楽しくNIE[36]「新聞とは」授業に役立つ動画配信 横浜・ニュースパーク(日本新聞博物館)

全国の学校に無料で貸し出している「新博キット」。テーマに沿った記事がまとまっている

こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。今回は、新聞活用学習のいろはを動画で紹介した横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)の取り組みを紹介するよ。小学校の単元学習にも使え、情報とのつきあい方を考えられる取り組みだよ。


ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。

 


 

 日刊紙発祥の地で20年 

 ニュースパークは、2000年に同市に開館した「情報と新聞」の博物館。国内初の日本語による日刊新聞「横浜毎日新聞」(明治3年=1871年=創刊)が生まれた場所が横浜だったから、この地に建てられたんだ。幕末のペリー来航(嘉永6年=1853年)を知らせる瓦版や、関東大震災(大正12年=1923年)を伝える号外など、新聞の歴史や情報社会の推移について学べる展示がたくさんある。新聞の作り方講座や取材体験など、小中高校生向けの学習プログラム(予約が必要)も用意されている。修学旅行や校外学習で年間2万4000人以上の小中高校生が訪れているんだって。これら学習プログラムと同館の展示解説を、コンパクトに17分にまとめたのが今回紹介する動画で、入門編として昨年末から配信が始まったんだ。4月には実践編も公開される予定だよ。

 

>>動画を見る(ニュースパークウェブサイトへ)

 

横浜毎日新聞の創刊を伝える「日刊新聞発祥の地」記念碑(横浜市新市庁舎で)

 

 小学4、5年生の単元に沿う 

 この入門編動画は小学4、5年生の国語の単元「新聞を作る」「新聞を読む」の内容に沿うように現場の先生が監修し、「新聞とは何か、なぜ新聞を勉強するか」というオープニングから始まり、「新聞の読み方」「新聞の作り方」の2部で構成されている。元新聞記者で、同館を訪れた児童生徒にレクチャーをしている新聞製作マネジャーが解説した「新聞の読み方」では、「見出しを読むことから始まる」「大きな見出しや写真に注目」などとコツを紹介。「新聞の作り方」では、北海道新幹線開業(2016年)時の記事を、東京、北海道、神奈川3地域の新聞で比べながら、「誰に読んでもらおうとしているかを考えることが大事」などとアドバイスしているよ。校外学習の事前・事後学習や家庭学習に役立つ内容だね。各地の小学校の先生からも授業に役立ちました、って声が届いているんだって。

新聞活用学習のいろはを博物館の展示と併せて紹介する動画(ニュースパークウェブサイトより)

 

 あふれる情報から確かなものを見抜く 

 動画では、5000年前から現代までの情報量を光の量に置き換えた館内展示「情報タイムトンネル」も紹介している。展示コーナー「情報社会と新聞」の入り口にあって、このトンネルをくぐると、石や粘土板、パピルスや紙に記録した古代、中世と比べ、インターネットが普及したこの20~30年で爆発的に情報量が増えたことが体感できるんだ。人類は、昔からいろいろな方法で情報を人々に伝えてきたけど、情報があふれる現代は、確かなものを見抜くことが、ますます重要になってきているね。情報を素早く読み取り、分かりやすく伝えるために、記者が取材を重ねて正しい情報を読者に伝える新聞について学ぶことって大事だと実感するよ。

「情報タイムトンネル」を紹介する動画の一部

 

 偽情報にだまされない心得 

 今回の動画には収録されていないけど、館内展示では、過去の記事を例にとりながら、フェイクニュース(偽情報)にだまされないための心得も紹介されている。1973年に愛知県で「信用金庫が倒産する」というデマが広がり、約14億円の取り付け騒ぎに発展、大混乱をもたらしたことを報じる写真は、新型コロナウイルスの感染拡大で「トイレットペーパーが買えなくなる」というデマが広がった昨年の騒動の様子とソックリで、「情報源を確かめる」というメッセージが心に響くよ。このほか、昔話「桃太郎」を例に、映像を切り取ったり、効果音をつけたりすると、桃太郎と鬼それぞれの立場で見方が変わることを体験できる動画も見られるよ。

映像や効果音の違いで見方が変わることを伝える童話「桃太郎」

 

 企画展「コロナと情報」も 

 定期的に企画展も行われていて、昨年夏に行われた「新型コロナと情報とわたしたち」では、スペイン風邪、コレラ、天然痘など、過去に起きた感染症がどう報道されたかが紹介され、マスクのすすめなど、今に通じる対処法も多くて興味深かったよ。今回の新型コロナウイルスをイタリアや米国など、海外がどう報道したかも紹介され、「メディア」について深く考えさせられたな。

100年以上前の感染症の報道も紹介された企画展「新型コロナと情報とわたしたち」をまとめた資料(ニュースパークで無料配布中=送料は負担)

 

 幕末の横浜で取材体験 

 来館したら、取材体験ゲーム「横浜タイムトラベル」も、楽しくてオススメだよ。横浜港周辺の街のジオラマにタブレット端末をかざすと、AR(拡張現実)機能で幕末などにタイムスリップする。画面に出てくる商人や村人などに街の様子の質問をして、取材を重ねていくと、その「取材成果」がA3判の新聞の形で刷り出されるしかけだ。ペリーの来航・日米和親条約、日本初の西洋式道路・日本大通り、関東大震災のがれきを埋め立ててできた山下公園と、横浜に関わる三つの時代の話が用意されていて、「情報の集め方でこんなにできあがる新聞が違ってくるんだ」とか、「幕末の日本はこんな状況だったんだね」とか、多くの子が楽しみながら情報について学べる機会になっているんだって。

タブレット端末を使って取材体験をする小学生

 

 記事の比較ができる「新博キット」貸し出しも 

 同館は約20万点の新聞関連資料を持っている。新型コロナウイルスの感染拡大で開館制限があったけど、緊急事態宣言が解除されたから、こういう体験コーナーにも足を運べるね。今回の動画で紹介されている北海道新幹線開業の記事は、「新博キット」という名で学校向けに無料で貸し出していて、ほかにも防災、地震などテーマごとに複数紙の記事を比較できる60超(2021年3月現在)のキットがある。多くの学校で授業に使われているんだって。同じ日付の全国約130紙を希望する学校にプレゼントする取り組みもあるよ。

全国の日刊新聞1面が飾られたニュースパークの入り口

 

ニュースパーク館長 尾高泉さん

動画だけでなく、記者経験者による講座など、小学校の国語や社会の単元に合わせた各種教育プログラムを用意しています。新聞の歴史や情報社会の特徴、新聞の役割を伝える常設展示に加え、今年度は「2020年報道写真展」なども開催しました。4月24日(土)からは、「東日本大震災から10年」「東京五輪・パラリンピック報道」をテーマに二つの企画展が始まります。誰もが情報の発信者になれる時代だからこそ、子どもたちが確かな情報を見極める力を身につけることは大切です。そのためには、新聞などメディアの役割を正しく理解しなければなりません。NIEを通した情報リテラシーの育成が重要となるなか、当館のような社会教育施設も子どもたちの学びのお役に立てればと願っています。

 

新聞のいろはを知る動画、記事の比較ができる新聞セットの貸し出しなど、情報と新聞について考える学校向けの取り組みが盛りだくさんだね。ARを使う「ポケモンGO」みたいに、取材体験をして新聞を作るゲーム「横浜タイムトラベル」も面白い!ニュースパークの近くには横浜開港資料館もあるからおススメ。たまには横浜へGOだね!(写真はニュースパーク提供)


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(2021年3月25日 16:00)
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