第16回 日本語大賞 文部科学大臣賞 受賞作品(全文)

 NPO法人日本語検定委員会による第16回「日本語大賞」(読売新聞社など協賛)は日本語をテーマにしたエッセイ、作文を募集し、小学生、中学生、高校生、一般の各部に計3,963点の応募がありました。

 各部門のテーマは、小・中・高校生の部:私のまちを表す言葉、一般の部:ふるさとへの思い。

 入選作のうち、各部の文部科学大臣賞受賞作品の全文を紹介します。※敬称略

 

■小学生の部

田中 夢乃 (たなか ゆめの)

国立学園小学校 小学三年(東京都)

 私が住む町は、いつもやさしい音が聞こえてきます。自然や物や人間が出す、色々な音にかこまれて私はくらしています。家からは大きな駅が近いので電車の音がしたり、家の前には大きな通りがあるので車の大きな音がします。けれど畑や生産緑地、大きな公園からも自然の音がたくさん聞こえてきます。


 

■中学生の部

私のまちロジャ

土屋 千紘 (つちや ちひろ)

シンガポール日本語補習授業校 中学三年(シンガポール)

 私のまちを表す言葉は、「ロジャ」だ。

 「ロジャ」(Rojak)はマレー語で「色々なものを混ぜる」という意味で、シンガポールを代表するサラダのような前菜だ。ロジャの主な材料は揚げパン、きゅうり、パイナップル、イカやピーナツで、甘辛ソースで混ぜられている。そしてシンガポールには、中華風、マレー風、インド風のロジャがある。


 

■高校生の部

一枚の壁が僕に教えてくれたこと

小田島 誠慈 (おだしま せいじ)

筑波大学附属坂戸高等学校 一年(埼玉県)

 僕の第二のふるさとは、ドイツ北西部にあるデュッセルドルフという街だ。僕は、生まれて間もない頃から今年の三月まで、ずっとドイツで暮らしていた。デュッセルドルフには、いろいろな国にルーツを持っている人たちが暮らしている。肌や目、髪や顔の形もさまざまで、街を歩いていると実に多くの言語が聞こえてくる。


 

■一般の部

ふるさと、汝を憎み、汝を愛す

鈴木 惠子 (すずき けいこ)

(東京都)

 JR山陰線の安来駅からイエローバスに乗る。安来市体育館を過ぎ、バスは南西に向かう。飯梨川に掛かる矢田橋を渡る。左手に見えてくる山が、私の生まれた町のシンボル、月山だ。十数年前に整備され、山頂の木々のシルエットがはっきり見えるようになった。「春風吹けば月山も、広瀬の町も花ふぶき」。小学校の校歌が頭の中を巡る。


(2025年2月26日 20:00)
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