2030 SDGsチャレンジ

2020全国ユース環境活動発表大会 結果

栄冠に輝いたのは...

 高校生たちの「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する取り組みを表彰する、第5回全国ユース環境活動発表大会が2月8、9両日に東京都内で開かれ、広島県立世羅(せら)高校が最優秀賞「環境大臣賞」に輝いた。大会には、国内8地域で行われた地方大会の上位各2校(計16校)が参加。特別賞「読売新聞社賞」の北海道美幌(びほろ)高校をはじめ、計6校が入賞した。

 

コイの廃棄稚魚を魚醤に【環境大臣賞】

 広島県立世羅高が取り組んだのは、色鮮やかで優雅な姿から、「泳ぐ宝石」とも呼ばれるニシキゴイ。近年は欧米やアジアなど海外でも人気が高まり、輸出も伸びている。しかし、その陰では多くのニシキゴイが、稚魚の段階で「産業廃棄物」として焼却処分されているという。模様や発色が明らかに悪い魚は売り物にならないからだ。その数は1年間で396万匹、約8トンにも上る。

 

 広島県はコイとゆかりが深く、養殖業も盛ん。広島城は別名「鯉城(りじょう)」とも呼ばれ、プロ野球・広島もチームの愛称(カープ)にコイの英語名を使っている。世羅高の近くにも日本有数のコイの養魚場があり、稚魚の大量廃棄問題を知った生徒たちは、せめて何かにいかせないかと研究を始めた。

 

 まず探ったのは、「食用」に回す道だった。とはいえ、ニシキゴイをそのまま食べるとなると、抵抗を感じる人が多いことは容易に想像ができた。そこで思いついたのが、廃棄された稚魚を原料に、「魚醤(ぎょしょう)」を作るアイデア。魚醤は魚や塩を使って作る、しょうゆに似た発酵調味料で、この活用法ならニシキゴイの見た目の問題はクリアできる。生徒たちは、県内の老舗しょうゆメーカーに協力を仰ぎ、大学などの食品分析機関にもアドバイスをもらいながら、商品として売り出せるレベルの魚醤を完成させた。

 

 ただ、魚醤の原料に使えるのは、きれいな水で育てた、ごく一部の稚魚だけに限られるという課題も残った。廃棄される稚魚を余すことなく活用する方法として、現在は肥料の開発にも力を入れる。すでに、この肥料を使ったコメの栽培実験も行い、化学肥料と変わらない収穫が得られたという。ゆくゆくは、ニシキゴイが原料の肥料で育てた「鯉米」を商品化する夢を膨らませているそうだ。

 

 受賞後、グループの代表で1年の吉儀(よしぎ)智也さん(16)は「高校を卒業するまでに鯉米を完成させて、販売まで実現させたい」と抱負を語った。

 

外来ザリガニを駆除【読売新聞社賞】

 北海道美幌高校の取り組んだのは、海外から持ち込まれた「特定外来生物」の問題。国内の生態系に悪影響を及ぼしているこの問題は、全国各地で報告されている。北海道では、「ウチダザリガニ」というザリガニの仲間が大繁殖し、もともと日本にすんでいたニホンザリガニを絶滅の危機に追いやり、他の水生生物も食い荒らすなどの被害が広がっている。この問題の解決のために立ち上がったのが、美幌高校・環境改善班のメンバーたちだ。

 

 彼らは5年前から、ウチダザリガニの駆除を通じて、近隣の小川などにすむ在来生物の保護に取り組んでいる。昨年は、国土交通省・北海道開発局などの協力を得て、これまでにない規模で駆除を実施した。活動拠点とする網走川水系の川の一部をせき止めたり、別の河川の水系にも出向いたりして、計2219匹のウチダザリガニを駆除した。

 

 一方、他の地域の高校生と特定外来種問題に関する交流会を開くなどし、より多くの人たちに問題意識を共有してもらうための取り組みにも力を入れる。ウチダザリガニを使ったレシピの考案など、駆除後の有効活用についても知恵を絞っているという。

 

 2年の山本和馬さん(17)は授賞式を終え、「高評価をもらえてうれしい。ウチダザリガニの駆除を、もっともっと効果的なものにしていきたい」と話した。

 

その他の入賞者

■環境再生保全機構理事長賞

京都府立木津高 ソーシャルビジネス研究班

 地元特産の柿から抽出した「柿渋」で紙袋をコーティングし、強度を高めてレジ袋の代替品をつくる活動をしている。日本に古くから伝わる技術をプラスチックごみの削減に活用するだけでなく、地域おこしにもつながるアイデアが高く評価された。

 

■国連大学サステイナビリティ高等研究所長賞

青森県立名久井農業高 Treasure Hunters

 アフリカの乾燥した土地でも、食料が安定的に生産できるようにするアイデアを研究している。日本の農家などで土間を塗り固めるために使われていた技術を応用し、新しい集水技術を開発。貴重な雨水を効率よく農業に利用できるようにした。

 

■高校生選考賞

愛媛県立上浮穴高 カホンプロジェクトチーム

 地元の森林組合からもらった木材でペルーの民族打楽器「カホン」を製作し、イベントなどで紹介。音楽を通じて、人間の手で森林を管理、維持していくことの大切さを伝えている。発表大会でも、手作り楽器の演奏を披露し、会場の注目を集めた。

 

■先生選考賞

石川県立翠星高 食品科学研究会

 捨てられる地元産かんきつ類の果皮を使い、洋菓子やアロマオイルなどとして商品化する「廃棄果皮0システム」を作り上げた。全国の他のかんきつ類生産地にも、この取り組みを積極的に発信し、持続可能な資源活用を提案している点も評価された。

 

【全国大会出場校】

▽北海道標茶高校/地域環境系列 環境ゼミ キノコ班▽仙台高専名取キャンパス/仙台高専 香りの抽出グループ▽栃木県立栃木農業高校/農業環境部 環境活動班▽静岡理工科大学星陵高校/バイオメタン班▽鈴鹿高校/鈴鹿中学・高校SOM▽京都府立綾部高校/分析化学部▽山陽女子中学校・高校/地歴部▽香川県立多度津高校/建築科&写真部▽長崎県立諫早農業高校/食品科学部▽沖縄県立沖縄水産高校/シーメンズクラブ

 

【主催】全国ユース環境活動発表大会実行委員会(環境省/独立行政法人環境再生保全機構/国連大学サステイナビリティ高等研究所)

【後援】読売新聞東京本社

【協力】環境省地方環境パートナーシップオフィス(EPO)、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)、ESD活動支援センター


(2020年2月10日 10:42)
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