勉強場所も奪い合い【新型コロナ 学生リポート】(12)

購入した教科書がようやく栃木の自宅に届いた。図書館も休館しており、参考文献を手に入れるのはこれからも難航しそうだ

 新型コロナウイルスの感染拡大により、政府が全国に緊急事態宣言を発令して半月あまり。一部の大学ではオンライン授業が始まりました。大学も、私たち学生も手探りのまま始まったオンライン授業。対面による授業の再開が見通せない中での動きに、戸惑うことばかりです。

 

オンライン授業、どこで受けるの?

 

 「図書館も閉まっているし、どこで受ければいいのか...」。実家暮らしのあるメンバーは、高校卒業と共に、妹に勉強部屋を明け渡したため、「自分の部屋」がありません。これまでは試験勉強なども工夫しながらやってきたといいますが、企業のテレワーク活用が呼びかけられた3月後半からは、「家族の誰かしらが常に家に居る状態」。勉強以外にも、サークルのミーティングなどもWEB会議に切り替わったため、作業場所の確保に頭を悩ませています。「自分の集中力のせいかもしれないが、環境も大切、ということに気づいた」と話しています。別のメンバーも、大学のオンライン授業化に合わせて、慌てて自宅のオンライン環境を整備することになりましたが、授業開始には間に合わなかったと言います。「両親がテレワーク」というメンバーもいて、「授業が本格化したら回線状況が不安」と話しています。

 

書店も図書館も...

 

 教材の購入も難題です。例年なら生協など大学で購入していた教科書も、自分で調達しなければなりません。大型書店は営業を中止するところも多く、ネット通販でも「品切れ」という本もちらほら。私は3月上旬に語学留学から帰国し、栃木県の実家に戻ったころから国内でも新型コロナウイルスの流行が問題となりはじめ、現在も実家でオンライン授業を受けています。幸い生協で購入した本が送ってもらえたため、授業の開始に間に合いましたが、図書館も休館しているため、今後、授業で示された参考文献などをどうやって読めばいいのか、という不安もあります。また、「自宅にはプリンターがない」というメンバーも多く、今までは大学で印刷できた講義資料なども、近くのコンビニまで行って印刷しています。「簡単にオンライン化、ペーパーレス化、といっても、講義のメモなどを手軽に取るには紙が一番だった。デジタルデータも結構整理が大変」と話すメンバーもいます。

 

大学のサポートも課題山積

 

 既にオンライン授業が始まった大学では、様々なトラブルも報告されています。「ファイルのアップロードができない」「講義中に音声が流れない」などのケースがありました。学習支援システムや大学生協のサイトではアクセスが集中して、つながりにくいという現象もみられました。また、大学によるサポートもまだまだ課題が山積みです。聴覚障害を抱えるある学生は、「ボランティアの手話サービスを利用したい」と大学に相談したところ、「手話通訳のためとはいえ、授業映像を外部に渡さないでほしい、音声自動字幕で我慢してほしい」との連絡を受けました。ところが実際に専用のソフトウェアが生成した字幕は誤認識だらけ。「これでは実際の授業はとても無理では」と話しています。

 当初は「連休明けまで」と言われていた緊急事態宣言も、延長が決定されました。父親が自宅でテレワークをしているというメンバーは「普段なら寝ているような時間にも父親がPCに向かっていた。勤務時間の管理など、ちゃんとできているのか心配」と話します。私の大学で先日、「全学生に一律5万円を支給」という発表がありました。社会全体も、大学も手探りの状態で、ともすればハードの面ばかりに目が行きがちなオンライン化。「コロナとの戦いは長期戦」と言われる中、私たち自身が失ってはいけないものは何なのか、これからも考え続けていきたいと思います。

(東洋大学・佐藤道隆


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(2020年5月 7日 10:50)
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