帰国しても自宅待機なら...【新型コロナ 学生リポート】(13)

毎日のように利用するファストフード店の袋には、デリバリースタッフだけでなく、調理者の検温結果も書かれている

 コロナウイルスの影響で、海外に留学している大学生が次々と日本に帰国してきました。

 一方で、現地に留まる学生もいます。マレーシア・クアラルンプールの大学に通う私の友人の男子学生(20)もその一人。彼は今、ロックダウンされた街に暮らしています。3月18日に始まったロックダウンは、4度にわたる延長で、6月9日までの継続が発表されています。どんな生活を送っているのか、オンラインで話を聞きました。

 

帰国しても自宅待機なら...

 

 「大学を休校にして、1週間をオンライン授業の準備期間とする」。3月16日に大学から送られてきたメールが、自宅待機生活の始まりでした。ほかの学生のように帰国する、という選択肢もありましたが、彼は現地に留まることを選びました。「ロックダウンが終わればとんぼ返りすることになる。日本に帰っても自宅待機のため、マレーシアにいるのも同じ」と理由を説明します。

 生活必需品の購入などで外出することは許されていますが、その他の目的の外出は警察によって厳しく取り締まられています。「ランニングをしていた日本人が逮捕された」というニュースもありました。ショッピングモールや、娯楽施設は閉まっている一方で、コンビニ、スーパー、薬局、銀行など生活に必要な施設は入場制限を設けて営業しています。スーパーでは「ソーシャルディスタンス」のシールに従って、間隔を空けて客が店の外に並んでいます。1か月前までは家から100mほどにある近くのコンビニに行くなどしていましたが、スーパーでの入場制限が始まった3週間前からは、車での買い出しに一度だけ同行した以外、外出することもなくなりました。彼がルームメイト3名と暮らしているのは3LDKの部屋。この部屋の中から出ることが無い生活のため、「運動不足が悩み」と話します。

 

3食デリバリー

 

 ルームシェアをしているマレーシア人の友人は車を持っていますが、車も「運転者と同乗者1名のみ」の制限があります。生活用品の買い出しも、友人頼みです。友人は実家への帰宅を申請しており、許可が下りれば一度実家に帰ることも考えているようです。「友人がいなくなれば、まとまった買い出しも不可能になってしまう」。日本とは違い、現地の水道水は沸かさないと飲めないため、ミネラルウォーターも欠かせません。「水も買えなくなってしまったら本当に困る」と訴えます。

 レストランはバイク便によるデリバリーでのみ営業を続けています。最初は自炊も考えたそうですが、冷蔵庫はルームメイトと共用のため、食材の「買いだめ」も難しいそうです。よく利用するファストフード店のデリバリーでは、袋に調理者・配達者の体温が記入されたシールが添付されています。「今や3食デリバリー頼り。早く外でご飯が食べたい」とうんざりした様子です。

 

ロックダウンの街を思い...

 

 緊急事態宣言が出された日本では、一部観光地や商店街の人出の増加が報じられました。一部にはより厳しい外出制限を主張する声もありました。今回、友人から聞いたロックダウンの実態は想像を超える不便な生活で、友人の声も普段に比べて少し疲れた様子でした。

 日本では、私たち大学生も含めた一人一人の行動に、感染拡大を防ぐ責任が伴っているともいえます。私の大学でも、先日からオンライン授業が始まりました。ロックダウンの街に暮らす友人の心労を思いながら、日々、目の前の勉学に励む気持ちを新たにしています。

(法政大学・宮島昌英


その12<< >>その14

 

(2020年5月11日 13:37)
TOP