英国ケンブリッジ大学ラグビー部OBら4人が4月4日、慶應義塾高等学校(神奈川県横浜市・羽田功校長)を訪れ、同校ラグビー部員約40人が本場のテクニックを学んだ。
英語教育のプログラムを行うため来日した同大ラグビー部元主将のスチュアート・エル氏が、読売新聞教育ネットワーク参加校の同校に打診して実現した。
今回、「1日限りのコーチ」として訪問した4人は全員がオックスフォード大学との伝統の対抗戦経験者。日本の社会人ラグビーでも活躍したエル氏、2010年から4年連続で対抗戦に出場したスコット・アネット氏らだ。
同高校は今年1月の全国大会3回戦で、ロスタイムに逆転負けを喫した。「タックルを受けた後の、攻守のせめぎ合いを強化したい」という要望を受け、エル氏らが練習メニューを作った。
密集戦で優位に立つには、コミュニケーション
「コミュニケーション!密集戦ではボールの位置、敵の人数を的確に伝えないとだめだ。静かなチームは勝てないぞ――」。コーチ4人の厳しい指摘が英語でグラウンドに響く。タックル後を想定した異なる3つのメニューが用意され、グループに分かれた部員たちが、それぞれのメニューに順番に挑戦した。
タックル・グループでは、2013年対抗戦に出場したパトリック・カルバート氏が「つま先に重心をかけ、ひざ下を切るような感覚で狙うんだ。必ずグラウンドに倒さないといけない」と基本を説明した後、ボールの奪い方を実演。アイルランド訛りの英語を必死になって理解しようとする部員たちに「さあ、君たちが挑戦する番だ」と促した。
ラック・グループでも熱い指導が繰り広げられた。慣れない指導に戸惑っていた部員たちは、「今のプレーは最高だ!瞬時に判断して激しく攻めた」と激励するコーチングに、次第に反応。英語で質問し、自分たちで工夫する選手たちも出はじめた。
2時間にわたり実践的な練習 新たな発見も
指導は、グループ同士でボールを奪い合う実践形式にステップアップ。コーチ4人も参加し、攻守をめまぐるしく変えるタッチラグビーで2時間の全体練習を締めくくった。
全国大会にフルバックとして出場した同校3年で副キャプテンの高木一成さんは「英語で教わるのは新鮮だった。今回の経験を試合に生かしたい」と笑顔で話した。2年の大谷陸さんも「『無理をしてボールを奪われるより、時には意図的にタックルを受け、味方ボールにするのも必要』という指摘は新しい発見だった。攻め続けるべきか、それともポイントを作って攻撃を再構築するべきか。その判断が大切なのだと感じた」と振り返った。
日本にラグビーが伝わったのは1899年(明治32年)、ケンブリッジ大で学んだ英国人教師が慶應義塾の学生たちに教えたのが原点とされている。エル氏は「ルーツの精神が息づく高校で指導できたのは光栄なこと。生徒たちは素晴らしいスピリッツを見せてくれたし、ボールのハンドリングの精度、プレー中の判断を磨けばもっと強くなる」と話した。