こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。きょうは、タブレット端末を使って複数の新聞記事を読み比べる授業をのぞいてきたよ。NIEとICTを上手に組み合わせて子どもたちがじっくりと記事の違いを比べ、学びを深めていたよ。
ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。
NIEもICTも
今回の舞台は、兵庫・姫路城から約8km北に位置する姫路市立豊富(とよとみ)小中学校。昨春開校したばかりの9年間の義務教育学校で、奈良時代に編纂された日本最古の地誌「播磨国風土記」に出てくる地名を取って、別名「蔭山の里学院」とも呼ばれているんだ。「前例にとらわれないチャレンジ」を大切にする山下雅道校長がNIEとICTに力を入れていて、1月には、7年生(中学1年生)の生徒たちが複数の新聞の記事をタブレットの画面上で共有しながら読み比べる国語の授業が行われたよ。
1人1台のタブレットを前にした生徒に、新聞記事を読み比べる方法を説明する井上佳尚先生 |
とよぽん ヤク先生、はじめまして。豊富小中学校イメージキャラクターの「とよぽん」です。今回の授業は、複数の情報を読み解いて比べる学習です。これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力、とよぽんも大切に育てていきたいな。
表現、数字、視点...違いを比べる
この日までの授業で生徒たちは、3、4人の班ごとに同じ日の新聞3紙(全国紙2紙・地方紙1紙)から気になる記事を1つ選び、残る2紙から同じテーマで記事を選んでいた。この日は、ウェブ会議システム「zoom(ズーム)」で授業が公開されたので参観したよ。冒頭、井上佳尚先生が、複数の生徒が端末の画面に同時に文章を入力できる共有アプリ「ジャムボード」を使う時のルールを黒板横の大画面テレビに示し、「表現や書き方の違いを入力して、画面の中で"話し合い"をしてください」などと呼びかけた。
黒板横の大画面テレビに映し出された共同編集するときのルール |
ジャムボード慣れた様子で操作
生徒たちは記事3本を班ごとにジャムボードへ貼りつけ、「表現の違い」の部分には黄、「視点の違い」には緑、「数値の違い」には水色などと色分けし、慣れた様子で付せんのようにそれぞれ書き込んでいく。各班がテーマに選んだのは、アメリカ大統領選やANA過去最大赤字予想、中国GDP、和歌山・南紀白浜の赤ちゃんパンダ誕生...など様々。井上佳先生からの「見出しやリード、数字にも注目して」などというアドバイスや、同じ班の子の書き込み内容も参考にしながら、生徒たちは黙々とタブレットに向かっている。ものすごい集中力だ。班の子同士で分からない漢字などを教え合う場面も。井上佳先生が時々、各班のボードを自分のパソコンからのぞき込み、「ここの数字はどうして違うのかな」とレーザーポインターでぐるぐると該当箇所を指してアドバイスを書き込み、学びを終始支えている。
新聞を読み込みながらジャムボードに気づいたことを書き込む生徒 |
とよぽん ここまでがオンライン公開授業の様子だね。次の時間はクラスメートへ向けた班ごとでのプレゼンテーション。1人1台のタブレットと教室の電子黒板をつかって意見交流したよ。いろんな角度や立場からの意見があって面白かったです。
インタビュー記事の有無を比べ気づく
次の時間は、各班のジャムボードを大画面テレビに順番に映し出し、各班それぞれが自分たちの試行錯誤の結果を発表した。南紀白浜で17頭目の赤ちゃんパンダが生まれた記事を選んだ班は、園長のインタビューの有無から、新型コロナウイルスの影響で中国人スタッフが来られなくなったことに注目し、「パンダの世界にもコロナの影響があった」とまとめて、多くの生徒たちが感心していたそうだよ。
記事比べ読みの結果をまとめたジャムボード画面をクラス中で共有し、立って発表する生徒たち |
比較→ニュースの全体像が見える
ほかにも、米大統領選での候補者の写真からマスクの有無に着目して「トランプさんは免疫ができたと主張しているからマスクをしていないのだ」などと考察したり、ANA赤字を伝える記事で見出しや盛り込まれたデータの分量が違うことなどから「同じように見えた記事でも違った角度から書かれていた」などと分析したりと、どの子も深く読み込んでいたよ。授業を終えて井上佳先生は「視点などの違いを丁寧に比べることでニュースの全体像が見え、自分の考えを持つようになってきています」とうれしそうに話していたよ。
生徒たちがまとめた新聞記事比べのジャムボード画面の例 |
全員に表現する機会が生まれる
この小中学校では、授業だけでなく生徒会や委員会などでも、1人1台タブレットが整った昨年9月からICTを毎日のように活用していて、タブレット上での意見交換は学校の日常に溶け込んでいる。気になる記事を発表し合って1つの新聞にまとめるオンライン「まわしよみ新聞」など、いろいろアイデアを出し合いながらNIEとICTを融合させた取り組みを進めている。今回のオンライン公開授業をスタッフとして支援した井上幸史教頭も、「新聞の読み比べはニュースの本質が分かるようになる取り組みです。これにICTを組み合わせることで、クラウド上での共同編集や双方向の情報交流など表現の幅が大きく広がり、さらに効果を発揮していると思います。NIEとICTの親和性は高く、私たちも研鑽を積みながら、これからも自分の考えをしっかりと持てるように、子どもたちの学びを支えていければうれしい」と話していたよ。
平和学習で新聞記事を活用。道具としてICTも活用する |
井上佳尚先生
子どもたちは複数紙の読み比べを通して、新聞によって視点が異なることを知り、友人と意見交換することで、世の中には多様な考え方があることを学んでいます。情報の真偽を判断するには複数の情報源に触れることも大切で、NIEの中には、こうした素養を身につける学習があると考えています。日常的に授業で新聞を活用したり、作ったりすることで、子どもたちも私たちも大きな気付きを得ています。
とよぽん 今日は、ヤク先生が豊富小中学校の様子を紹介してくれて嬉しかったよ。ありがとうございました。学校ホームページでも普段の学校生活を掲載しているよ。たくさんの人にみてもらいたいな。
新型コロナウイルスの感染拡大で2021年の年明け早々、緊急事態宣言が再び出て、急きょオンラインで行われたNIEの公開授業だったけど、どの生徒も"全集中"で取り組み、記事の細い違いにまで気づいて自分で考えをまとめる姿はすばらしかったよ。公開授業を終えた撮影部隊の先生方も本当にお疲れ様でした!まだコロナの収束は見えず、大変な学校生活が続くけれど、先生たちも生徒たちも体を大切にガンバってくださいね!今回は、とよぽんにも参加してもらったよ。とよぽんもNIEの発表、ガンバってるね!これからもよろしくね!
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