新型コロナウイルスの感染拡大により、政府が全国に緊急事態宣言を発令して半月あまり。一部の大学ではオンライン授業が始まりました。大学も、私たち学生も手探りのまま始まったオンライン授業。対面による授業の再開が見通せない中での動きに、戸惑うことばかりです。
教科書を読なぞるだけ、では...
多くの大学では、4月下旬からオンライン授業がスタートしましたが、大学によって対応は様々です。一口にオンライン授業と言っても、zoomなどを使って通常の授業と同じような形式で行うものもあれば、事前にアップロードされた動画を視聴するだけのものもあります。「教授によって内容に差があるように感じることが増えた」とあるメンバーは指摘します。ある授業では、教材のスライドに音声ファイルが添付され、通常授業に近い形式となっていました。「何度も聞き返すこともできるし、わからない単語や具体的な事例をすぐに調べて、自分のペースで学習できる」と、今まで以上のメリットを感じたそうです。一方で、レジュメの配布や、教科書の範囲指定だけ、という授業もあり、「以前から感じていた、教科書をなぞるだけ、という授業への疑問が高まった」とも話しています。
オンライン環境、大学ごとにも差
大学側の取り組みにも差があります。あるメンバーは大学から「環境が整い次第オンライン授業」というアナウンスがあったそうですが、当面は「課題」による対応にとどまっているといいます。「ほとんどがレポートを出すだけ。課題の連絡が前日であることもザラで、毎朝大学のホームページを見ると課題が増えていくので、憂鬱な気分になる」とうんざりした様子です。別の大学では、アクセス集中によるサーバーのダウンなどのニュースも報じられました。ある大学では、5月上旬とアナウンスされていたオンライン授業の開始が大幅に後ろ倒しとなり、5月下旬となりました。以前は通訳がついていたような授業も、どのように行うかは説明がないそうです。加えて、4月から始める予定だった1人暮らしのメリットもあまりなくなってしまいました。「見かねた大家さんが、家賃を1か月まけてくれたけど、オンライン授業なら、そもそも実家を出る必要があるのか」と話しています。
教える側も、学生も問われる取り組み
「オンライン授業は日本の大学に向いていないのではないか」と疑問を呈するメンバーもいます。「一般教養など、何百人も同時に受講する授業がちゃんと行えるのだろうか」と話します。オンラインでのゼミが始まったというメンバーも「回線状況などで、議論が難しいと感じる」と指摘します。米国に留学経験のあるメンバーは、「米国では多くても1クラ30人。宿題の点数が悪いと、フォローアップの授業もあった」と話します。「日本はクラスの規模が大きいので、教授の取り組み方によって、学習の進捗に差が出てしまうのではないか」と指摘します。
私の通う大学は、「先生との距離が近く、質問しやすい」雰囲気があるとよく言われます。レポートの相談に行けば、参考になる論文を教えてくれました。オンライン授業では、質問はメールのやりとりが主なので、対面だと伝えられるニュアンスが伝わりづらく感じます。大学も、私たち学生も手探りの中始まったオンライン授業。実家から通学していたメンバーは「片道1時間以上の通学から解放され、時間が有効に使えるようになった」と口をそろえる一方で、「動画を視聴するだけの授業だと、集中力が持続しない」と話すメンバーもいます。授業を受ける側だけでなく、「教える側」の取り組みもはっきりとわかるようになったオンライン授業。私たち学生も、今まで以上に主体的に学問に取り組んでいく必要がある、といえそうです。
(昭和女子大学・樽谷三奈)
その10<< | >>その12 |