世羅高「農業経営科」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、岡山県のノートルダム清心学園 清心女子高「だるまがえるクラブ」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
広島県立世羅高校「農業経営科」
広島平和ミツバチプロジェクト
原爆で焼けた街を再び緑豊かな街にするための「供木運動」で木々の葉が茂るようになった広島市の平和大通。近年、木々の寿命や病気で倒木事故が起きている。景観保護のため、梨の受粉交配で飼育しているミツバチを使った都市養蜂に取り組んだ。
● 高校生が選ぶ特別賞
ノートルダム清心学園 清心女子高校「だるまがえるクラブ」
ナゴヤダルマガエル友だち募集中!仲間を増やすための活動
絶滅危惧種に選定されているナゴヤダルマガエルの研究と保護・啓発に取り組んでいる。2023年に、幼生から幼体まで飼育する里親活動に参加、24年は最適な飼育環境について研究した。幅広い世代に知ってもらうため、公民館での観察会も企画した。
四国地方大会
四国地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には徳島県立小松島西高「TOKUSHIMA雪花菜工房×藻藍部」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、愛媛県立長浜高「水族館部」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
徳島県立小松島西高校「TOKUSHIMA雪花菜工房×藻藍部」
藻場の再生で環境ビジネス!海洋GXと海洋DXでウミノ経済循環型社会を目指して
アイゴやブダイなどの食害魚により減少した藻場の再生を目指して活動している。未利用魚の商品開発を行い、利益の一部を藻場の再生のために寄付する仕組みを構築。藻場の調査には海洋DXを活用して効率化を図っている。
● 高校生が選ぶ特別賞
愛媛県立長浜高校「水族館部」
水族館部は救う、町も学校も!
学校がある長浜地域は人口減少が続いている。「水族館部」は、環境教育の場を地域に提供することを目指し、部員は1人1つの担当水槽を持つ。毎月第3土曜日には来館者との交流や、水槽の解説など、様々なイベントを開催している。
九州・沖縄地方大会
九州・沖縄地方大会には13校が審査に臨んだ。審査の結果、「地方大会最優秀賞」には宮崎県立都城商業高「紙漉き文化再生プロジェクト」が、「高校生が選ぶ特別賞」には、熊本県立熊本農業高「養豚プロジェクト」が、それぞれ選ばれた。
● 地方大会最優秀賞
宮崎県立都城商業高校「紙漉き文化再生プロジェクト」
ミライへつなぐ手漉き和紙文化
都城市の紙漉き文化再生プロジェクト。地域から伝統的な技術を学び、焼酎の絞りかすや地元の花などを使った新しい和紙を開発した。地域住民を対象にワークショップも行いうことで、持続可能な社会の実現を目指している。
● 高校生が選ぶ特別賞
熊本県立熊本農業高校「養豚プロジェクト」
「くまもとの赤」で地域を元気に! ~養豚ガールによる地方創生プロジェクト~
全国第10位の飼養頭数である豚のブランド化を目指し、「くまもとの赤ぶた」を開発。毛並みが赤いデュロック種という豚を活用し繁殖能力や産子数の改善、肉質調査を行って、新たなブランド豚「くまもとの赤ぶた」が完成した。