「よみうりNIE交流会」オンラインでスタート

オンライン会議の画面を見つめる田中アドバイザーら(6月27日、読売新聞東京本社会議室で)

 小中高の先生らが新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)を学び合う勉強会「よみうりNIE交流会」が6月27日に開かれました。2008年から100回を超えて開催してきた土曜サロンをさらに発展させた「よみうりNIE交流会」は、今年度から、田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーがコーディネーター役。新型コロナウイルスの感染防止を第一に考え、記念すべき第1回目の交流会はオンラインでの開催となりました。そのハイライトをお届けします。

■参加者

A...小学校教諭(神奈川県) B...司書(千葉県) C...中学校教諭(東京都) D...学校司書(栃木県) E...中学校教諭(千葉県) F...小学校教諭(東京都) G...学校司書(東京都) H...小学校教諭(東京都) I...小学校教諭(東京都) ...読売新聞教育ネットワーク事務局

司会:田中孝宏(教育ネットワーク・アドバイザー)

 

コロナ後の学校

──自己紹介を兼ねてみなさんの現状を教えてください。

 

A 先週からようやく全員登校になり、給食も始まりました。これまでの休校を取り戻すため、8月にも授業があり、夏休みは12日間しかありません。

 

B 6月から分散登校、一斉登校と少しずつ進んできています。4月から本格的に始まった新しい学習指導要領の中に「新聞活用」という言葉が入ってきていますから、お知恵をいただきたくて参加しました。

 

C うちも29日から通常登校になります。休校中、新聞を使った課題を出しました。その一つは「最近の新聞の中から、ほっこりしたニュースを選んでみよう」というものでした。

 

D 学校図書館の椅子を減らして15人分しかないので、授業ができないのが悩みです。今は返却と貸し出しのみに限られています。

 

E 1、2年の国語を教えています。授業が再開したのは2週間前から。1クラスあたり14人から20人程度なので分散登校もなく、6月から通常授業をしています。地方都市なので子どもたちはコロナの影響について実感が薄く、これから新聞を活用して、自分が住んでいるところだけでなく、日本全体、世界全体にも目を向かせたいと思っています。

 

F 6月1日から分散登校、15日から通常登校となり、先週から6時間授業も始まりました。子どもたちは暑くて大変で、私もマスクであせもができました。今年は委員会活動でNIEをやりたいと思っています。

 

G こちらも通常授業は15日でした。図書館は、ソーシャルディスタンスを考え、椅子を半分に減らしています。それでも休み時間は「超過密」になってしまうので、なかなか大変。毎日消毒にも追われています。

 

H まだクラスの半分ずつ授業をしている状況ですが、子どもたちはやっと落ち着いて勉強し始めました。今週、読売新聞のワークシート通信(>>関連ページ)を宿題で出しました。子どもたちには2回、ワークシート通信をやってもらっていて、感想も書いて提出させています。少しずつ積み重ねていこうと思っています。

 

I 5年の担任で学年主任もしています。29日から一斉登校が始まるので、少しずつ新聞を活用していきたいと思っています。ちょうど国語で「要旨をとらえる」という学習をしているので、これからは文章を読む練習をしていきたいと思っています。

 

新聞のファンを増やそう

──教育現場での新聞活用では、いろいろな取り組みがあるかと思います。早速ですが、みなさんの近況報告の中で「コロナ以外の『ほっこり』ニュース」という話がありましたね。

 

C 新型コロナウイルスの感染拡大で休校になっていた間は、新聞のニュースはコロナ一辺倒でした。どこを見てもコロナ関連。そんな中でも、いいニュース、新聞だけじゃなくてテレビやインターネットでもいいので、何かいいニュースがあったら見つけて、今度登校日に持っておいでよ、と呼びかけていました。ピコ太郎をプロデュースした古坂大魔王さんの「手洗いソング」を例に出したら、みんながいろいろとほっこりするニュースを選んできてくれました。

 次の週の課題として、紙に書いたコロナ関連の言葉を、聞いたら塗りつぶしていく「ビンゴ」を出しました。出てきた言葉を一つひとつ登校日に解説する中で、暗いニュースばかりでなく、みんなで支え合っていくのが大事という話になりました。休校中でも新聞を活用した取り組みを行っていました。

 

──他のみなさんの中でも、「ほっこり」と思えるようなニュースはありましたか。私はコロナ感染拡大の影響で、妖怪アマビエが注目されているというニュースがいいなあ、と思いました。子どもたちがどう受け止めたのか、気になりますね。

 

