新聞活用教材とSDGsを考える 第7回「よみうりNIE交流会」

 新聞活用学習(NIE=Newspaper In Education)について小中高校の先生や学校司書らが学び合う第7回「よみうりNIE交流会」が5月22日、オンラインで開かれた。シンガポールの大学や日本人学校で教える教員を含む24人がウェブ会議システムで参加し、新聞活用教材や、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)についての講演に耳を傾けた。

 

講演「ワークシート通信 活用法」

▽保井隆之・「読売新聞ワークシート通信」編集長(教育ネットワーク事務局専門委員)


 読売新聞は2009年4月から、記事に設問をつけた新聞活用教材「ワークシート通信」を作成してきた。毎週1回、配信を希望する全国の教員ら約16,500人に無料でメール配信している。シートはA4判で5枚セット、うち1枚は「SDGs編」だ。作成メンバー12人はみな記者出身のベテラン・中堅で、在籍してきた部をみると編集局の各部をほぼ網羅している。

 昨年春に実施したアンケート調査を分析すると、校種別では小学校が最多(36%)でインターナショナルスクールで活用している例もあった。利用場面は「授業」と「朝学習」が約半数を占め、情報共有ツールで意見・感想をシェアする、時事問題に興味を持ってもらうため廊下に掲示する、などの活用例があった。活用後の子どもの変化は「社会に関心を持つようになった、知識が広がった」が31%で最も多かった。「記述式問題に対する児童の抵抗感がなくなり、様々なテストでの無回答率もかなり低くなった」などの自由記述があった。

 過去1年間に配信したシートは登録者限定でダウンロードできるようになっており、教科別、難易度別、配信日別に加えてキーワードでも検索できる。今後は教科・単元への連動をさらに進め、教科書の内容に準拠したシートを増やしていきたいと思っている。関心のある教育関係者はぜひ登録してほしい。

 

講演「SDGs入門 & NIEのねたのたね」

▽田中孝宏・読売新聞教育ネットワークアドバイザー(元東京・江戸川区立東小松川小校長)


 SDGsを授業に取り入れるのを特別のことのように考えている先生方もいるが、実は我々が行ってきた教育と重なる部分が多い。例えば学習指導要領の総則に盛り込まれた、中央教育審議会の答申「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」で見ると、健康・安全・食に関する力(健康教育・安全教育・食育)はSDGsの目標1(貧困をなくそう)、2(飢餓をゼロに)、3(すべての人に健康と福祉を)、6(安全な水とトイレを世界中に)、12(つくる責任つかう責任)に当てはまる。17の目標全部を目指す必要はなく、子どもたちで自分たちの重点を決めればいい。

 まず「自分ごと」として、自分でできる課題を見つけてもらう。目標12(つくる責任つかう責任)であれば、食品ロスを減らすため、「もったいない運動」に取り組むなどが考えられる。

 次に「日本ごと」として、新聞などを読みながら国内の課題に目を向けてもらう。バリアフリー化の課題を調べれば、目標3(すべての人に健康と福祉を)に結びつく。

 最後は「世界ごと」として世界の課題に目を向ける。飢餓問題など、日本では見えにくくても世界には解決しなければならない課題があることを知るのが大切だ。

 SDGsの学習を通して問題を発見し、課題を解決する方法論を教えていきたい。

 ここからは、授業で活用できそうな記事を紹介する「NIEのねたのたね」。大型連休中の朝刊・多摩版と都民版に掲載された高尾山(東京都八王子市)の記事は、目標15(陸の豊かさも守ろう)を教える素材になる。かつて同山に自生していた絶滅危惧種の植物「ムラサキ」を復活させようと、ケーブルカーなどを運営する会社が苗の栽培を始めたというニュースだが、「こんな年配の人たちでもできるのだから、みんなにもできることはないか」と子どもたちに問いかけてみてはどうだろうか。

 

※次回の交流会は7月10日(土)に開催します。詳細は後日、このウェブサイトでお知らせします。

 

(2021年6月 4日 15:05)
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