第15回 日本語大賞 文部科学大臣賞 受賞作品(全文)

 NPO法人日本語検定委員会による第15回「日本語大賞」(読売新聞社など協賛)は「『推し』の言葉」をテーマにしたエッセイ、作文を募集し、小学生、中学生、高校生、一般の各部に計5,126点の応募があった。入選作のうち、各部の文部科学大臣賞受賞作品の全文を紹介します。※敬称略

 

■小学生の部

やくせなかった言葉

髙橋 英志郎(たかはし えいしろう)

ブリティッシュスクールジャカルタ 小学三年(インドネシア)

 ぼくは今、海外で生活しています。夏休みに一時帰国して、以前所ぞくしていたサッカーチームの合宿にさんかしました。夕食の時、号れいの係に指名されました。コーチが、せっかくだから英語でやって、と言いました。新しいメンバーはぼくのことを知らないので、まず自こしょうかいをして、次の日のために気合を入れてから「いただきます」を言うことになりました。ぼくは、はりきって前に出ました。英語の勉強のせいかを見せたいと思ったからです。


 

■中学生の部

いみじ

鎌田 薫穂(かまだ くるみ)

古川学園中学校 一年(宮城県)

 私の推しの言葉、「いみじ」との出会いは、暇を持て余し、いよいよすることがなくなり仕方なく姉が勉強で使っていた古文単語帳を借りて読み始めた、一年前の夏にさかのぼります。

 この古文単語帳*は、見開き一ページに四つの単語があり、それぞれの言葉の左隣に関連するイラストが描いてあるものでした。


 

■高校生の部

かなしい音

須賀 愛佳里(すが あかり)

白百合学園高等学校 二年(埼玉県)

 雑踏を眺めるのが好きだ。道行く人々の日常を想像するのが楽しくて、駅や交差点ではつい立ち止まってしまう。友人と闊歩する大学生。肩を寄せ合い歩く恋人たち。交差点で大きく手を振り合う少女たち。駅前で、待ち合わせの相手の到来を待っている人々。皆がそれぞれにストーリーを持って、その日その時の雑踏の中に身を置いている。なんだか宇宙に似ているな、と思う。見上げると悩み事の数々が些細なものに見えてくる宙のように、雑踏も眺めているとふと自分の日常の小ささに気づかされることがある。


 

■一般の部

受け取ったメッセージ

山内 千晶(やまうち ちあき)

(福岡県)

 自分が放った何気ない言葉を、ずっと胸に刻んでくれている人がいる。

 彼女と私は、同じ血液がんの仲間。同じ時期に同じ病院で、彼女は初発、私は再発で、骨髄移植を受けるために入院していた。

 「何のご病気ですか?」

 隣の病室だった彼女が、週に一回のシーツ交換の時に話しかけてきたのが最初だった。


(2024年2月27日 00:00)
TOP