やあ、こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤク先生だよ。きょうは、夏休みの特集として、長年、NIEに携わってきた東小松川小の田中孝宏校長(59)のインタビューを実践例も含めて紹介するね。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
田中孝宏校長
東京都NIE推進協議会会長、日本新聞協会NIEアドバイザーなどを歴任。趣味も俳句、城めぐり、町歩きなど多彩。「タナカ校長の徒然日誌」も好評連載中!
――田中校長が実践している江戸川区立東小松川小でのNIEの実践、取り組みについて、教えてください。
田中 私が新聞6紙の中から、子どもが好きそうな、関心を持ちそうな記事を選んで切り抜き、校長室前の廊下の壁にたくさん貼っています。まさに壁新聞ですね。それを「ひがこまタイムズ」と呼んでいます。「ひがこま」とは、東小松川小の略称です。
子どもが興味を持ちそうな動物や電車・乗り物関連の記事のほか、季節の話題もの、地元の江戸川区に関する記事、6年生向けに中学受験に関する記事、囲碁の仲邑菫(なかむら・すみれ)初段や、卓球の張本智和選手など、児童と年齢が近い人の活躍を紹介する記事など、ジャンルは様々です。
子どもたちは、廊下を歩きながら、「あ、これ知っている」などと声をあげています。子どもが「校長先生、授業の発表で、この記事を使いたいから、持って行っていい?」と尋ねてくることもあります。もちろん、OKです。そういう反応が出てきたときは、とてもうれしいですね。
壁新聞 |
廊下の反対側には棚があって、最近3か月ほどの新聞が山のように置いてあります。ここ数日間の新聞でなければ、つまり、古新聞なら自由に持ていって、切り抜いていいことにしています。読売新聞教育ネットワークのワークシート(毎週配信)をやって、興味を持って関連記事を探す児童もいます。朝、授業が始まる前の15分、新聞スクラップをやっている学級もあるので、そこでも新聞の山を活用してもらっています。
棚に積み上げられた、新聞の山 |
校長室には、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)が掲げる貧困や飢餓の撲滅など、17分野を参考に、「食・健康・安全」「環境」などの項目別に封筒のポケットが設けてあります。そのテーマごとに、私が切り抜いた関連の記事を入れています。それが、子どもたちが地元のゴミ問題、公園清掃などの問題について考え、発表する際にも資料として役に立っています。
環境、健康など項目別に、記事を入れる封筒を校長室に用意 |
――NIEの意義やメリットについて
田中 新聞というのは、読み手が主体の能動的なメディアといえます。一覧性もあるので、新聞の読者である我々は、自分で読む記事を自ら選ばなくてはいけません。それを繰り返せば、自然と選択する力がつきます。
次に、なぜ、その記事を選んだのか、理由を説明できるようになってほしい。これからの国際社会では、説明する力が求められます。それなのに、日本人は昔から説明がとても苦手で、そのための訓練もほとんど受けていません。
記事や情報を選択する力、そして選択した理由を説明する力。それを子どもたちが身につける第一歩にすること。これこそが、NIEの意義であり、メリットなのではないでしょうか。
――新しい学習指導要領では、新聞などから集めた情報を活用し、考えを述べ合ったり、文章にまとめたりする活動が求められています。
田中 教育は大きく変わりつつあります。これからの教育は、例えば、「1+1=2」という知識の暗記だけではだめなのです。集めた知識や情報の内容を理解し、問題発見や、問題解決につなげるなど、実用的に知識や情報を活用する能力が求められるのです。5W・1Hの記事で構成され、社会で実際に起こった出来事を伝える新聞の活用は、新しい学習指導要領の方針に合致し、問題解決能力、活用能力を子どもたちに身につけてもらうための重要なツール(手段)といえるでしょう。
NIE、新聞活用、それ自体が目標なのではありません。新学習指導要領に即して、これからの学校教育の中で、NIEの目指す目標、NIEを通じて子どもたちに何を取得してもらうかを考え、明確にしていく必要があると思います。
子どもたちの好みそうな記事を選び、見せる。そういう先生や親の側からのサポートも大切だね!
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