将来の五輪選手を科学的・心理的にサポート――。順天堂大学女性スポーツ研究センターは5月7日、女子7人制ラグビー(セブンズ)の社会人チームに「女性アスリートの健康を守る」「女性スポーツリーダーシップ」などをテーマに出前授業を行った。
第1部 女性アスリートの健康を守る
授業を受けたのは昨年1月から横浜市をホームに始動した社会人チーム「カ・ラ・ダ ファクトリーA.P.パイレーツ」の選手やトレーナーら約20人。整体サロンを展開するファクトリージャパングループがチームを運営し、選手たちは午前に練習、午後からは整体師として働く。
目指すのは2016年リオ五輪から正式種目となったセブンズの日本代表入りだ。そこで、運動と医学の専門家が共同で女性アスリートを支援する同センターに、トップ選手に求められる体と心のセルフマネジメントの出前授業を依頼した。
授業の第1部に登場した池畑亜由美研究員は、女性選手と月経について講義した。
12年ロンドン五輪に出場した日本人女性選手への調査を例に、「66%もの選手が過去、競技において月経や貧血など女性特有の問題を感じたことがあります」と紹介。最高のパフォーマンスを発揮するには月経を司る女性ホルモンを知ることが必要だと話したうえで、「女性ホルモンは大切な機能を担っています。分かりますか?」と投げかけた。
女性ホルモンは骨を守ってくれる!
答えは骨を強くする女性ホルモン、エストロゲンの存在にある。
「女性アスリートにとって問題なのは、激しいトレーニングによってエネルギー不足に陥ると月経が止まってしまうこと。そうなると、エストロゲン分泌が抑制され、結果として疲労骨折のリスクが高まるのです」。
では、女性特有の様々な症状に、どう対応するべきなのか。池畑さんが提案したのは(1)適切なエネルギーバランスを考えながら食べ、女性アスリートとして強い身体を作る(2)食事では特に鉄分を多く摂取する(3)月経周期を把握してセルフマネジメントを試みる――の3点。トレーナーだけに頼らず、まず自らケアすることの大切さを訴えた。
第2部 女性スポーツ推進 非凡なことに挑戦しよう
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「非凡なことに挑戦して」と熱く語る小笠原センター長 |
第2部では、小笠原悦子センター長が世界と日本における女性スポーツの流れ、日本が直面する課題として女性指導者の少なさなどを説明。そのうえで、アスリートに求められる心構えを語った。
中学高校時代に競泳選手だったこともあり、「私の夢は五輪にコーチとして参加することでした」。
志を実現するため小笠原さんが取った行動とは、毎年渡米して競泳の全米女子学生選手権を見学することだった。会場では、優勝した選手とともにプールに飛び込むコーチの姿をまぶたに焼きつけ、「いつか私も、あの喜びを味わいたい」と思い続けたという。
この体験談をA.P.パイレーツの選手たちにも披露し、「夢を視覚化することはアスリートにとって大切」「このような人になりたいというロールモデルも必要です」と説いた。
最後に、小笠原さんは「皆さんには、ぜひ非凡なことに挑戦してほしい。これからの女性スポーツのリーダーに求められる資質です」と、選手たちにエールを送った。
■選手の声
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A.P.パイレーツの監督はラグビー元日本代表の吉田義人さん(中央)。選手たちは休日返上で練習に励んでいる。 |
A.P.パイレーツの監督は、ラグビー元日本代表で快速ウイングとして活躍した吉田義人さんだ。5月10日、選手たちは休日返上で吉田監督やコーチとともに練習に汗を流していた。
選手の一人、高校大学時代はサッカーに熱中したという兼子あみさん(23)に授業の感想を聞いてみた。
「女性には負荷をかけても良いオンの時と、身体を労わるべきオフの時があることを学べたので、基礎体温を測るなどして月経を自分の強みにしていきたい。また、アスリートとして食材の鉄分含有量も知りたいと思うようになった。夢の視覚化も含め、授業内容を今後に生かしたいと考えています」
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