「もったいない」を世界に(東京都立五日市高校ESS国際交流部)
東京都西部のあきる野市。都心から離れた豊かな自然環境で学び、地域に根ざした活動をしながら、SDGsのメッセージを発信し続ける高校生たちがいる。(教育ネットワーク事務局 石橋大祐)
世界に目を向けて
4月27日の放課後、ゴミ袋とトングを手にした高校生たちが坂道を下っていく。
「頑張ってるね」
すれ違った自転車のお年寄りが、笑顔で声をかけた。東京都立五日市高校ESS国際交流部が、学校近くを流れる秋川で行っている清掃活動は地元でも評判だ。
「自然豊かな環境だからこそ、外の世界に目を向け、どんどん体験的に学んでほしい」
2018年に同部を始めた狙いについて、顧問の中村俊佑主任教諭が語った。6年目の今年、部員は約10人。清掃のほか、英語や中国語、韓国語を使った国際交流、地域活性化などの活動に取り組んでいる。
コロナ禍の21年には、メンバーがオンラインで台湾の姉妹校の生徒たちと英語で交流し、地域の紹介やSDGsの取り組みなどについて、意見を交換した。
今年3月まで部長として引っ張ってきた貫井麻妃さん(3年)は「海外との交流など、様々な活動を通じて視野が広がった。楽しんでやっているうちに成長できたと思う」と笑顔で話した。
オリジナルソング「MOTTAINAI」
「日本にもSDGsの取り組みがあることを世界に知ってもらうために、歌を通じて日本のもったいない精神を発信しよう」。21年には、ものを大事にする「もったいない」をコンセプトにした歌作りに乗り出した。大分県在住のシンガー・ソングライター山田証(あかし)さんの指導を受けながら歌詞を作り、約半年かけて、オリジナルソング「MOTTAINAI」を完成させた。
♪何がもったいないか考えてみよう 自分自身に問いかけてみよう――。
曲は、音楽配信サイトで配信されたほか、メンバーたちが地域の森の間伐材を使った太鼓で演奏し、その動画をユーチューブで公開。世界に発信した。メンバーで意見を出し合って、MOTTAINAIダンスも考案した。
この取り組みは、麗沢大学などが主催する「高校生プレゼンテーションコンテスト」で最優秀賞に輝いた。
活動は、多くの地域の人たちに支えられている。その一人、あきる野市で養蜂業に携わる羅久井(らくい)俊介さんはMOTTAINAIの作曲などをサポートしてくれた。羅久井さんは「今後も、同世代の子どももやってみたいと思う活動に取り組んでほしい」と期待を込める。
貫井さんと共同で部長を務めた松本優菜さん(3年)は「活動を通して、多くの方にお世話になり、交流する中で、コミュニケーション力が高まった」と充実感をにじませた。
もったいない(MOTTAINAI)
物を粗末に扱うことを惜しむ、日本文化を象徴する言葉。2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境副大臣ワンガリ・マータイさんの運動で世界的に有名になった。
「無駄無くす」小学生に伝えたい
メンバーは7月、小学生などが集まるイベントで、アクセサリーづくりを楽しみながら、「もったいない」の考えも学んでもらおうと準備を進めている。
6月19日の放課後。練習のため、隣の檜原村で、不用品から新たな商品を生み出す「アップサイクル」を活用したアクセサリーを手がける高木美穂さんを招き、ペットボトルを利用したブレスレットの作り方の指導を受けた。ペットボトルを小さく切ってトースターで加熱。筒状のビーズにして糸でつなげ、ブレスレットを完成させた。
うまく筒状にならなかった小片の使い道をどうするか。メンバーの一人が「額縁の角に付けて、おしゃれに飾ったら?」と提案すると、高木さんは「いいね。やっぱり発想が柔らかい!」と笑顔でうなずいた。常に「もったいない」を意識して、使えるものは無駄にしないように工夫する。
今後も、地域の様々な大人と関わりながら、子どもへの指導や、地域イベントでの「MOTTAINAI」の演奏など、SDGsの実現に向け、地道に取り組む考えだ。4月に部長に就任した中島凜さん(2年)は地元・あきる野市の出身。「部活を通して、地域の良いところに気付くことができた。これからも魅力をどんどん発信していきたい」と意気込む。
あきる野の豊かな自然の中で学ぶ高校生たち。今後も、活発にSDGsのメッセージを発信していく。