第4回「よみうりNIE交流会」オンラインで開催

 小中高校の教員と学校司書らが新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)について学び合う第4回「よみうりNIE交流会」が1月23日、オンラインで開催され、21人がウェブ会議システムで参加した。今回から、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」をテーマに、授業で新聞を活用していく方法を研究していくことになった。

 

※SDGs=エスディージーズと読み、Sustainable Development Goalsという英語の頭文字からとった略称。「持続可能な開発目標」と訳されている。2015年の国連総会で採択され、貧困や飢餓、教育、男女の平等、働きがい、生産消費、生態系の保全など17項目の目標を掲げている。

 

講演「広告の舞台裏~なぜこの広告を出したんですか?」

▽鎌田麻衣子・教育ネットワーク事務局広告担当


 出版、演劇・映画などのエンタメ業界などを担当し、30年近く広告局で働いてきた。

 

 記事には、報道機関から見た事実を正確に伝え、世に問うという目的がある。一方、企業(広告主)からの提起・提案によって、課題を解決するのが広告の目的だ。業界ではよくソリューションという言葉を使う。これを教育現場に応用すると、身近な課題を探して、それを解決するための広告を作ってみる、という授業ができるかもしれない。

 

 例えば「ゴミの不法投棄(ポイ捨て)をやめさせたい!」という課題があった時、「不法投棄禁止」などの看板を設置することはすぐに思いつく。しかし、そんなに簡単にはなくならないから、みんなが困っているのだろう。実はこれはあるコピーライターが学校で授業をした時に出した課題で、学生から出たのが「暴力団所有地」という看板を立てるアイデア。実際にはそんなことはできないだろうが、そうした発想が広告的アプローチといえる。

 

 日本新聞協会広告委員会が若手クリエーターから作品を募る「新聞広告クリエーティブコンテスト」がある。「しあわせ」をテーマに実施した2013年度の最優秀賞は「めでたし、めでたし?」という作品だった。「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」という子どものような字で書いたコピーに、涙を流す小鬼のイラストが添えられた広告を見たことがある先生方もいるかもしれない。この広告を題材に、岡山県の中学校の先生が授業を組み立てた、ということが以前報道されていた。コピーライターへの当初の依頼は、授業で使いたいので絵本を作ってほしい、というものだった。しかし、見た人に正解のない問題を考えてもらうのが本来の広告の意図だとして、逆に対話型の授業を作るよう提案した。その結果、桃太郎の現在、過去、未来を題材に、チームで議論し合うワークショップ型の授業(50分×3コマ)ができ上がった。「鬼に農業を教えれば村を荒らしにこないので、農具を鬼が島にもっていく」などのアイデアが生徒から出たという。参考になるのではないかと思い、紹介させていただいた。

 

実践発表

▽桑本優紀・江戸川区立南篠崎小教諭(東京)


 昨年7月から4年生の総合的な学習の時間でSDGsに取り組んでいる。SDGsなど聞いたことがない児童がほとんどで、まずは知ることから始めた。JICA(国際協力機構)が出している冊子などを教材に、「17の問題とゴールを知ろう」と目標を立て、毎時間1ゴールずつ、各自がA4版の新聞にまとめている。現在、16ゴールまで作ったところだ。新聞には必ず自分の意見を書くようにしている。

 SDGsに取り組むことで、国内外の問題を「自分ごと」としてとらえられるようになった。給食の時は「食缶を空にして残飯をなくそう」と言う子がいたり、菅内閣の顔ぶれを紹介する新聞記事を見て「男ばかりだなあ」とつぶやく子がいたり、授業内容や日常生活などあらゆる事象に対してSDGs的な視点を持つようになってきた。

 今後はあらゆる教科でSDGsを取り入れ、問題解決的な探究活動につなげたいと考えている。

 

▽松井初美・香取市立新島中学校教諭(千葉)


 毎年、全国紙5紙の元日の一面コラムを読み比べる実践を国語の授業で行っている。

(1)5紙のコラムを一枚の紙にコピーして、ワークシートにする。

(2)コラムを読み、気になったり、印象に残ったりしたところに線を引く。

(3)各コラムの見出しを考える。

(4)一番良かったと思ったものを選び、その理由も書く。

(5)みんなの挙手で、クラスの「Best1」を決める。

 やってみてはどうか。

 

主要トピックでNIE~SDGsから始めよう!

▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー


 新しい学習指導要領の総則には「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」が明記され、中教審の答申で示された「新たな価値を生み出す豊かな創造性」「自然環境や資源の有限性等の中で持続可能な社会をつくる力」などが挙げられている。SDGsの諸課題とマッチしており、SDGsに取り組めばこれらの資質・能力を育むことができる。SDGsは小・中・高の校種を超え、全教科科目領域にわたる教育なので、今年はSDGsをテーマに交流会を進めていきたい。

 

(2021年2月 1日 18:14)
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