希少アユ 守る!(鹿児島・奄美市立住用小学校)
川を泳ぐリュウキュウアユを観察する児童ら
川で実地観察
「あそこだ」「いたいた」。鹿児島県奄美市にある役勝(やくがち)川の中流域で7月9日、市立住用(すみよう)小学校の児童たちが声を上げました。体長約10センチのリュウキュウアユが、胸びれ近くの金色の模様をきらきらと光に反射させながら泳いでいます。
この日の観察学習には、1年生から6年生までの児童17人が参加した。奄美大島自然保護協議会ヤジ分会の養殖技術者の男性から「深いところにいることが多いから、注意しながら見て」などと説明を受け、ゆっくりと頭から水の中に入りました。
水中めがねをうまく着けることが出来ない低学年の児童は、箱の底にガラスがはめ込まれた「箱めがね」を使って川の中をのぞき込みます。テナガエビやハゼなども見えました。毎年参加している6年の女の子は「今年のアユが一番多い」と喜びました
川での観察に先立ち、3年から6年の14人は同小で、養殖技術者の男性からリュウキュウアユの生態、河川工事や自然災害による増水などで個体数が減少している現状を学びました。男性は「ここにしか生息していない生き物は絶滅すると元に戻せない。今の環境を守ることが本当に大切です」と話しました。
豊富な野生生物
同小の近くには、国内第2の規模のマングローブ群生林や絶滅危惧種のアマミノクロウサギ、固有種のルリカケスなどが生息する森があります。リュウキュウアユが生息する役勝川や住用川も近くを流れます。
豊かな自然に囲まれた地域で、リュウキュウアユはかつては何万匹もいたが、1998年には、役勝川で1500匹程度にまで減ってしまいました。山(やま)美奈子校長によると、「このままでは絶滅してしまう」という危機感から、2006年に同小の保護活動が始まったそうです。
児童は総合的な学習の時間にアユについて学び、毎年夏には役勝川で観察し、アユの産卵時期にあたる11月の前には川の整地作業を行います。学校近くのアユの養殖場から譲ってもらったアユを水槽で飼い、世話もしています。
豊かな自然に囲まれた地域で、リュウキュウアユはかつては何万匹もいたが、1998年には、役勝川で1500匹程度にまで減ってしまいました。山(やま)美奈子校長によると、「このままでは絶滅してしまう」という危機感から、2006年に同小の保護活動が始まったそうです。
こうした活動が認められ、21年には、野生生物の保護に功績のあった団体や個人に贈られる功労者表彰で文部科学大臣賞を受賞しました。
学校で飼っているリュウキュウアユ |
郷土愛も育む
秋に予定する整地作業では、産卵しやすいよう川底の土を取り除いたり、砂利を耕したりします。児童のほか保護者や地域の人も参加して行われます。
山校長は「リュウキュウアユの地域での知名度は上がってきました。もっと多くの人に知ってもらうのが課題です」と話します。児童は、観察学習で学んだことを作文にまとめ、地元のラジオで一人ずつ発表するなど活動の場を広げています。
活動を通して、児童の関心も広がっています。7月下旬に沖縄県・西表島に「奄美こども環境調査隊」(奄美市教育委員会主催)として派遣された5年の女の子は「もっと自分たちの活動範囲を広げて、他の川でもアユが生息できるようにしたい」。山校長も「自分たちの活動がSDGsにつながっていると実感し、誇りと郷土愛を持ってほしい」と願っています。