やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。きょうは、生徒たちの情報を読み解く力(メディアリテラシー)を育むため、授業で新聞を活用している学校を訪ねたよ。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
コンピューター教室に山積みの新聞
東京都調布市にある明治大学付属明治中学・高校。校舎に入ってまず目についたのは、たくさんの蔵書がそろった大きな図書館。2、3階部分が吹き抜けの構造になっていて、生徒たちが気軽に活字にふれられるよう校舎の真ん中に配置してあるんだ。
案内してくれたのは、高校の情報科を担当する小岩孝一先生。昨年から東京都のNIE実践指定校になり、全校を挙げてNIEに取り組むようになったそう。コンピューター教室にはたくさんのパソコンが並ぶだけでなく、全国紙各紙の最近の新聞が山積みになっている。
デジタルなパソコン機器と、アナログな新聞との組み合わせに少しだけ違和感を持ってしまった。けれども、小岩先生が「SNSでの情報のやり取りで満足しがちな生徒たちに、新聞などたくさんのメディアがあることを知ってほしい。その上で、あふれる情報の中から、何が信頼できる情報かを選び出し、活用する力を身につけてほしい」と話してくれたよ。
コンピューター教室の一角に設けられた新聞コーナー。全国紙各紙の新聞が山積みになっていて、生徒は自由に使用していい |
夏の課題に「新聞コンクール」
1学年の夏休みの課題として出されたのが、日本新聞協会が主催する「いっしょに読もう! 新聞コンクール」。前にも紹介したけれども、新聞から気になった記事を選び、他の人と意見を交わした上で自分の提案・提言をまとめる取り組みだよ。ただし、小岩先生はキャリア教育の一環としてこの課題を出している。記事は「進路」「将来」に関するもの、意見を聞くのは、目指しているキャリアを持っている社会人などが望ましい。提案・提言を書くために、新聞だけでなく書籍やテレビ番組など多様なメディアから情報収集するよう指導しているんだって。
コンピューター教室だけでなく、廊下にも新聞が置かれていて、家庭で新聞を購読していない生徒にも配慮がされている。昨年取り組んだ生徒にアンケートを行ったところ、77%の生徒が「課題に取り組んだことで自分の考えに変化や成長があった」と回答した。その理由としては、「メディアを通した意見を聞くことで、新しい物事の見方が増えたから」「ほかの人の意見を聞くことで発想が広がった」「今まで考えもしなかったことについて知ることができたから」などの記述があったそうだよ。
廊下にも新聞が置かれている。家庭で新聞を購読していない生徒も課題に取り組めるよう配慮している |
生徒たちの発表資料に変化が
授業では、インターンシップで連携する企業から与えられた課題について、グループで解決法を探る学習も取り入れている。商品の市場調査や、10年後に通用するサービスなど、内容は様々だけど、社会がどんな課題を抱えているかを知る手がかりとなるのが、新聞などのメディアなんだって。
授業の最後には、スライドなどを使って発表をすることになっている。日頃から新聞などの多様なメディアにふれることで、文字だけだった資料にグラフや図表、写真を上手に取り込む生徒たちが増えたそう。「なかにはフェアトレードについて短いアニメーションを作った班もあった」と小岩先生はうれしそうに話していたよ。
パソコンと新聞をフル活用して情報を入手する生徒(2018年9月) |
廊下のボードに掲示された新聞記事。大学入試改革やスマホをめぐる問題など、生徒に知っておいてほしい記事を司書が選んでいる |
小岩孝一先生
目に飛び込んでくる情報量が多く、幅広いニュースに深く入っていけるのが新聞の特性です。新聞をめくる習慣をつけ、世界のニュースに興味・関心を持つ生徒に育ってほしい。そして将来を見すえて自ら学習する下地を作ってほしい。新聞を読んでいる生徒は、テレビや書籍など複数のメディアから上手に情報を入手する傾向があると、最近感じています。
たくさんの情報の中から、何が信頼できる情報かを見極める。これからの社会を生きていく上で必要なそんな力をつけるため、新聞を上手に活用することも大切だね。
[17]<< | 記事一覧 |