2030 SDGsチャレンジ

じぶんごとからはじめよう

「The Valuable 500」広めよう(中)~難問は「無関心」

右下から時計回りに、ケイシーさん、池田さん、樺沢さん、大内さん

 

 誰もが参加できる「インクルーシブ社会」を目指して障害者の社会進出を後押しする「The Valuable 500」(以下、V500)運動。提唱者したアイルランドの社会起業家キャロライン・ケイシーさんと、V500の日本での旗振り役を務める日本財団常務理事の樺沢一朗さん、参加企業の一つソフトバンクCSR本部長の池田昌人さんの3人によるオンライン会議では、今後の課題などについて話し合いました。

 

コーディネーター:大内佐紀(読売新聞調査研究本部主任研究員)

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社会課題の解決そのものが革新

大内 SDGsの基本は「誰一人取り残さない」ことです。人間らしい仕事ができる社会に向け、課題をどのように克服していけばいいか。

 

樺沢 私たちは助成財団として、非営利団体の活動に資金を助成しています。ただ、非営利セクションで行うには限界があり、助成金が切れるとそこで終わってしまう。V500運動や、ソフトバンクのような収益を生む仕組みの中で障害者の居場所をつくるのは、まさにSDGsを持続可能な形で行っていくために必須なのです。

 

池田 社会課題の解決そのものが革新であると捉えています。我々は、例えば「足の悪い方がいるから、車いすでの移動が必要だ」ではなく、移動の概念を大きく変えていこうと考えます。そうすると、全然違う発想が生まれてきます。

 

ケイシー 最も重要な言葉は「インテグレーション(統合)」です。財源には限りがあり、政府、企業、財団などが一緒になって、協調・協働して解決策を見いださなければならない。デジタルのアクセス性も考えなくてはいけない。通信、コミュニケーションの自由を考えたとき、デジタル格差を解消しなければならない。製品やサービスを設計する際、ユニバーサルデザインでつくれば、単なる技術にとどまらず、全ての人のためにデザインすることにつながります。

 

池田昌人さん キャロライン・ケイシーさん 樺沢一朗さん

 

最大の難問は無関心

大内 インクルーシブ社会のあり方や、今後の課題などについておたずねしたい。

 

ケイシー 最大の難問は「無関心」です。問題から顔を背けるのではなく、意思を持つことが最大のチャンスなのです。若い世代にとっても、デジタルの世界にきちんとアクセスできれば、何かが実現できる可能性があるはずです。

 

樺沢 東京パラリンピックが延期されたが、ロンドン大会で、パラリンピックが世界に発信されたことにより、イギリス自体が変わることができました。日本は障害者に関する分野で、世界で最も進んだところにいないといけません。日本を世界にアピールする場として、パラリンピックを活用していきたいですね。

 

池田 コロナ禍は、我々の働き方を根底から変える大きなタイミングです。インクルーシブな世界の原動力になるよう、新しい働き方を推進していきたいですね。

 

一緒に仕事 みんなで解決

大内 この「コロナ禍」で企業は経済性も考えて障害者を雇用しなくてはならなくなったとの問題提起がありましたが、その影響について教えてください。

 

池田 テレワークが一般的になりましたが、もともと「ショートタイムテレワーク」という実証実験を横浜市と実際に雇用しながら進めていました。これは出産などを経験して、自宅から離れた会社に出勤できない人が社会参画する枠組みです。我々もペーパーレスなど準備はしていたのですが、実際には定期券も支給され、みんなが一斉に出勤して朝 から仕事をするのが基本スタイルでした。このコロナ禍をきっかけに、もともと持っていたこの資産が日常の業務でも広がり、当初は80%以上が在宅勤務を行い、9月現在も約 70%が在宅勤務を続けています。

 

大内 日本財団の樺沢さんは、いかがですか。

 

樺沢 障害者の就労を考えるとき、大きく分けると2種類あります。まずは移動の補助やある程度のものを整備すれば完全に健常者と同じ能力を発揮できる人です。もう一つは、法定雇用率を満たすために雇用せざるを得ない人です。これまで在宅勤務ができれば、障害者は働きやすくなると言われていました。財団では、聴覚や視覚、身体的、精神的 に障害を持つメンバーで仮想グループを作り、コロナ後の国際的な障害者事業をどう進めるか検討しています。その中で、在宅勤務はいいと言われていましたが、実際には難しい面があることが分かりました。視覚と聴覚障害者には、手話通訳や字幕などのオンライン会議の情報補償対応をする必要があります。果たして、合理的配慮をどこまですればいいのかという難しい課題が見えてきました。ただ一緒に仕事をしているので、どういった形で合理的配慮につなげるのかを全員で話せる状況なので、一緒に仕事をしてみて、みんなで解決するという流れになりつつあります。

The Valuable 500 とは

 「インクルーシブなビジネスはインクルーシブな社会を創る」との考えのもと、キャロライン・ケイシーさんが2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で提唱し、世界的な運動としてスタートした。国連のSDGs(持続可能な開発目標)のうち目標8「働きがいも経済成長も」とも深い関連がある。障害者の持つ潜在的な価値を、社会やビジネスにおいて発揮できるように、ビジネスリーダーが自社の事業を改革することを目的としている。目標は、世界で500社の最高経営責任者(CEO)の賛同を得ることだ。

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読売新聞東京本社も参加

 2020年1月のダボス会議では、V500に24か国241社が参加していることが報告された。日本では、9月24日現在、読売新聞東京本社を含め、計24社が参加している。

 日本財団によると9月24日現在、日本から参加している企業(50音順)は、アーバンリサーチ/あいおいニッセイ同和損害保険/NEC/花王/KNT-CTホールディングス/京王プラザホテル/塩野義製薬/昭和電工/住友生命保険/西武グループ/セガサミーホールディングス/全日本空輸/ソニー/ソフトバンク/大日本印刷/大和ハウス工業/電通/TOTO/日本航空/日本電信電話/丸井グループ/三井化学/三菱ケミカル/読売新聞東京本社──となっている。

 

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(2020年10月 1日 12:10)
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