第2回「よみうりNIE交流会」オンラインで開催

 小中高校の教員と学校司書らが新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)の手法を学び合う第2回「よみうりNIE交流会」が9月26日、オンラインで開かれた。新型コロナウイルスへの感染対策として、前回に続き、会場に参加者が集まる開催方式を見送ったが、北海道や佐賀、石川県の教員ら約20人がウェブ会議システムを通して参加した。東北福祉大学非常勤講師でNIE教育コンサルタントの渡辺裕子さんの講演の後、高校教諭2人が実践を発表。田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザーのコーディネートのもと、教育現場で新聞を活用していく方策について意見を交わした。

 

講演「ことばの貯金箱」

▽渡辺裕子さん


 2011年の東日本大震災後、新聞の見出しや広告から気に入った言葉を切り抜いて貯(た)め、台紙に貼ってまとめる「ことばの貯金箱」を発案した。仮設住宅から始まった取り組みで、「言葉は人を傷つけるのではなく、人を幸せにするためにある」「言葉の億万長者になろう」をキャッチフレーズに掲げている。

 大学で教職を目指す学生に教えたり、地域に子どもと大人を集めてワークショップ(体験教室)を行ったりしてきた。新聞と台紙、はさみ、のりなどがあれば気軽に取り組めるので、教壇に立ったばかりの教え子たちも、小中学校で実践してくれている。

 切り抜いた言葉をまとめ、思ったことを書き添える作業は、自分自身の思いと向き合う時間でもある。読む、聞く、話す、書くの言語活動にもつながる。

 不登校の子を対象にしたり、少年院でも行ったりしてきた。まわりの人々に不信感を持っていた子が少しずつ心を開いていき、事件を起こした少年たちが母親へ「産んでくれてありがとう」と感謝の言葉を口にするようになった。

 動画投稿サイト「Youtube」にも、小学校の実践の様子が紹介されているので、ぜひ取り入れてみてほしい。

 

実践発表

▽大塚功祐・千葉県立国府台高校教諭(社会科)


 主権者教育で新聞を活用している。選挙管理委員会から投票箱を借り、模擬投票をして主権者教育としている学校もあるが、それだけでは足りないのではないか。日々、社会の課題を議論し、多様な意見を理解する中で社会を見る目、自分の考えを養うことが大切だと考えている。

 新聞を活用する上で大切にしているのは、時事問題の鮮度だ。鮮度がおちると生徒たちのモチベーション(意欲)も下がってしまう。先日、安倍前首相が辞任を表明した時も、翌朝の全国紙5紙のコピーを配り、班ごとに議論させた。安倍内閣で知っていること、イメージするものを各班3つずつあげさせると、自然と話が盛り上がっていた。議論が止まっている班には、記事中で安倍内閣を肯定的に書いている部分と、否定的に書いている部分を色分けするようサポートした。最後に安倍内閣の7年8か月を総括したキャッチフレーズをつけるよう指示すると、「外交上手の安部政権」「難しい課題にトライし続けた内閣」「お金もマスクもくれる内閣」「何事にも積極的だが都合が悪いと消極的」など、様々な発表があった。

 生徒たちからは「新聞によって考え方の違いがあることがわかった」「私の考えが正しいと思っていたが、友だちや新聞から違う見方もあると知ることができた」などの感想が聞かれた。

 

▽木南景子・神奈川県立高浜高校教諭(国語科)


 定時制は全校で80人ほど。1クラス約10人で生徒と教員の距離が近いのが特徴だ。

 「ワード ストック フロム ニュース」と称して、新聞から興味のある言葉を切り抜き、ワークシートに貼る実践に取り組んでいる。世の中のニュースに興味を持ってもらうだけでなく、語彙(い)も増やしてほしいと思っている。

 定時制は夕方から授業が始まるので、先日の安倍前首相の辞任の時にはネットニュースで速報を調べるだけでなく、記者会見をリアルタイムで視聴した。そこで終わりにするのではなく、翌朝の新聞も読むように指示し、短文のネットの速報と、長い文章でニュースを掘り下げた新聞記事との違いに気づくよう促した。

 生徒たちには生活圏の中だけでなく、新聞を通して、もっと関心を世界に広げてほしいと思っている。

 

NIEねたのかけら

▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー


 バラバラにした記事を並べる「ジグソー記事」という学習法を紹介したい。手順は

 (1)記事を選ぶ。

 (2)形式段落で切る。

 (3)切った記事を読みながら、元の順番になるように並べる。

 パズル感覚で取り組みながら、文章の構成力が身につく。ぜひ試してほしい。

 

■第3回のNIE交流会は10月24日(土)

 次回の交流会は、10月24日(土)午後2時から開催します。東京会場(読売新聞東京本社)にお集まりいただく方と、ウェブ会議システム(マイクロソフト「Teams」)で参加する方をつなぐ形で行います。運動部記者によるミニ講演「スポーツ面取材の舞台裏」や札幌の小学校教諭による実践発表、実践紹介「ホンモノの壁新聞をつくろう」、ワークシートアイデア紹介などを予定しています。

 

詳細、お申し込みは>>こちらから

(2020年10月 7日 12:00)
TOP