[82]「スクールネーム」の効果
「ワークシートを配ります。初めに右上の のところに名前を書いてください。例えばこのように書きましょう」と言って、 田中ポチ と書いたのが始まりだった。何が受けたのか分からないが、4年生の児童は私のことを「田中ポチ」と呼ぶようになり、「ポチ先生」が誕生した。
「芸名」や「ペンネーム」などは昔からあるが、5月27日付読売新聞朝刊「ビジネスネーム 本名と使い分け」という記事で、ビジネス界でも本名とは違う名前を使っていることを知った。私の「田中ポチ」は、記事にならうなら「スクールネーム」ということになるのだろう。先生方の特徴をとらえたあだ名もその部類に入るのかもしれない。
「ポチ!」「ポーチ、ポチポチ」と私をからかうような口ぶりの児童もいたが、「田中ポチ」は担任をした児童たちに確実に受け継がれていった。
来年から管理職の副校長になるという担任最後の年、ある児童が「ポチ、って意味があるんですか?」と聞いてきた。「ポチは、『 後日、その児童の保護者が、「子どもが、ポチの意味を書いて勉強机の前に貼っています」と笑顔で教えてくれた。
そうかと思えば、別の日には、幹線道路の反対側から大きな声で「ポチ──、元気!」と呼ぶガングロの女子高生。横断歩道を渡って、飛びつかんばかりに私のところに駆け寄って来た時もあって、何となく恥ずかしいやらうれしいやら。スクールネーム効果も様々である。
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田中孝宏 読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー
1960年千葉県船橋市生まれ。元小学校長。「ブラタモリ」にならって「ぶらタナカ」を続けている。職場の仲間や友人を誘って東京近郊の歴史ある地域を歩く。「人々はなぜ、この場所に住むようになったのだろう」と考えると、興味は尽きない。