2030 SDGsチャレンジ

くらしにSDGs

コウノトリに優しい農業(JAグループ)~読売SDGs新聞から

SDGs@スクール チャレンジ校に配布している読売SDGs新聞2022年7月号から一部の記事を紹介します。チャレンジ校のお申し込みはこちらから。


 

 豊かな自然を守っていくのがSDGsの目標の一つ。環境にやさしい持続可能な農業がいま、各地で進められています。

JA

 農家と、地域に住む人々が助け合うため、「組合員」となって作った「農業協同組合」という組織。英語表記のJapan Aguricultural Cooperativesの最初の二つの頭文字を取ったもの。農畜産物の生産や販売に関する事業だけでなく、生活に関わる幅広い事業を行い、農業とくらし、地域に身近な存在です。

 

環境に配慮した農業

 兵庫県豊岡市の農家、瀬尾雅仁さんは夏から秋にかけて、特産品の「たじまピーマン」の収穫に追われます。農薬をできるだけ使わずに栽培しているため、苗木を100本植えれば、2本ほど虫に食べられたり、枯れたりしてしまいます。瀬尾さんは「それでもいい。自然環境を守る農業を続けていきたい」と意気盛んです。

 

 地元のJAたじまでは、環境にやさしい方法で育てた野菜や豆類などを独自のブランド「コウノトリの贈り物」に認定しています。瀬尾さんのピーマンも認定を受けて出荷され、安全で安心な農産物として喜ばれています。
 どうして、コウノトリの贈り物なのでしょう? 

 

 国内の野生のコウノトリは1971年に絶滅しました。豊岡市が最後の生息地でした。原因の一つは、害虫や雑草をなくすためにまいた農薬でした。水辺からドジョウやミミズなど、餌になる生きものがいなくなってしまったのです。

 羽を広げると2メートルにもなるコウノトリ。あの雄姿を再び見たい――。地元で繁殖の取り組みが進められ、2005年、育てたコウノトリ5羽が野山に放たれました。農家も協力し、米作りに化学肥料を使用せず、農薬も減らすか使わないようにしました。冬の間も田んぼに水を張り、さまざまな生きものがすめるようにしました。コウノトリが人々の意識と環境を変えたのです。

 

 大空を舞うコウノトリはいま約250羽を数え、生息地は、豊岡市をはじめ各地の里山に広がりつつあります。

 

 瀬尾さんもたじまピーマンの栽培だけでなく、環境に配慮した農法を守りながら、約10ヘクタールの田んぼを耕しています。瀬尾さんたちが作った米は地元JAを通して「コウノトリ育むお米」という名前で出荷されています。安全で安心な農産物として人気を集め、海外にも輸出されています。

 

ドローンを活用

 渡り鳥の飛来地・伊豆沼で知られる宮城県も自然を大切にした独自の「環境保全米」作りに力を入れています。土地に悪い影響を与えないようにして、稲そのものが持つ生命力を生かす農業です。化学肥料ではなく、牛や豚のふんなどの有機物でできた肥料を使います。

 

 伊豆沼一帯を管内とするJAみやぎ登米の組合員、千葉翔太さんは、AI(人工知能)を活用したスマート農業を始めました。ドローンを使い、農薬をねらった場所にまくことで量を少なくしたり、ドローンが撮影した画像から稲の病気を診断したりします。

 スマート農業は環境にやさしいだけではありません。千葉さんは「機械の操作を覚えれば、だれでも同じように作業ができます」と話し、高齢化が進んで後継者が少なくなるなか、多くの人に農業に関わってほしいと呼びかけています。

 

SDGsのゴールにむけたJAグループの取り組み

体の不自由な人も働きやすく

 行政機関と協力して、体の不自由な人が一年を通じて活躍できる職場づくりに取り組んでいます。また、農家の人手不足を解消するため、コロナ禍で仕事が減っていた旅行会社の社員などを農業の現場で受け入れました。

 

子ども食堂に無償提供

 新型コロナウイルスの感染拡大で仕事を失う親が増え、子ども食堂の役割が高まっていることを受けて、子ども食堂に農産物を無償で提供するJAも多くあります。地域の子どもたちの居場所づくりに加え、旬の農産物を味わうことで食と農に関心を持ってもらいたいと考えています。

 

(2022年8月22日 11:08)
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