新聞活用学習を議論する 第8回「よみうりNIE交流会」

 新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)について小中高校の先生や学校司書らが学び合う第8回「よみうりNIE交流会」が10日、オンラインで開かれた。シンガポールの日本人学校で教える教員を含む15人がウェブ会議システムで参加し、NIEの実践方法や、学校図書館との連携などについて、意見を交換した。

 

ディスカッション「新聞活用学習を議論する」

▽司会:田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー(前・東京都江戸川区立東小松川小校長)


■東京五輪・パラリンピックと新聞活用

田中:東京五輪・パラリンピックの開会が迫っているが、どのように新聞活用に結びつけられるか。

教諭A:大会が終われば、引退をする選手もいるだろう。一流選手の飾らない、けれども重たい真実を含んだ言葉を伝える記事を題材にワークシートを作れば、道徳、キャリア教育、進路指導などで使えるのではないか。

教諭B:五輪を報道する記事と、関連する書籍を併せて学校図書館などに展示する方法もある。

田中:校内にオリパラコーナーを作り、担当者を置くといい。地元の選手を大きく取り上げた地方版の記事も使える。

教諭C:前回のリオデジャネイロ五輪のときは、ブラジルの位置や産業、気候を調べてもらった。先日、オーストラリアのソフトボール選手団がいち早く来日したというニュースがあったが、オーストラリアの新型コロナウイルス感染状況や日本とのつながりなどの調べ学習につなげた。

 

■道徳授業での新聞活用

教諭A:記事はもちろん、一枚の写真や広告、新聞社のウェブサイトにある動画でも道徳の授業ができる。新聞を題材にすることで、授業の可能性が広がる。

教諭C:新型コロナウイルスに関連して、嫌がらせを受けた千葉県の駄菓子屋店主が、各地から寄せられた手紙やメッセージに勇気づけられ、店を続ける決意をした記事があった。その記事を取り上げた「読売新聞ワークシート通信」を使って、授業を行った。子どもたちにとって身近な題材を扱うことが大切なのではないか。

教諭D:投書欄や読売新聞の「人生案内」は使える。高校2年の女子生徒が「なぜ人は死ぬの」と問いかけた人生案内(2020年4月19日朝刊)は、命の大切さについて考える道徳の授業で使った。

教諭E:子どもの心にふれる記事を使いたいが、教科書を使いなさいという縛りもある。

教諭F:教科書の縛りはあるが、サブ教材として新聞を使えばいいのではないか。(授業の締めくくりに教師が話す)説話の代わりに記事を使ってもいいと思う。

 

■学校図書館とNIE

学校司書G:学校図書館とNIE教育のありかたについて、いいアイデアがあれば知りたい。子どもたちに一人一台の端末が配備されたが、端末で調べて終わりではなく、図書館に足を運んで本でも調べるしかけを作りたい。

教諭B:うちの学校では学校司書にもアカウントが与えられ、集めた記事をクラウドで共有してもらっている。授業にからめて地方紙を取り寄せてもらうなど、サポートしてもらっている。

田中:各新聞社の記事検索・デジタルスクラップサービスは授業で活用できるのでお勧めだ。

教諭H:(本を番号で分類する)十進分類法をうまく活用したい。記事にも応用できるかもしれない。

学校司書G:図書は十進分類法を使っているが、記事をどう分類するかが課題だ。

田中:私は集めた記事をSDGsの17目標に当てはめて分類していた。

 

NIEのねたのたね

▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー


 今月も授業で活用できそうな記事を紹介したい。

 6月3日の朝刊都民版に掲載された「デザインマンホール広がる」。地元にゆかりのある人気キャラクターをマンホールの蓋に描き、設置する動きが広がっているという。子どもたちに地域のデザインマンホールを探してもらってはどうか。

 6月6日の朝刊に掲載された「千葉で大トリ物」。アフリカ原産の大型鳥「ミナミジサイチョウ」が千葉県で捕獲された。「東アフリカに生息する絶滅危惧種がなぜ?」と思ったが、1年半前に茨城県のペット店から逃げ出したものだった。子どもたちが飛びつきそうな記事だ。絶滅が危惧されている日本の鳥を調べる学習につなげられるのではないか。

 6月10日の夕刊に掲載された「CO2を海底へ運ぶ新型船」。二酸化炭素(CO2)を集めて沖に運び、海底の地下深くに封じ込める新型船の開発が進んでいるという内容だ。SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」で活用できる題材だ。参考になれば幸いだ。

 

※次回の交流会は10月23日(土)に開催します。詳細は後日、このウェブサイトでお知らせします。

 

(2021年7月16日 17:22)
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