楽しくNIE[34]教員免許状更新講習で新聞活用

2020年12月にオンラインで行われた教員免許状更新講習。「究極の要約」である見出しを考える講義

こんにちは。新聞活用学習・NIEのナビゲーター、ヤクだよ。きょうは小中高校などの先生たちが受ける教員免許状更新講習の中から、新聞活用学習をテーマにした講座「新聞を活用した授業デザイン(NIE)を考える」を〝見学″してきたよ。新聞活用学習のコツが分かる楽しい内容だったよ。


ヤクは、ユーラシア大陸の高地に生息する、ウシの仲間。NIEを通して、これからの社会を生き抜く上で"ヤク"立つ力が子どもたちにつくよう、ヤク先生が応援していきます。

 


 

 オンラインで新聞活用 

 先生たちは教員免許状を取ってから10年ごとに更新講習を30時間受ける必要がある。全国の大学などでたくさん行われている講座の中から、受けたいものを選ぶんだけれど、そのうちの一つが星槎大学(神奈川県)で行われている新聞活用学習をテーマにした講習。「SNSの普及などで、フェイクニュースの拡散が問題となり、情報を読み解き活用する能力・メディアリテラシーを身につけることが喫緊の課題になっている」(細田満和子・星槎大副学長)と、日本新聞博物館(横浜市)との共同企画で2018年に始まった。昨年12月末に開かれた今年度の講習は、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。コロナで免許状の有効期限が延長されたことなどで、当初数十人いた受講者は7人に激減したんだけど、それでも全国から小中高の先生が参加して、真剣な表情で臨んでいることがパソコンの画面越しに伝わってきたよ。

気になる記事を1つ選んで要約・感想を書く小学6年生。講義の中で紹介された

 

 フェイクニュースについて考える 

 講座は3日間計18時間で、フェイクニュースやメディアリテラシーなど、山脇直司・星槎大学長をはじめとした講師が行う「情報」についての講義や、NIEの実践例紹介など、盛りだくさんのプログラムだった。昨年春には「コロナでトイレットペーパーがなくなる」ってフェイクニュースが拡散したばかりだから、すごく考えさせられた。タブレット端末を使って取材と新聞制作が体験できる日本新聞博物館の取り組みを紹介する時間もあって、先生だけでなく子どもにも楽しそうだったよ。講習の最終日はテストを兼ねてNIEを取り入れた授業案を考えるんだ。

タブレット端末を使って取材体験ができる日本新聞博物館のイベントスペース

 

 写真から入り、目に焼きつけることも 

 NIEの実践例を紹介する講義では、身を乗り出して聞いていた先生もいたよ。講師は、東京の小学校で長年にわたってNIEを実践してきた日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん。NIEの手法や効果などの説明を聞いた後、先生たちはそれぞれ気になる記事を1つ選んで紹介したり、はがきサイズの新聞を作ったり...。関口さんは「新聞は、写真を目に焼きつけることから入ると子どもたちが理解しやすい」と話し、東京電力福島第1原発事故で避難指示区域になった福島県南相馬市で、牛舎の柱をとらえた写真が添えられた記事を使って説明。写真をよく見て目に焼きつけた後、先生たちが見出し作りに挑戦したんだ。住民に取り残され、饑餓状態に陥った牛がかじった跡が柱に刻まれた牛舎の写真からは、牛がどれだけ苦しんで死んでいったかなどいろいろなことが読み取れて、先生たちがまもなく発生から10年が経つ東日本大震災のことを改めて深く考えている姿が心に残ったよ。

子どもたちが作った「はがき新聞」を解説する関口さん

 

 4コマ漫画活用も 

 4コマ漫画の吹き出しのひとつを空白にして、入るセリフを考えてもらうなど、4コマ漫画を使った実践も、起承転結を考えて思考力を養えるからオススメなんだって。「見出しや写真、リードだけを読む『飛ばし読み』でいい。日常的に読む『日常の力』が子どもたちを成長させる」と関口さん。このほか、複数紙の記事を読み比べる「比べ読み」も考える力や、質の高い情報かを判断する力がつくそう。講座では「お年玉として100人に100万円をプレゼントする」と、衣料品通販サイト「ZOZO」を創業した前沢友作氏が呼びかけた記事を読み比べたよ。

気になる記事を1つ選ぶ小学2年生たち。小学2年生でも新聞を読めるようになる

 

 学校ですぐに取り組んでみたい 

 同じ日の同じ新聞から見出しを9つ抜き出してビンゴのマスに書き、先生が選んだのと同じだったらチェックして列がそろうのを競う「新聞ビンゴ」や、五音と七音の見出しを集めた後に組み合わせて川柳を作る「見出し川柳」など、ゲーム性が高くて子どもたちが喜びそうな実践もいくつも紹介されていたよ。講座の最後に作成した授業案も、新聞に載ったCO2量のグラフを使った高校数学の授業案や、気になる記事を英語で紹介し合う中学英語の授業案など、それぞれの先生が3日間で学んだことを活かしてうまくまとめていたよ。先生たちは受講後、「すぐにでもできそう。早く学校に戻って子どもたちと取り組んでみたい」ってうれしそうだった。関口さんも、「後日、講座で作ったはがき新聞が送られてきて、オンラインで参加した先生方と、有意義でアナログ的な交流もできた。先生にも子どもにも無理なく新聞活用を続けてほしい。新聞の面白さに気付いた子どもたちが楽しく新聞を読むようになってくれればうれしい」と感想を話していたよ。

五音と七音の見出しを集めた後に組み合わせて川柳を作る「見出し川柳」の例

 

関口修司さん

小中高校などの先生たちが受ける教員免許状更新講習で、新聞活用学習をテーマにした講座を3年間、星槎大で担当しています。授業で日常的に新聞を活用することで、子どもたちは活字に親しみ、読む力も高まります。例年は日本新聞博物館で開かれているこの講座を通して、先生方に新聞活用学習の魅力や面白さが広がってくれることを願っています。

コロナによる一斉休校の遅れを取り戻すのに忙しい中、免許状更新講習のために時間を作るのは大変だっただろうけど、先生たちが受講後、とても充実した表情を浮かべていたのが、とにかくよかったな。新聞の楽しさが、学校現場で子どもたちに伝わるといいなあ。


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(2021年1月21日 16:00)
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