E ニュースではないですが、授業を再開して生徒から「僕、国語が好きになりそうです」って言われて。新しい学校に行くと、生徒も不安ですが先生も不安です。生徒の言葉を聞いて、私も新しい学校でやる気が出たなと思って。子どもたちからほっこりさせられました。

 

H 私も新しい学校に異動しましたが、新聞を読んでいる子はほとんどいなくて。でも、私が教室で新聞を広げて読んでいると、まわりに子どもが集まってくる。そこで、「あっ、これニュースで見たことがある」と言っているのを聞くと、ちょっとうれしくなってきますね。

 

I 私は教室の壁にさりげなく新聞を貼っていて、興味のある子は休み時間に見てくれています。そんな風にきっかけづくりから始めたいな、と思っています。

 

B 私の市では、新聞を購読しているという学校が増えてきました。学校から市にお願いをしてきているので、広がってきたなと思っています。

 

C ほっこりしたと言えば、いつもなかなか登校できない子どもたちが分散登校で、短時間とはいえ登校できるようになったのは、ほっこりしたニュースですね。午前中だけなら授業に出られるとか、午後だけなら大丈夫とか。分散登校をやったことにも意味はあったのではないかと思いました。

 

──Eさんの学校みたいに1学級20人ぐらいがいいですよね。人数が少ないということで成果が出ているかもしれませんね。

 

I 私の学校は800人いる大きい学校です。分散登校だとそれが400人になりました。来週から800人体制に戻るので、教室に机を置いてみたら隙間がなくなり、「こんなに狭いところでやっていたんだ」と改めて思いました。

 

朝学習にワークシート通信

──では、話題を変えて「コロナ後」の展望についてうかがいたいと思います。どのようにして新聞を活用していきたいか、みなさんのお考えを聞かせてください。

 

F 1学期の授業は8月7日まであるので、新聞活用は宿題や朝学習が中心になりますね。来週ぐらいから朝学習の時間にワークシート通信を活用したり、私の方で提示した記事の中で好きなものを選ばせて「思ったことを書こうね」という課題を出したり、そういうことを考えています。

 

C 3月に休校になってからの新聞はすべて教室に残してあります。これを活用して、コロナウイルスが発生してから今まで、どんなふうに世の中が変わっていったのだろうかということを子どもたちに考えていってもらえればと思います。何かひとつテーマを決めて、飲食店はどんな風に変わったのか、学校は、図書館は、スポーツは、スポーツ施設は、といった具合に子どもたちに考えていってもらえればと思います。

 

──それは、すごくいいアイデア。ぜひやってほしい内容ですね。さて、最後に休校中の間、宿題としてプリント、あるいはワークシート通信を活用していたというケースもあったと思います。ワークシート通信について、いろいろな意見をうかがいたいのですが。

 

F ワークシート通信はいつも見ています。例えば記事中にある「バリアフリー」という言葉を検索して調べることができるような仕組みがあるといいと思いますね。

 

E 教科ごとに、もっと素早く検索ができたらいいなと思いました。

 

 実は過去1年間のワークシート通信はいつでもウェブサイトからダウンロードできるようになっています。キーワードでも検索できますし、教科別、さらに「★」の数で難易度を示し、小学校低学年向け、中学年向け、高学年向け、中学・高校向けなどと校種・学年別に分類しています。ただご指摘を受けて、もうちょっと使い勝手をよくしたいと思います。

 

E 毎週、ほかの先生方に紹介しているので、ぜひお願いします。

 

──今後に向けて、ほかにご意見などがありましたらどうぞ。

 

E 先日、来年度から使い始める教科書を見に行きました。各教科書会社の国語を読み比べていたら、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」が新学習指導要領に入ってきた影響で、それを全面的に出している教科書もありました。中学校国語では、新聞の分野も増えており、ますます新聞を読む必要があるというようになるのではないかと思います。また、ワークシート通信でもSDGsを解説する冊子のようなものがあるとうれしいですね。

 

──SDGsについては、私がアドバイザーに就任してから力を入れ始めています。ウェブサイトの「2030SDGsチャレンジ」ページでは、学校や教育関係者との対談を通じて、教育におけるSDGsの取り組みを考える「SDGsトーク」も始めています(>>関連ページ)。そちらもぜひ、ご覧いただきたいですね。

 

 みなさん、ありがとうございました。次回は9月を予定しています。よろしくお願いいたします。

 


よみうりNIE交流会は、今後もオンラインを取り入れた形で開催します。次回は9月26日(土)を予定しています。詳細は8月半ば頃にお知らせいたします。

 

(2020年7月 9日 15:50)
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