第65回全国小・中学校作文コンクールの中央最終審査会が行われ、各賞が決定しました。応募は3万5095点(小学校低学年4883点、高学年8081点、中学校2万2131点)。文部科学大臣賞3点を要約して紹介します。(敬称略)
<小学校低学年>
「わたしがえ顔にしてあげる!!」
高知・四万十市立西土佐小2年 石本(いしもと)るん
「るんちゃん、ママは、うれしかったよ。ばあちゃんのこと、やさしくしてくれて、ばあちゃんをえ顔にしてくれて本とうにありがとう」とママが、帰りの高そくどうろをうんてんしながら、なき出しました。ママのほっぺたをなみだがながれ、ポトポトとおちていきました。
「ママ、うんてん中にあぶないで! どうしたが?」
ママのお母さん、えひめにすむママばあちゃんは、「じゃく年せいアルツハイマー」というびょう気です。もう、しんだんをうけて4年になります。今、ばあちゃんは63さいです。
ばあちゃんは、やさしくてせわずきな人でした。そんなばあちゃんが、さがし物をしたり、わすれ物ばかりするようになりました。家でのかいごもげんかいになって、ばあちゃんには、しせつに入ってもらうことになりました。しせつであばれ、めいわくをかけてしまい、おい出され、あちこちのしせつやびょういんをまわりました。
わたしは、夏休みのはじめに、ママとしせつへ会いに行きました。え顔もなく、会話もつながらないばあちゃんと一しょにお茶をのみました。そして、わたしが、「ばあちゃん、じゃんけんしよう! できるかな?」
「さあ、じゃんけんらぁ、知らんし、したことないで!」
「できる! できる! 大じょうぶ。さぁ、やるで! じゃんけんぽん!」
「やったぁ! ばあちゃんかちや! わたしのまけ!」
ばあちゃんは、じゃんけんをわすれてはいなかったのです。わらわなかったばあちゃんの顔が少しあかるくなりました。
「つぎは、にらめっこ! わらったらだめよ、アップップ」
ばあちゃんが、ふき出しました。わたしは、へん顔をいっぱいしました。ばあちゃんもいっぱいわらってくれました。すると、それを見たおばちゃんが、「こんなにわらうこともひさしくなかった。るんのおかげや!」となみだぐんでいました。
ばあちゃんはたしかにびょう気です。でも、わたしは、ママばあちゃんが大すきです。ばあちゃんがわらうと、ママやみんながえ顔になりました。え顔の力も知りました。ママばあちゃんがいてくれたから、ママやおばちゃんが生まれ、そして、わたしが生まれました。いのちのバトンリレーでつながっていることをかんじました。
ばあちゃんがわすれてしまっても、わたしたちがばあちゃんのことをいっぱいおぼえていてあげたいし、おちこむママやばあちゃんをこれからももっとわらわせていきたいです。
ばあちゃん!! また、会いにいくよ、元気でいてね。またいっしょにじゃんけんしようね。(個人応募)
◆講評
作品は、日本の深刻な社会問題の一つである介護を巡る家族の問題を鮮明に浮き彫りにしています。でも、石本さんの天使のような温かく広い心が、笑うことを忘れた「ママばあちゃん」に笑顔と様々な能力がまだ十分に備わっていることを家族に理解させ、明日への希望の光を与え、全てを救ってくれています。(新藤久典)