新聞活用学習について小中高校の先生らが学び合う第5回「よみうりNIE交流会」が2月27日、オンラインで開かれた。台湾の大学教員を含む約30人がウェブ会議システムで参加し、改正著作権法についての講演や、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の実践発表などに耳を傾けた。
講演「在宅・遠隔授業での著作権の扱い~授業目的公衆送信補償金制度の実施~」
▽園部弘毅・読売新聞グループ本社知的財産部長
新聞記事を教材に使う場合、教室での対面授業ならば著作権者の許諾なしに紙面をコピーして配布できる。一方、学校と家庭をつなぐオンライン授業で、学校に児童・生徒がいない場合、記事をインターネットで配信したり、メールに添付して送信したりするにはこれまで、著作権者の許諾が必要だった。
しかし、2018年に著作権法が改正されて、教育委員会や学校法人などの学校設置者が一定の補償金を支払えば、先生と児童生徒の間の授業のために、出版物や音楽、放送などの著作物を、許諾なしでインターネット上などで使える新制度が20年4月から創設され、著作権管理団体「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS、通称:サートラス)で、登録受け付けが始まった。補償金は、新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校に配慮し、今年3月までの1年間は無償だったが、4月からは有償となる。
補償金は年間1人当たりで大学720円、高校420円、中学校180円、小学校120円、幼稚園60円となり、昨年12月に文化庁の認可を受けた。一方、昨年9月段階で、サートラスに登録したのは大学が7~8割、高校が6~7割、小中学校が3割にとどまっている。著作権を巡ってはこれまで、「教育なら何でもタダ」と誤解されていた部分もあった。著作権制度を正しく理解してもらうため、教育委員会など教育関係者、学校関係者への周知・徹底が課題になっている。
詳しくは下記サイトを参考にしてほしい。
>>芳賀高洋さん(初等中等教育ワーキンググループ幹事、元中学校教員)の解説(PDF)
SDGs授業実践 ~自分ごとからはじめよう~
▽岩﨑保佳・江戸川区立鹿骨東小教諭(東京)
一斉休校が明けた昨年6月から、6年生の総合学習でSDGsに取り組んだ。
まず世界にある様々な課題を挙げ、新聞記事を使いながら、それらがSDGsの17の目標と結びつくことを学んだ。一番気になった目標について調べることを夏休みの自由研究の課題とし、9月に研究発表会を開いた。自分の調べた目標を伝え、友達が調べた目標も知ることができ、自分たちができることを考えた。
11月には牛乳パック回収活動が読売新聞に掲載されたことで、自分たちが行ってきたことを価値づけることができた。清掃活動や募金活動など、より主体的に考えて行動するようになった。学んだことと将来を結びつけて考えるなど、キャリア教育にもつながった。
来年度は他教科との連携をさらに明確にして、全学年で取り組む予定だ。
NIEのねたのたね
▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー
SDGsの17の目標と結びつけて授業で使えそうな記事をいくつか紹介したい。
シャボン玉の表面に貼り付く超薄型の太陽電池を取り上げた記事(2月4日夕刊)は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と結びつけて教えられるのではないか。このような太陽電池があることを知るだけでも、子どもたちにとって勉強になると思う。
福島第一原発事故によって帰還困難区域となった福島県大熊町。震災当時のまま残っている小学校の教室の写真(2月11日夕刊)を見せて、子どもたちにいろいろと考えさせたい。目標13「気候変動に具体的な対策を」と結びつけられるだけでなく、震災教育でも使えると思う。