SDGsトーク1(下)リーダーとなる子どもたちを

田中孝宏・読売新聞教育ネットワーク・アドバイザー

 連載「SDGsリレートーク」では引き続き、読売新聞教育ネットワーク事務局アドバイザーで2020年3月までは東京都江戸川区で現役の小学校長だった田中孝宏さんのお話です。三回目は、SDGsを教える若い先生に向けてメッセージをいただきました。

(聞き手 吉池亮・教育ネットワーク事務局長)


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──SDGsを広めるためにも、教育現場での取り組みについて若い先生方へのアドバイスを。

 

田中 とにかく「目的を考える」というプロセス、手順のようなものをもっと大事にしてほしいと思います。ものを教えるということは、非常に大切な仕事であることは言うまでもありません。ただ、漫然と教えるのではなく、教える上での狙いのようなものを常に意識してほしいですね。たとえばですが、ひらがなの「あ」を教えるのも、字そのものを教えるというだけではなく、それがどういうことへとつながるのか。

 

 そして究極的に、その子をどのように育てていってあげたいのかということを、常に考える意識を持っていてほしいですね。SDGsの問題もそうですが、そうした考え方をに身につけさせることが、これからは非常に重要になってくると思います。

 

──SDGsを学ぶことで意識も高まるという考え方ですね。

 

田中 SDGsというのは、学校で教える知識や技能、それらを子どもたちが社会に還元することができるようになるための「接着剤」となるためのツールなんだと思います。知識や技能はバラバラであっては機能することはできません。それぞれが有機的に結びついてはじめて、知識や技能が世の中の役に立つようになるんだと思います。

 

──リーダーとなるような子どもたちを育ててほしいですね。

 

田中 うちの学校では、SDGsの取り組みとして植物の栽培などのために「雨水タンク」を導入したんですが、最初は先生方もピンとこなかったのか、なかなか利用が定着しない。だから子どもたちにも定着しなかった。先生方がちゃんと子どもたちに説明ができないと、なかなか子どもたちの間にも定着しないですよね。

 

 だから、先生方への説明からまずはじめ、それを子どもたちにも実践していってもらう。なんでこういうことをしなければならないのか。ちゃんと教えてあげることは非常に重要です。そうなると、子どもたちは理解し、そして行動できるようになります。それを習慣化することが重要なんです。

 

 おもしろいもので、全部の子どもたちが理解しなくても大丈夫なんです。次第に理解した子どもたちが、仲間にいろいろと説明するようになるんです。子どもたちが教え合っている。そうやって意識の高い子どもたちがリーダー役になっていくんですね。そうしたこともSDGsの取り組みではとても大切な部分だと思います。やはりSDGsの取り組みを学ぶというのは、プロジェクト型学習として可能性があるだけでなく、社会性を身につけるということにも非常に役立つと思うんですよね。

 

──これもまさに「じぶんごと」、そして「気づき」ですね。

 

田中 とにかく習慣化されると忘れなくなる。SDGsを単にやらされているのではなく、その子たちが自ら考え、実践しないと定着しない。でも、こうしたことが習慣づけられるようになってくると、他の場面でもSDGs的な課題を理解できるようになると思うんです。今までのように教えられることだけやっていればいいということではなく、能動的に考え、行動ができるようになることが大切。いつまでも受け身の子どもたちを育てていてはいけないと思います。SDGsはそういう意味では、非常にいい教育のための素材だと思います。

 

──最後に、SDGsの取り組みをもう一度おさらいしてください。

 

田中 SDGsって難しいと考えている人は多いでしょう。確かに、17の目標だけを見せられただけでは子どもどころか大人たちだって全部わかるという人は少ないと思います。でも、それではなかなか浸透しかないでしょう。そのためにも、まずは自治体、そして国がもっと積極的にSDGsが掲げる目標の実現に向けて動き出すというわかりやすいメッセージを出してほしいですね。民間企業の方が、世界情勢に敏感だからか積極的に取り組む姿勢がみられるような気がします。だから、もっと強力に実現するということを国がリーダーシップを発揮して示してもらいたいですね。

 

 教育現場でも、やはり17の目標などの細かい話になってしまうと、子どもたちに実践させるのも難しいし、すべて教え込むのも無理があるでしょう。ちゃんと、目標を分類して、まずは子どもたちでも実践できることは何か、そういう明確なゴールを示してあげることによって教育現場でも、理解しやすくなると思います。

 

 「じぶんごと」からはじめよう、というメッセージは、非常にわかりやすいと思います。その目標に向かって皆で動き出すこと。まずはそこから始めたいですね。


(2020年6月15日 09:00)
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